係数を知る/かけ算の方程式を解く
このレッスンでできるようになること
- 係数が何かを説明でき、\(3x\)、\(-4x\)、\(x\)、\(-x\) の係数をそれぞれ答えられる
- \(3x = 12\) のような、かけ算だけでできている方程式を、等式の性質④を使って解ける
- 答えが負の数や分数になっても、代入して自分で正しさを確かめられる
前のレッスンの確認
- 等式の性質③ … \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
- 等式の性質④ … \(A = B\) のとき、\(C\) が0でなければ \(\dfrac{A}{C} = \dfrac{B}{C}\)
- 解 … その方程式を成り立たせる、文字の値
- 代入 … 式の中の文字を、数に置き換えること
- 文字式の約束 … \(\times\) は省く/数を文字の前に書く/1は書かない/\(\div\) は使わず分数の形
\(3x\) の3には名前がある
\(x + 3 = 10\) は、このセクションのはじめのレッスンで解けるようになりました。\(3x = 12\) も、前のレッスンで両辺を3で割って解きました。
見た目は似ていますが、中身は違います。\(x + 3\) は「\(x\) に3を足したもの」、\(3x\) は「\(x\) に3をかけたもの」です。文字式の約束で \(\times\) を省いているので、くっついて見えるだけです。
この、文字にかけられている数には名前があります。
係数 … 文字にかけられている数のこと
\(3x\) の係数は \(3\) です。\(7y\) の係数は \(7\) です。ここまでは素直です。
気をつけたいのは、次の2つです。
マイナスは係数の一部です。 \(-4x\) の係数は \(4\) ではなく \(-4\) です。\(-4x\) は「\(-4\) に \(x\) をかけたもの」なので、マイナスまで含めて1つの数と見ます。ここを切り離してしまうと、あとで符号を落とします。
1は書かない約束なので、見えないことがあります。 \(x\) の係数は \(1\)、\(-x\) の係数は \(-1\) です。
表にまとめます。
| 式 | 係数 | 理由 |
|---|---|---|
| \(3x\) | \(3\) | \(3 \times x\) の \(3\) |
| \(-4x\) | \(-4\) | マイナスまで含めて係数 |
| \(x\) | \(1\) | \(1 \times x\) の \(1\) が省略されている |
| \(-x\) | \(-1\) | \(-1 \times x\) の \(1\) が省略されている |
見えない1に気をつける
\(x\) の係数は \(1\) です。 これはこの先ずっと効いてきます。
\(x\) には数がくっついていないので、係数がないように見えます。でも文字式の約束は「1は書かない」でした。つまり \(x\) は \(1x\) のことで、\(1\) を書かずに済ませているだけです。同じように \(-x\) は \(-1x\) のことです。
なぜこれが大事かというと、方程式を解いた最後にたどり着きたい形が $x = $ 何か、つまり係数が1の形だからです。\(3x = 12\) を \(x = 4\) にするのは、係数を \(3\) から \(1\) にする作業だと言えます。
\(3x\) は「\(x\) が3個ぶん」
\(3x = 12\) が何を言っているのか、絵にしてみます。
\(3x\) は \(x\) を3回足したもの、つまり長さ \(x\) の棒が3本ぶんです。それが合わせて12だ、というのが \(3x = 12\) です。
3本ぶんで12なら、1本ぶんはいくつでしょうか。12を3等分すればよいので \(12 \div 3 = 4\) です。つまり \(x = 4\) です。
係数は「何個ぶんか」を表していて、それで割れば1個ぶんが出ます。 そして1個ぶんが \(x\) そのものです。
式の言葉で書くと、これは等式の性質④(両辺を同じ数で割ってもよい)を使ったことになります。\(3x\) を3で割ると \(x\) が残り、\(12\) を3で割ると \(4\) が残ります。
例題1:\(3x = 12\) を解く
両辺を、\(x\) の係数で割ります。 係数は3なので、両辺を3で割ります。
3x = 12
3x ÷ 3 = 12 ÷ 3 ← 両辺を3で割った(性質④)
x = 4
確かめ
左辺 = 3 × 4 = 12
右辺 = 12
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
\(ax = b\) の形なら、両辺を \(a\) で割る。やることはこれだけです。
ここで天びんを卒業する
\(3x = 12\) までなら天びんで表せます。左の皿に \(x\) の袋を3つ、右の皿に12。両方を3等分すれば、左に袋1つ、右に4が残ります。
けれど、次からは天びんでは表せません。天びんの皿には、負の重さを載せられないからです。 \(-4x = 20\) の左辺を載せようとしても、\(-4\) 個ぶんの袋というものは現実に存在しません。\(-5\) という解も、皿の上には置けません。
天びんは、ルールを納得するための入口でした。役目はもう果たしています。ここから先は、絵ではなく等式の性質そのものを使います。
- 天びんで考える … 両方の皿に同じことをすれば、つり合いは保たれる
- 式で考える … \(A = B\) のとき、両辺に同じことをすれば、等式は成り立ったまま
言っていることは同じですが、下の言い方には「重さ」も「皿」も出てきません。だから負の数でも分数でも、そのまま使えます。
例題2:\(-4x = 20\) を解く
係数は \(-4\) です。マイナスまで含めて係数でした。だから両辺を \(-4\) で割ります。
−4x = 20
−4x ÷ (−4) = 20 ÷ (−4) ← 両辺を −4 で割った(性質④)
x = −5
\(20 \div (-4)\) の計算には、正負の数のきまりが効いています。符号が違う2つの数のわり算は、答えの符号がマイナスになるのでした。数の部分は \(20 \div 4 = 5\) なので、答えは \(-5\) です。
割る数を \(4\) と書いてしまうと、左辺は \(-x\) にしかならず、\(x\) になりません。係数はマイナスごと持っていく、と覚えてください。
確かめ
左辺 = −4 × (−5) = 20
右辺 = 20
左辺 = 右辺 なので x=−5 は解
\(-4\) と \(-5\) は符号が同じなので、かけると \(20\) になります。合っています。
例題3:\(2x = 5\) を解く
係数は2なので、両辺を2で割ります。
2x = 5
2x ÷ 2 = 5 ÷ 2
x = 5/2
\(5 \div 2\) は割り切れません。それでかまいません。答えは \(x = \dfrac{5}{2}\) です。
割り切れないことは、まちがいの合図ではありません。 ここで「計算をやり直さないといけない」と思ってしまう人がとても多いのですが、方程式の解が整数になるとは決まっていません。文字式の約束でも、わり算は \(\div\) を使わず分数の形で書くのでした。\(\dfrac{5}{2}\) は「まだ計算していない式」ではなく、これ以上できない答えです。
確かめ
左辺 = 2 × 5/2 = 5
右辺 = 5
左辺 = 右辺 なので x=5/2 は解
代入すればはっきりします。\(2 \times \dfrac{5}{2}\) は分母の2と約分できて \(5\) になります。右辺と等しいので、\(\dfrac{5}{2}\) は確かに解です。確かめが通ったなら、それが答えです。
例題4:\(-x = 7\) を解く
いちばんつまずきやすい形です。左辺に数が見当たりません。
でも \(x\) の係数は \(1\)、\(-x\) の係数は \(-1\) でした。見えないだけで、そこに \(-1\) があります。迷ったら、省略されている1を書き出してみてください。
−x = 7
−1x = 7 ← 省略されていた係数 −1 を書き出した
−1x ÷ (−1) = 7 ÷ (−1) ← 両辺を −1 で割った(性質④)
x = −7
\(7 \div (-1)\) は、符号が違うので答えはマイナス、数の部分は \(7 \div 1 = 7\) なので、\(-7\) です。
確かめ
左辺 = −(−7) = 7
右辺 = 7
左辺 = 右辺 なので x=−7 は解
\(-x\) に \(x = -7\) を代入すると \(-(-7)\) となり、マイナスのマイナスで \(7\) になります。
\(-x\) と \(x\) は別の式です。 左辺が \(-x\) のままでは、まだ解けていません。
答えが出たら、必ず代入する
このレッスンから、答えが負の数や分数になる場面が増えます。\(-5\) や \(\dfrac{5}{2}\) は「合っていそうな顔」をしているので、符号を1つ落としても、そのまま通り過ぎてしまいます。だから、負の数や分数の答えが出たときこそ代入します。
やり方はいつも同じです。もとの方程式の \(x\) に出した数を入れて、左辺と右辺をそれぞれ計算します。等しくなれば解、ならなければどこかの行が違います。
左辺 = −2 × 8 = −16
右辺 = 16
左辺 ≠ 右辺 なので x=8 は解ではない
これは \(-2x = 16\) を \(x = 8\) としてしまった場合です。代入した瞬間に、符号を落としたことが分かります。正しくは \(16 \div (-2) = -8\) で、\(x = -8\) です。
代入は、答え合わせを自分でできる道具です。
今日の問い
足す・引くのレッスンでは、足されている数を引いて打ち消しました。かけ算の形では、かけられている数を割って打ち消します。なぜ「引く」ではだめなのか、係数の言葉でもう一度はっきりさせておきます。
\(6x = 18\) で、両辺から6を引いてみます。
6x = 18
6x − 6 = 18 − 6
6x − 6 = 12
左辺は \(6x - 6\) になっただけで、\(x\) にはなりません。\(6x\) は \(6 + x\) ではなく \(6 \times x\) だからです。足された数は引けば消えますが、かけられた数は引いても消えません。
かけ算を打ち消すのはわり算です。だから両辺を係数で割ります。
6x = 18
6x ÷ 6 = 18 ÷ 6
x = 3
考え方そのものはこれまでと同じで、左辺を見て、反対の操作を選ぶというだけです。足されているなら引く、引かれているなら足す、かけられているなら割る。\(x\) に何がされているかを先に見る。 それが決め手です。
よくある間違い
まちがい1:負の係数のマイナスを落とす
✗ −3x = 15
✗ −3x ÷ 3 = 15 ÷ 3
✗ x = 5
割る数を \(3\) にしてしまいました。係数は \(-3\) です。しかも左辺は \(-3x \div 3 = -x\) なので、\(x\) にすらなっていません。
○ −3x = 15
○ −3x ÷ (−3) = 15 ÷ (−3)
○ x = −5
左辺 = −3 × (−5) = 15
右辺 = 15
左辺 = 右辺 なので x=−5 は解
マイナスは係数の一部です。 割るときは、まるごと持っていきます。
まちがい2:割り切れないので計算ミスだと思う
✗ 2x = 5
✗ 割り切れないから、どこかで計算をまちがえたはずだ
まちがえていません。\(x = \dfrac{5}{2}\) が答えです。
○ 2x = 5
○ 2x ÷ 2 = 5 ÷ 2
○ x = 5/2
左辺 = 2 × 5/2 = 5
右辺 = 5
左辺 = 右辺 なので x=5/2 は解
不安なら代入してください。確かめが通れば、それが答えです。 割り切れなかったことは、まちがいの証拠にはなりません。
まちがい3:係数が \(-1\) のとき、そのまま答えにする
✗ −x = 7
✗ x = 7
左辺の \(-\) が、勝手に消えています。\(-x\) の係数は \(-1\) なので、両辺を \(-1\) で割る必要があります。
○ −x = 7
○ −1x = 7
○ −1x ÷ (−1) = 7 ÷ (−1)
○ x = −7
\(x = 7\) を元の式に代入すると、左辺は \(-7\) で、右辺の \(7\) と合いません。符号だけの違いは代入すればすぐ出ます。
まちがい4:かけ算なのに引いてしまう
✗ 5x = 30
✗ 5x − 5 = 30 − 5
✗ x = 25
2行目の操作じたいは正しいのですが、左辺は \(5x - 5\) になるだけで \(x\) になりません。
○ 5x = 30
○ 5x ÷ 5 = 30 ÷ 5
○ x = 6
かけられている数は、割って打ち消します。
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。両辺を何で割ったのかを、必ず式に書き残すこと。
次の式の係数を答えなさい。 (1) \(5x\) (2) \(-2x\) (3) \(x\) (4) \(-x\)
\(4x = 28\) を解きなさい。
\(-6x = 42\) を解きなさい。
\(3x = 8\) を解きなさい。
\(-x = 9\) を解きなさい。
次の変形はまちがっています。どの行から違いますか。正しく解き直しなさい。
−7x = 21
−7x ÷ 7 = 21 ÷ 7
x = 3
- \(2x = 9\) を解いたら \(x = \dfrac{9}{2}\) になりました。友だちが「割り切れていないから計算ミスだ」と言っています。まちがいではないことを、代入を使って説明しなさい。
答えと考え方
1. (1) \(5\) (2) \(-2\) (3) \(1\) (4) \(-1\)
(2) はマイナスまで含めて係数です。\(2\) ではありません。
(3) と (4) は、文字式の約束で「1は書かない」ことになっているため、見えていないだけです。\(x\) は \(1x\)、\(-x\) は \(-1x\) のことなので、係数はそれぞれ \(1\) と \(-1\) です。
2. 係数は \(4\) なので、両辺を4で割ります。
4x = 28
4x ÷ 4 = 28 ÷ 4 ← 両辺を4で割った(性質④)
x = 7
左辺 = 4 × 7 = 28
右辺 = 28
左辺 = 右辺 なので x=7 は解
3. 係数は \(-6\) です。マイナスごと持っていって、両辺を \(-6\) で割ります。
−6x = 42
−6x ÷ (−6) = 42 ÷ (−6) ← 両辺を −6 で割った(性質④)
x = −7
\(42 \div (-6)\) は符号が違うので答えはマイナス、数の部分は \(42 \div 6 = 7\) なので \(-7\) です。
左辺 = −6 × (−7) = 42
右辺 = 42
左辺 = 右辺 なので x=−7 は解
4. 係数は \(3\) なので、両辺を3で割ります。
3x = 8
3x ÷ 3 = 8 ÷ 3
x = 8/3
\(8 \div 3\) は割り切れませんが、それで正しいのです。答えは \(x = \dfrac{8}{3}\) です。
左辺 = 3 × 8/3 = 8
右辺 = 8
左辺 = 右辺 なので x=8/3 は解
5. \(-x\) の係数は \(-1\) です。省略されている1を書き出すと見えます。
−x = 9
−1x = 9
−1x ÷ (−1) = 9 ÷ (−1) ← 両辺を −1 で割った(性質④)
x = −9
左辺 = −(−9) = 9
右辺 = 9
左辺 = 右辺 なので x=−9 は解
6. 2行目から違います。
\(-7x\) の係数は \(-7\) なのに、両辺を \(7\) で割っています。割る数がまちがっているので、左辺は \(-x\) にしかならず、\(x\) にはなりません。それなのに3行目では \(x\) になっています。
○ −7x = 21
○ −7x ÷ (−7) = 21 ÷ (−7)
○ x = −3
左辺 = −7 × (−3) = 21
右辺 = 21
左辺 = 右辺 なので x=−3 は解
誤答の \(x = 3\) を元の式に入れると、左辺は \(-7 \times 3 = -21\) で、右辺の \(21\) と合いません。ここで気づけます。
7. まちがいではありません。代入すれば確かめられます。
左辺 = 2 × 9/2 = 9
右辺 = 9
左辺 = 右辺 なので x=9/2 は解
説明の仕方の例です。「\(x = \dfrac{9}{2}\) をもとの式に代入すると、左辺は \(2 \times \dfrac{9}{2}\) で、2と分母の2が約分できて \(9\) になります。右辺も \(9\) なので、左辺と右辺は等しくなります。だから \(\dfrac{9}{2}\) は解です。」
方程式の解が整数になるとは決まっていません。\(9 \div 2\) が割り切れないのは、\(x\) がたまたま整数ではなかったというだけです。\(\dfrac{9}{2}\) は途中の式ではなく、これ以上できない答えです。
割り切れないこと自体は、まちがいの証拠になりません。判断するのは代入です。
次のレッスンへ
これで \(ax = b\) の形は、係数が正でも負でも、答えが整数でも分数でも解けるようになりました。\(\dfrac{x}{3} = 6\) のように \(x\) が割られている形は、性質③のレッスンですでに解いています。次はそれをもう一度確かめたうえで、足す・引く・かける・割るの四つの形を見分けて、どれを使えばよいか自分で決められるようにします。
次のレッスンへ わり算の方程式を解く/四つの形を見分ける →
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