分数の方程式から分母をなくす
このレッスンでできるようになること
- 分母の最小公倍数を両辺にかけて、分数のない式に直せる
- かける操作を、すべての項に一行書き下してから計算できる
- 整数の項をかけ忘れずに、分母が消えたあとも同じ手順で解ける
- かけ忘れの誤答を見つけて直せる
前のレッスンの確認
- 項 … 式を \(+\) と \(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
- 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
- 移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
- 係数 … 文字にかけられている数のこと
- 分配法則 … \(a(b + c) = ab + ac\)
- 最小公倍数 … 公倍数のうちいちばん小さいもの
- 等式の性質③ … \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
1本目では、小数の方程式を両辺10倍・100倍して整数に直しました。根拠は等式の性質③、すべての項にかかるのは分配法則の結果です。2本目では最小公倍数の見つけ方と、\(6 \times \dfrac{x}{3} = 2x\) のようなかけ算を確かめました。今日は、その2つをつなぎます。
小数のときと同じ考え方
やることは小数のときと同じです。じゃまなものを消してから解く。ちがうのは、かける数だけです。
| 式 | 何をかけるか | かけたあと |
|---|---|---|
| 小数 | 10、100 など | 小数点が消える |
| 分数 | 分母の最小公倍数 | 分母が消える |
\(\dfrac{x}{6} + \dfrac{1}{2} = 2\) なら分母は6と2、最小公倍数の6を両辺にかけます。根拠は等式の性質③、その6が左辺の2つの項の両方にかかるのは分配法則です。新しい規則は1つも増えていません。
かける操作は、すべての項に書き下す
ここが山場です。両辺に6をかけるとき、途中の一行を省かないでください。
\(6 \times \dfrac{x}{6} + 6 \times \dfrac{1}{2} = 6 \times 2\)
この行を書いてから、\(x + 3 = 12\) に進みます。
項は3つ。左辺の \(\dfrac{x}{6}\)、左辺の \(\dfrac{1}{2}\)、右辺の \(2\)。3つとも6をかけます。
この一行を省くのが、かけ忘れの最大の原因です。 頭の中で3つ同時に処理すると、たいてい1つ落ちます。落ちるのは、いちばん目立たない右辺の整数の項です。
分母が消える理由
\(6 \times \dfrac{x}{6}\) が \(x\) になるのはなぜでしょうか。\(\dfrac{x}{6}\) は「\(x\) を6つに分けた1つぶん」です。それを6個集めるので、\(6 \div 6 = 1\) より \(x\) が1個ぶん、つまり \(x\) です。
- \(6 \times \dfrac{x}{6}\) … \(6 \div 6 = 1\) だから \(x\)
- \(6 \times \dfrac{1}{2}\) … \(6 \div 2 = 3\) だから \(3\)
- \(6 \times 2\) … 分母がないので、そのまま \(12\)
かける数を分母で割る。 これが分母の消え方です。最小公倍数は、どの分母でも割り切れるいちばん小さい数だから選びます。
例題1 分母が2つのとき
\(\dfrac{x}{6} + \dfrac{1}{2} = 2\) を解きます。6は2で割り切れるので、最小公倍数は6です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(\dfrac{x}{6} + \dfrac{1}{2} = 2\) | もとの式 |
| \(6 \times \dfrac{x}{6} + 6 \times \dfrac{1}{2} = 6 \times 2\) | 両辺に6をかけ、すべての項に書き下した |
| \(x + 3 = 12\) | それぞれのかけ算を計算した |
| \(x = 12 - 3\) | \(+3\) を右辺へ移項した |
| \(x = 9\) | 右辺をまとめた |
確かめ 左辺は \(\dfrac{9}{6} + \dfrac{1}{2} = \dfrac{3}{2} + \dfrac{1}{2} = 2\)、右辺は \(2\)。等しいので \(x = 9\) は解です。分母さえ消えてしまえば、残りは移項だけです。
例題2 両方の項に文字があるとき
\(\dfrac{x}{4} - \dfrac{x}{6} = 1\) を解きます。4の倍数は \(4, 8, 12\)、6の倍数は \(6, 12\) なので、最小公倍数は12です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(\dfrac{x}{4} - \dfrac{x}{6} = 1\) | もとの式 |
| \(12 \times \dfrac{x}{4} - 12 \times \dfrac{x}{6} = 12 \times 1\) | 両辺に12をかけ、すべての項に書き下した |
| \(3x - 2x = 12\) | \(12 \div 4 = 3\)、\(12 \div 6 = 2\) で計算した |
| \(x = 12\) | 同類項 \(3x\) と \(-2x\) をまとめた |
確かめ 左辺は \(\dfrac{12}{4} - \dfrac{12}{6} = 3 - 2 = 1\)、右辺は \(1\)。等しいので \(x = 12\) は解です。分母がない項こそ、書き下す価値があります。
例題3 分子に係数があるとき
\(\dfrac{2x}{5} = 3\) を解きます。分母は5だけなので、両辺に5をかけます。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(\dfrac{2x}{5} = 3\) | もとの式 |
| \(5 \times \dfrac{2x}{5} = 5 \times 3\) | 両辺に5をかけ、両方の項に書き下した |
| \(2x = 15\) | \(5 \div 5 = 1\) なので分子の \(2x\) が残った |
| \(x = \dfrac{15}{2}\) | 両辺を係数の \(2\) で割った |
確かめ \(2 \times \dfrac{15}{2} = 15\) なので、左辺は \(\dfrac{15}{5} = 3\)、右辺は \(3\)。等しいので \(x = \dfrac{15}{2}\) は解です。答えが分数でも、まちがいのしるしではありません。 かける数を決めるときに見るのは分母だけです。
例題4 分母が3つ並ぶとき
\(\dfrac{x}{2} + \dfrac{x}{3} = \dfrac{5}{6}\) を解きます。6は2でも3でも割り切れるので、最小公倍数は6です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(\dfrac{x}{2} + \dfrac{x}{3} = \dfrac{5}{6}\) | もとの式 |
| \(6 \times \dfrac{x}{2} + 6 \times \dfrac{x}{3} = 6 \times \dfrac{5}{6}\) | 両辺に6をかけ、すべての項に書き下した |
| \(3x + 2x = 5\) | \(6 \div 2 = 3\)、\(6 \div 3 = 2\)、\(6 \div 6 = 1\) で計算した |
| \(5x = 5\) | 左辺の同類項をまとめた |
| \(x = 1\) | 両辺を \(5\) で割った |
確かめ 左辺は \(\dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{3} = \dfrac{3}{6} + \dfrac{2}{6} = \dfrac{5}{6}\)、右辺は \(\dfrac{5}{6}\)。等しいので \(x = 1\) は解です。項が増えても、書き下す行が長くなるだけです。
例題5 解が負になるとき
\(\dfrac{x}{2} + 3 = \dfrac{x}{6} + 1\) を解きます。最小公倍数は6。整数の項が両辺にあります。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(\dfrac{x}{2} + 3 = \dfrac{x}{6} + 1\) | もとの式 |
| \(6 \times \dfrac{x}{2} + 6 \times 3 = 6 \times \dfrac{x}{6} + 6 \times 1\) | 両辺に6をかけ、4つの項すべてに書き下した |
| \(3x + 18 = x + 6\) | それぞれのかけ算を計算した |
| \(3x - x = 6 - 18\) | \(x\) を左辺へ、\(+18\) を右辺へ移項した |
| \(2x = -12\) | 両辺の同類項をまとめた |
| \(x = -6\) | 両辺を係数の \(2\) で割った |
確かめ 左辺は \(\dfrac{-6}{2} + 3 = -3 + 3 = 0\)、右辺は \(\dfrac{-6}{6} + 1 = -1 + 1 = 0\)。等しいので \(x = -6\) は解です。\(6 \times 3 = 18\) と \(6 \times 1 = 6\) が、いちばん落としやすい項です。
分母が消えたあとは、これまでどおり
分母が消えたあとの行は、どの例題も同じです。移項して、同類項をまとめて、係数で割る。分母が消えた瞬間、式はセクション3で解いた形に戻ります。手順が変わったわけではありません。入口が1つ増えただけです。
今日の問い
\(\dfrac{x}{6} + \dfrac{1}{2} = 2\) で、6ではなく12をかけたらまちがいでしょうか。
まちがいではありません。12は6でも2でも割り切れるので、分母は消えます。\(12 \times \dfrac{x}{6} + 12 \times \dfrac{1}{2} = 12 \times 2\) から \(2x + 6 = 24\)、移項して \(2x = 18\)、2で割って \(x = 9\)。例題1と同じ答えです。
では、なぜ最小公倍数を選ぶのか。数がいちばん小さくなるからです。 6なら \(x + 3 = 12\) で移項するだけなのに、12では \(2x + 6 = 24\) になり、最後にもう一度2で割る手間が増えます。割り切れる数ならどれでも正しい。ただし、いちばん小さいものがいちばん楽。
よくある間違い
まちがい1:整数の項にかけ忘れる
✗ x/6 + 1/2 = 2
✗ x + 3 = 2
✗ x = −1
分数の項2つには6をかけたのに、右辺の \(2\) をそのままにしています。いちばん多い失敗がこれです。 分母のある項に目が行き、分母のない項が視界から消えます。
○ x/6 + 1/2 = 2
○ 6 × x/6 + 6 × 1/2 = 6 × 2
○ x + 3 = 12
○ x = 9
誤答の \(x = -1\) では左辺が \(\dfrac{-1}{6} + \dfrac{1}{2} = \dfrac{-1}{6} + \dfrac{3}{6} = \dfrac{1}{3}\) となり、右辺の \(2\) と合いません。かける数は、辺の中の項すべてにかかります。
まちがい2:分数の項の一部だけにかける
✗ x/4 − x/6 = 1
✗ 3x − x/6 = 12
\(\dfrac{x}{4}\) には12をかけたのに、\(\dfrac{x}{6}\) をそのまま書き写しています。手前の1つを処理した時点で満足してしまうのです。
○ x/4 − x/6 = 1
○ 12 × x/4 − 12 × x/6 = 12 × 1
○ 3x − 2x = 12
○ x = 12
書き下す行を先に作れば、\(12 \times\) が3個そろっているかを目で数えられます。分母は「消す」ものではなく、かけ算をした結果いなくなるものです。
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。両辺に何をかけたのかを、必ず一行書き残すこと。
- 次の3つの式を解くには、両辺を何倍すればよいですか。倍数を書き並べて答えなさい。解く必要はありません。
- (ア)\(\dfrac{x}{4} + \dfrac{x}{5} = 1\)
- (イ)\(\dfrac{x}{6} - \dfrac{1}{9} = 2\)
- (ウ)\(\dfrac{x}{2} + \dfrac{1}{3} = \dfrac{x}{4}\)
\(\dfrac{x}{4} + \dfrac{1}{2} = 3\) を解きなさい。
\(\dfrac{x}{3} + 2 = \dfrac{x}{4} + 3\) を解きなさい。
\(\dfrac{3x}{4} = 6\) を解きなさい。
\(\dfrac{x}{2} - \dfrac{x}{3} = \dfrac{1}{6}\) を解きなさい。
\(\dfrac{x}{4} + 2 = \dfrac{x}{2} + 5\) を解きなさい。
次の変形はまちがっています。どの行から違いますか。正しく解き直しなさい。
x/2 + x/5 = 7
5x + 2x = 7
7x = 7
x = 1
- 次の変形はまちがっています。どの行から違いますか。正しく解き直しなさい。
x/2 + x/6 = 4
3x + x/6 = 24
答えと考え方
1.
- (ア)20倍 4の倍数は \(4, 8, 12, 16, 20\)、5の倍数は \(5, 10, 15, 20\)。
- (イ)18倍 6の倍数は \(6, 12, 18\)、9の倍数は \(9, 18\)。
- (ウ)12倍 分母は2と3と4。\(2, 4, 6, 8, 10, 12\)/\(3, 6, 9, 12\)/\(4, 8, 12\) に共通するいちばん小さい数です。
2. \(x = 10\) 最小公倍数は4。\(4 \times \dfrac{x}{4} + 4 \times \dfrac{1}{2} = 4 \times 3\) から \(x + 2 = 12\)、移項して \(x = 10\)。
確かめ 左辺は \(\dfrac{10}{4} + \dfrac{1}{2} = \dfrac{5}{2} + \dfrac{1}{2} = 3\)、右辺は \(3\)。等しいので \(x = 10\) は解です。
3. \(x = 12\) 最小公倍数は12。\(12 \times \dfrac{x}{3} + 12 \times 2 = 12 \times \dfrac{x}{4} + 12 \times 3\) から \(4x + 24 = 3x + 36\)、移項して \(4x - 3x = 36 - 24\)、\(x = 12\)。
確かめ 左辺は \(\dfrac{12}{3} + 2 = 6\)、右辺は \(\dfrac{12}{4} + 3 = 6\)。等しいので \(x = 12\) は解です。
4. \(x = 8\) 分母は4だけ。\(4 \times \dfrac{3x}{4} = 4 \times 6\) から \(3x = 24\)、係数の \(3\) で割って \(x = 8\)。
確かめ 左辺は \(\dfrac{3 \times 8}{4} = \dfrac{24}{4} = 6\)、右辺は \(6\)。等しいので \(x = 8\) は解です。
5. \(x = 1\) 最小公倍数は6。\(6 \times \dfrac{x}{2} - 6 \times \dfrac{x}{3} = 6 \times \dfrac{1}{6}\) から \(3x - 2x = 1\)、\(x = 1\)。
確かめ 左辺は \(\dfrac{1}{2} - \dfrac{1}{3} = \dfrac{3}{6} - \dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{6}\)、右辺は \(\dfrac{1}{6}\)。等しいので \(x = 1\) は解です。
6. \(x = -12\) 最小公倍数は4。\(4 \times \dfrac{x}{4} + 4 \times 2 = 4 \times \dfrac{x}{2} + 4 \times 5\) から \(x + 8 = 2x + 20\)、移項して \(8 - 20 = 2x - x\)、\(-12 = x\)、向きをそろえて \(x = -12\)。
確かめ 左辺は \(\dfrac{-12}{4} + 2 = -1\)、右辺は \(\dfrac{-12}{2} + 5 = -1\)。等しいので \(x = -12\) は解です。負の解も正しい解です。
7. 2行目から違います。 最小公倍数は10。左辺の2つの項には10をかけているのに、右辺の \(7\) にかけ忘れています。
○ x/2 + x/5 = 7
○ 10 × x/2 + 10 × x/5 = 10 × 7
○ 5x + 2x = 70
○ 7x = 70
○ x = 10
確かめ 左辺は \(\dfrac{10}{2} + \dfrac{10}{5} = 5 + 2 = 7\)、右辺は \(7\)。等しいので \(x = 10\) は解です。誤答の \(x = 1\) では左辺が \(\dfrac{7}{10}\) となり、右辺の \(7\) と合いません。
8. 2行目から違います。 最小公倍数は6。\(\dfrac{x}{2}\) には6をかけて \(3x\) にしたのに、\(\dfrac{x}{6}\) をそのまま書き写しています。\(6 \times \dfrac{x}{6}\) は \(6 \div 6 = 1\) より \(x\) です。
○ x/2 + x/6 = 4
○ 6 × x/2 + 6 × x/6 = 6 × 4
○ 3x + x = 24
○ 4x = 24
○ x = 6
確かめ 左辺は \(\dfrac{6}{2} + \dfrac{6}{6} = 3 + 1 = 4\)、右辺は \(4\)。等しいので \(x = 6\) は解です。
次のレッスンへ
分母の最小公倍数をかければ、分数のない式に直せます。かける操作を一行書き下すことが、かけ忘れを防ぐいちばん確実な方法です。
次は、\(\dfrac{x + 1}{2}\) のように分子がひとまとまりになっている形を扱います。分母が消えたあとにかっこが現れ、セクション4の分配法則がもう一度必要になります。
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