なぜ符号が変わるのか
このレッスンでできるようになること
- 反対の数が何かを言えて、足すと0になることを使える
- 移項で符号が変わる理由を、等式の性質①を使って自分の言葉で説明できる
- 移項した項だけが符号を変えることを守って、方程式を最後まで解ける
前のレッスンの確認
- 項 … 式を \(+\) と \(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
- 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
- 係数 … 文字にかけられている数のこと
- 移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
- 等式の性質① … \(A = B\) のとき、\(A + C = B + C\)
- 等式の性質② … \(A = B\) のとき、\(A - C = B - C\)
移項は、前のレッスンで決めた言葉でした。等式の性質を短く書き直したものです。
ただ、ここで多くの人がつまずきます。「移項したら符号を変える」という部分です。これを手続きとしてだけ覚えると、どの項の符号を変えるのか分からなくなり、変えなくてよい項まで変えてしまいます。
今日は、この符号の変化を暗記から外します。符号が変わるのは、誰かがそう決めたからではありません。打ち消して0を作った結果、そう見えているだけです。
反対の数
まず、道具を1つ用意します。
反対の数 … 符号だけを変えた数のこと
\(5\) の反対の数は \(-5\) です。\(-3\) の反対の数は \(3\) です。数の大きさはそのままにして、符号だけをひっくり返します。
| 数 | 反対の数 |
|---|---|
| \(5\) | \(-5\) |
| \(-3\) | \(3\) |
| \(12\) | \(-12\) |
| \(-7\) | \(7\) |
反対の数には、大事な特徴が1つあります。足すと0になることです。
\(5 + (-5) = 0\)
\(-3 + 3 = 0\)
数直線で考えると分かりやすいです。\(5\) は0から右へ5進んだ場所、\(-5\) を足すのは0から左へ5進む動きです。右へ5進んでから左へ5進めば、出発点の0に戻ります。
ある数を0にしたければ、その反対の数を足せばよい。 これが今日ずっと使う道具です。
じゃまな項を0にして、x だけを残す
\(x + 5 = 12\) を解きます。
したいことは1つだけです。左辺を \(x\) だけにすること。じゃまをしているのは \(+5\) という項です。
この \(+5\) を消したい。では、どうすれば消えるのでしょうか。
\(+5\) を0にすればよいのです。0になった項は、あってもなくても値が変わりません。\(x + 0\) は \(x\) ですから、左辺は \(x\) だけになります。
\(+5\) を0にするには、さっきの道具を使います。反対の数 \(-5\) を足すのです。
\(5 + (-5) = 0\)
ただし、左辺だけに \(-5\) を足してはいけません。それでは天びんの片方の皿だけをさわったことになり、等式が崩れます。両辺に \(-5\) を足します。これは等式の性質①(\(A = B\) のとき \(A + C = B + C\))そのものです。\(C\) が \(-5\) になっただけです。
x + 5 = 12
x + 5 + (−5) = 12 + (−5) ← 両辺に −5 を足した(性質①)
左辺を見ます。\(5 + (-5) = 0\) なので、左辺は \(x + 0\)、つまり \(x\) です。右辺を見ます。\(12 + (-5) = 12 - 5 = 7\) です。
x = 7
ここからが今日の山場です。もとの式と、できあがった式を並べてみてください。
x + 5 = 12
x = 12 − 5
左辺にあった \(+5\) が、右辺では \(-5\) になって現れています。
これが「符号が変わる」の正体です。 誰かが符号をひっくり返したのではありません。\(+5\) を打ち消すために両辺へ足した \(-5\) が、右辺にそのまま残った。それだけのことです。
確かめ
左辺 = 7 + 5 = 12
右辺 = 12
左辺 = 右辺 なので x=7 は解
引かれている項でも、やることは同じ
\(x - 4 = 9\) を解きます。
左辺のじゃまな項は \(-4\) です。項には符号が含まれるので、「4」ではなく「\(-4\)」でひとかたまりだ、と読みます。
\(-4\) を0にするには、その反対の数 \(4\) を足します。\(-4 + 4 = 0\) ですね。両辺に \(4\) を足します。
x − 4 = 9
x − 4 + 4 = 9 + 4 ← 両辺に 4 を足した(性質①)
x = 13
並べます。
x − 4 = 9
x = 9 + 4
左辺にあった \(-4\) が、右辺で \(+4\) になって現れました。さっきとは向きが逆ですが、理由はまったく同じです。足すと0になる相手を足したから、反対の符号で現れるのです。
確かめ
左辺 = 13 − 4 = 9
右辺 = 9
左辺 = 右辺 なので x=13 は解
ここまでで、次の2つが言えます。
- 左辺の \(+5\) は、右辺に \(-5\) として現れる
- 左辺の \(-4\) は、右辺に \(+4\) として現れる
覚える必要はありません。「0にするには何を足すか」と自分に聞けば、その場で作れます。
負の数を引く形
問題によっては \(x - (-5) = 3\) のような形が出てきます。マイナスが2つ並んでいて、見た目が急に難しくなります。
ここでも反対の数が使えます。負の数を引くことは、その数の反対の数を足すことと同じです。
\(8 - (-5) = 8 + 5 = 13\)
\(-5\) を引くというのは、\(-5\) の分だけ減らすということです。\(-5\) は0より小さい数なので、それを取り除くと、かえって増えます。だから \(5\) を足したのと同じ結果になります。
| もとの形 | 直した形 | 答え |
|---|---|---|
| \(8 - (-5)\) | \(8 + 5\) | \(13\) |
| \(-3 - (-7)\) | \(-3 + 7\) | \(4\) |
| \(6 + (-9)\) | \(6 - 9\) | \(-3\) |
方程式でも、先に形を直してから移項します。
x − (−5) = 3
x + 5 = 3 ← −(−5) を +5 に直した
x = 3 − 5
x = −2
確かめ
左辺 = −2 − (−5) = −2 + 5 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=−2 は解
符号を直すことと移項することを、同じ行でまとめてやらないでください。行を分けておけば、まちがえたときに、どちらの行で崩れたのかがすぐ分かります。
文字の項でも、まったく同じ
移項できるのは数の項だけではありません。\(x\) のついた項も移項できます。理由も同じです。
\(5x = 2x + 9\) を解きます。
右辺に \(2x\) があるせいで、\(x\) が両側に散らばっています。まず文字の項を左辺に集めます。右辺の \(2x\) を0にしたいので、その反対の項 \(-2x\) を両辺に足します。
5x = 2x + 9
5x + (−2x) = 2x + (−2x) + 9 ← 両辺に −2x を足した(性質①)
5x − 2x = 9
右辺では \(2x + (-2x) = 0\) になるので、\(9\) だけが残りました。左辺の \(5x\) と \(-2x\) は同類項なので、係数どうしを計算して \(5x - 2x = 3x\) です。
3x = 9
x = 3
(最後の行では、両辺を3で割りました。前のセクションで扱った等式の性質④です。移項したあとに割り算が残る形は、このセクションの4本目でくわしく扱います。)
並べて見ます。
5x = 2x + 9
5x − 2x = 9
右辺にあった \(+2x\) が、左辺で \(-2x\) になって現れました。数のときとまったく同じです。反対の項を足しているだけです。
確かめ
左辺 = 5 × 3 = 15
右辺 = 2 × 3 + 9 = 6 + 9 = 15
左辺 = 右辺 なので x=3 は解
移項していない項の符号は、変えない
ここが中1のいちばん危ない場所です。
符号が変わるのは、移した項だけです。動かなかった項は、そのままの符号で残ります。当たり前に聞こえますが、「移項したら符号を変える」という言葉だけが頭に残ると、式じゅうの符号を変えてしまう人がとても多いのです。
\(4x + 6 = x + 15\) を見ます。移すのは、右辺の \(x\)(左へ)と、左辺の \(+6\)(右へ)の2つです。
4x + 6 = x + 15
4x − x = 15 − 6 ← 移した項だけ符号が変わる
3x = 9
x = 3 ← 両辺を3で割った
動いた項と、動かなかった項を分けて見ます。
| 項 | 動いたか | 符号 |
|---|---|---|
| \(4x\) | 動かない(左辺のまま) | \(+4x\) のまま |
| \(+6\) | 左辺 → 右辺 | \(-6\) になる |
| \(x\) | 右辺 → 左辺 | \(-x\) になる |
| \(+15\) | 動かない(右辺のまま) | \(+15\) のまま |
動かした項だけに手を入れる。 これを口に出しながら書くと、事故が減ります。
確かめ
左辺 = 4 × 3 + 6 = 12 + 6 = 18
右辺 = 3 + 15 = 18
左辺 = 右辺 なので x=3 は解
今日の問い
\(x + 5 = 12\) を移項して \(x = 12 - 5\) と書いたとき、左辺にあった \(+5\) はどこへ行ったのでしょうか。
「右へ移した」と答えたくなります。でも、項が机の上の物のように移動したわけではありません。起きたことは次のとおりです。
- 左辺の \(+5\) を消したかった
- 消すとは、\(+5\) を0にすること
- 0にするには、反対の数 \(-5\) を足す
- 片方だけではだめなので、両辺に \(-5\) を足した(性質①)
- 左辺では \(+5\) と \(-5\) が打ち消し合って0になり、\(x\) だけが残った
- 右辺には、足した \(-5\) がそのまま残った
つまり \(+5\) は右へ移動したのではなく、左辺で0になって消え、右辺には新しく \(-5\) が加わったのです。それが「符号を変えて移った」ように見えているだけです。
移項は、この6行を1行に縮めた書き方です。縮める前の形をいつでも書き戻せる人は、符号でまちがえません。
よくある間違い
まちがい1:移項していない項の符号まで変えてしまう
✗ 4x + 6 = x + 15
✗ 4x − x = −15 − 6
✗ 3x = −21
✗ x = −7
\(x\) と \(+6\) は移したので符号が変わります。しかし \(+15\) は右辺に残ったままです。動いていない項の符号を変える理由はありません。
○ 4x + 6 = x + 15
○ 4x − x = 15 − 6
○ 3x = 9
○ x = 3
誤答の \(x = -7\) をもとの式に入れると、左辺は \(4 \times (-7) + 6 = -28 + 6 = -22\)、右辺は \(-7 + 15 = 8\) です。合いません。「符号を変える」は式全体にかける命令ではなく、移した項1つにかける命令です。
まちがい2:移項したのに、符号を変えない
✗ x + 5 = 12
✗ x = 12 + 5
✗ x = 17
\(+5\) をそのままの符号で右へ書き写しています。両辺に足したのは \(-5\) であって \(5\) ではありません。もし \(5\) を足したら、左辺は \(x + 10\) になり、\(x\) から遠ざかります。
○ x + 5 = 12
○ x = 12 − 5
○ x = 7
迷ったら、足すと0になるかを口に出して確かめます。\(5 + 5 = 10\) で0になりません。\(5 + (-5) = 0\) なので、足すのは \(-5\) です。
まちがい3:二重の符号をそのまま読んでしまう
✗ x − (−5) = 3
✗ x − 5 = 3
✗ x = 8
\(-(-5)\) は \(+5\) です。負の数を引くのは、その反対の数を足すことでした。かっこの中のマイナスだけを見て、外のマイナスを見落としています。
○ x − (−5) = 3
○ x + 5 = 3
○ x = 3 − 5
○ x = −2
まちがい4:形を直すのと移項するのを、同じ行でやる
✗ x + (−4) = 6
✗ x = 6 − 4
✗ x = 2
\(x + (-4)\) は \(x - 4\) と同じです。ここから移項すれば、右辺は \(6 + 4\) になります。この人は形を直す前に移項したので、符号を二重にまちがえました。
○ x + (−4) = 6
○ x − 4 = 6 ← まず形を直す
○ x = 6 + 4 ← それから移項する
○ x = 10
1行に1つの操作。 これだけで、まちがいの場所を自分で見つけられるようになります。
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。移項するときは、両辺に何を足したのかを1行残すこと。
次の数の反対の数を答えなさい。 (1) \(9\) (2) \(-6\) (3) \(-8\)
\(x + 7 = 20\) の左辺を \(x\) だけにするには、両辺に何を足せばよいですか。なぜその数なのかも書きなさい。
次を計算しなさい。 (1) \(8 - (-5)\) (2) \(-3 - (-7)\) (3) \(6 + (-9)\)
次の方程式を、移項して最後まで解きなさい。 (1) \(x + 8 = 3\) (2) \(x - 6 = -2\)
\(7x = 4x + 12\) を解きなさい。
次の解き方はまちがっています。どの行から違いますか。理由を書いて、正しく解き直しなさい。
7x + 2 = 3x + 22
7x − 3x = −22 − 2
4x = −24
x = −6
答えと考え方
1. 符号だけを変えます。
- (1) \(9\) の反対の数は \(-9\)
- (2) \(-6\) の反対の数は \(6\)
- (3) \(-8\) の反対の数は \(8\)
どれも足すと0になります。\(9 + (-9) = 0\)、\(-6 + 6 = 0\)、\(-8 + 8 = 0\)。
2. 両辺に \(-7\) を足します。
左辺のじゃまな項は \(+7\) です。これを0にしたいので、\(+7\) の反対の数 \(-7\) を足します。\(7 + (-7) = 0\) になるからです。両辺に足すのは、片方だけでは等式が崩れるからです(性質①)。
x + 7 = 20
x + 7 + (−7) = 20 + (−7)
x = 13
左辺 = 13 + 7 = 20
右辺 = 20
左辺 = 右辺 なので x=13 は解
3. 負の数を引くのは、その反対の数を足すことです。
- (1) \(8 - (-5) = 8 + 5 = 13\)
- (2) \(-3 - (-7) = -3 + 7 = 4\)
- (3) \(6 + (-9) = 6 - 9 = -3\)
4. (1) 左辺の \(+8\) を0にしたいので、両辺に \(-8\) を足します。\(+8\) は右辺に \(-8\) として現れます。
x + 8 = 3
x = 3 − 8
x = −5
左辺 = −5 + 8 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=−5 は解
(2) 左辺の \(-6\) を0にしたいので、両辺に \(6\) を足します。\(-6\) は右辺に \(+6\) として現れます。
x − 6 = −2
x = −2 + 6
x = 4
左辺 = 4 − 6 = −2
右辺 = −2
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
5. 右辺の \(4x\) を0にしたいので、両辺に \(-4x\) を足します。\(+4x\) は左辺に \(-4x\) として現れます。動いていない \(+12\) の符号はそのままです。
7x = 4x + 12
7x − 4x = 12
3x = 12
x = 4 ← 両辺を3で割った
左辺 = 7 × 4 = 28
右辺 = 4 × 4 + 12 = 16 + 12 = 28
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
6. 2行目から違います。
移したのは右辺の \(3x\) と左辺の \(+2\) の2つです。\(+22\) は右辺に残ったままなので、符号を変える理由がありません。それなのに \(-22\) と書いてしまっています。移項していない項の符号を変えたのが原因です。
○ 7x + 2 = 3x + 22
○ 7x − 3x = 22 − 2
○ 4x = 20
○ x = 5 ← 両辺を4で割った
左辺 = 7 × 5 + 2 = 35 + 2 = 37
右辺 = 3 × 5 + 22 = 15 + 22 = 37
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
誤答の \(x = -6\) をもとの式に入れると、左辺は \(7 \times (-6) + 2 = -42 + 2 = -40\)、右辺は \(3 \times (-6) + 22 = -18 + 22 = 4\) で、まったく合いません。代入すれば、その場で気づけます。
次のレッスンへ
符号が変わる理由が言えるようになりました。ここまでは、移項してから何をすればよいかが自然に決まる式ばかりでした。でも \(3x + 4 = 19\) のように、移項と、係数で割る操作の、どちらを先にするかを自分で決めなければならない式もあります。次は、操作が二つ重なった方程式を、どの順番でほどけばよいかを扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。