操作が二つ重なった方程式を解く
このレッスンでできるようになること
- \(3x + 5 = 20\) のように、かけ算と足し算が重なった方程式を解ける
- なぜ先に移項し、あとで係数で割るのか、その順番の理由を自分の言葉で説明できる
- 解が負の数や分数になっても、代入して確かめ、正しいと判断できる
前のレッスンの確認
- 項 … 式を \(+\) と \(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
- 係数 … 文字にかけられている数のこと
- 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
- 移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
- 反対の数 … 符号だけを変えた数のこと
- 等式の性質③ … \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
- 等式の性質④ … \(A = B\) のとき、\(C\) が0でなければ \(\dfrac{A}{C} = \dfrac{B}{C}\)
移項で一手、両辺を係数で割って一手。\(x + 5 = 20\) なら移項だけ、\(3x = 15\) なら割り算だけで終わります。前のレッスンでは \(5x = 2x + 9\) のように、移項したあと割り算まで進む式も出てきましたが、どちらを先にするかを考える場面はありませんでした。ここからは、その順番そのものが問題になります。
操作が二つ重なった式を読む
\(3x + 5 = 20\) を見ます。左辺で \(x\) に何が起きたのかを、順に読みます。
| 左辺の見え方 | \(x\) に起きたこと |
|---|---|
| \(x\) | 出発点 |
| \(3x\) | 3がかけられた |
| \(3x + 5\) | そのうえで5が足された |
操作が二つ重なっています。ということは、ほどく操作も二つ必要です。そしてここで、今までになかった判断が出てきます。どちらを先にほどくかです。
先に3で割るとどうなるか
\(3x\) の3が目につくので、いきなり両辺を3で割ってみます。等式の性質④より、両辺を同じ数(0でない数)で割ることは許されているからです。
\(\dfrac{3x + 5}{3} = \dfrac{20}{3}\)
左辺は \(3x + 5\) 全体が3で割られます。計算すると、こうなります。
\(x + \dfrac{5}{3} = \dfrac{20}{3}\)
ここから続けることもできます。\(\dfrac{5}{3}\) を右辺へ移項して、
\(x = \dfrac{20}{3} - \dfrac{5}{3} = \dfrac{15}{3} = 5\)
答えは \(x = 5\) で、ちゃんと出ました。つまり、割ること自体はまちがいではありません。等式の性質④に反していないので、\(x + \dfrac{5}{3} = \dfrac{20}{3}\) も正しい式です。ただ、分数だらけになって手数が増えただけで、得はしていません。
では、なぜ分数だらけになったのでしょうか。理由は、左辺の \(3\) は \(3x\) という項の係数であって、左辺全体にかかっているわけではないからです。左辺には \(+5\) という別の項があります。両辺を3で割ると、この \(+5\) も巻き添えになって \(\dfrac{5}{3}\) に変わってしまいます。3は \(3x\) の中だけの数なのに、割り算のほうは左辺全部に及ぶ。このずれが、分数の正体です。
だから順番が大事です。 先に \(+5\) を移項して、左辺を \(3x\) という項ひとつだけにしてしまえば、そのあと3で割っても巻き添えが起きません。割られるものが \(3x\) しか残っていないからです。
二つの段階
\(ax + b = c\) の形の方程式は、次の順で進めます。
- 段階1 … 移項して、文字の項と数の項を左右に分ける
- 段階2 … 両辺を係数で割る
- 仕上げ … 代入して確かめる
段階1で左辺を文字の項ひとつにし、段階2でその係数を外す。この順番は、覚える決まりではなく、巻き添えを起こさないための順番です。
例題1
\(3x + 5 = 20\) を解きます。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(3x + 5 = 20\) | もとの式 |
| \(3x = 20 - 5\) | \(+5\) を右辺へ移項した(段階1) |
| \(3x = 15\) | 右辺を計算した |
| \(x = 15 \div 3\) | 両辺を係数3で割った(段階2) |
| \(x = 5\) | 答え |
左辺 = 3 × 5 + 5 = 20
右辺 = 20
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
例題2
\(4x - 7 = 17\) を解きます。左辺の数の項は \(-7\) です。符号は項に含まれるので、移すのは \(7\) ではなく \(-7\) です。移項すると符号が変わるので、右辺では \(+7\) になります。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(4x - 7 = 17\) | もとの式 |
| \(4x = 17 + 7\) | \(-7\) を右辺へ移項した(段階1) |
| \(4x = 24\) | 右辺を計算した |
| \(x = 24 \div 4\) | 両辺を係数4で割った(段階2) |
| \(x = 6\) | 答え |
左辺 = 4 × 6 − 7 = 24 − 7 = 17
右辺 = 17
左辺 = 右辺 なので x=6 は解
例題3 解が負の数
\(2x + 9 = 3\) を解きます。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(2x + 9 = 3\) | もとの式 |
| \(2x = 3 - 9\) | \(+9\) を右辺へ移項した(段階1) |
| \(2x = -6\) | 右辺を計算した |
| \(x = -6 \div 2\) | 両辺を係数2で割った(段階2) |
| \(x = -3\) | 答え |
左辺 = 2 × (−3) + 9 = −6 + 9 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=−3 は解
右辺が \(3 - 9 = -6\) とマイナスになりました。ここで手が止まる人がいますが、途中でまちがえたわけではありません。負の数も解になります。 代入すれば、\(2 \times (-3) + 9\) がちゃんと3になることが確かめられます。
例題4 解が分数
\(2x + 1 = 8\) を解きます。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(2x + 1 = 8\) | もとの式 |
| \(2x = 8 - 1\) | \(+1\) を右辺へ移項した(段階1) |
| \(2x = 7\) | 右辺を計算した |
| \(x = 7 \div 2\) | 両辺を係数2で割った(段階2) |
| \(x = \dfrac{7}{2}\) | 答え |
\(7 \div 2\) は割り切れません。「割り切れないから、どこかでまちがえたはずだ」と考えて計算をやり直す人がいますが、そうではありません。\(x = \dfrac{7}{2}\) が答えです。 分数もひとつの数なので、そのまま解になります。割り切れることのほうが、むしろ問題の側の都合です。
左辺 = 2 × (7÷2) + 1 = 7 + 1 = 8
右辺 = 8
左辺 = 右辺 なので x=7÷2 は解
例題5 係数が負の数
\(-3x + 2 = 14\) を解きます。左辺の文字の項は \(-3x\) です。係数は符号を含めて \(-3\) なので、最後に割る数も \(-3\) です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-3x + 2 = 14\) | もとの式 |
| \(-3x = 14 - 2\) | \(+2\) を右辺へ移項した(段階1) |
| \(-3x = 12\) | 右辺を計算した |
| \(x = 12 \div (-3)\) | 両辺を係数 \(-3\) で割った(段階2) |
| \(x = -4\) | 答え |
左辺 = −3 × (−4) + 2 = 12 + 2 = 14
右辺 = 14
左辺 = 右辺 なので x=−4 は解
\(-3x = 12\) を見て \(x = 4\) としてしまう人が多い場所です。\(-3\) で割るので、答えは \(-4\) です。
代入して確かめる
段階が二つになると、まちがえる場所も二つに増えます。移項で符号を変え忘れる場所と、割る数の符号を落とす場所です。どちらも、答えを見ただけでは気づけません。
だから最後に代入します。特に、解が負の数になったときと、分数になったときは必ず確かめてください。この二つは「なんとなく不安な答え」に見えるので、確かめないまま自信を失いやすいからです。代入して左辺と右辺の値が同じになれば、その不安には根拠がないと分かります。逆に合わなければ、どこかの行が確実にまちがっています。
今日の問い
\(3x = 15\) の両辺を3で割ると、左辺はきれいに \(x\) になります。ところが \(3x + 5 = 20\) の両辺を3で割ると、左辺は \(x + \dfrac{5}{3}\) という分数まじりの式になります。同じ「3で割る」なのに、なぜこんなに違うのでしょうか。
ちがいは、左辺にいくつ項があるかです。
\(3x = 15\) の左辺は \(3x\) の一つだけです。割り算はこの項にしか当たらないので、3で割ればそのまま \(x\) になります。いっぽう \(3x + 5 = 20\) の左辺には \(3x\) と \(+5\) の二つの項があります。両辺を割るという操作は左辺全体に及ぶので、\(+5\) も一緒に割られてしまいます。
つまり段階1は、\(x\) を求めるための計算というより、割り算が当たる相手を一つに減らしておく準備です。左辺を項ひとつにしてから割る。この形にそろえておけば、いつでも \(3x = 15\) と同じやさしい場面に持ち込めます。
よくある間違い
まちがい1:移項したのに符号を変えていない
✗ 3x + 7 = 22
✗ 3x = 22 + 7
✗ 3x = 29
\(+7\) を右辺へ移したのに、符号がそのままです。移項は「両辺から7を引く」を短く書いたものでした。両辺から7を引いたのなら、右辺は \(22 - 7\) でなければなりません。
○ 3x + 7 = 22
○ 3x = 22 − 7
○ 3x = 15
○ x = 5
まちがい2:移項する前に、文字の項だけを係数で割る
✗ 5x + 4 = 19
✗ x + 4 = 19 ÷ 5
左辺では \(5x\) だけを5で割り、\(+4\) はそのまま残しています。右辺は全部を5で割っています。これでは両辺に同じ操作をしたことになりません。
くり返しますが、両辺を5で割ること自体はまちがいではありません。ただし、そうするなら左辺の \(+4\) も割られます。それがいやなら、先に移項して左辺を \(5x\) ひとつにしてから割ります。
○ 5x + 4 = 19
○ 5x = 19 − 4
○ 5x = 15
○ x = 3
まちがい3:負の係数の符号を落とす
✗ −2x = 8
✗ x = 4
係数は符号を含めて \(-2\) です。割る数も \(-2\) でなければなりません。
○ −2x = 8
○ x = 8 ÷ (−2)
○ x = −4
誤答の \(x = 4\) を入れると左辺は \(-2 \times 4 = -8\) で、右辺の8と合いません。ここで気づけます。
まちがい4:割り切れないので、まちがえたと思ってやり直す
✗ 2x = 5 ← 割り切れないので、前の行に戻ってやり直してしまう
○ 2x = 5
○ x = 5 ÷ 2 ← このまま進めてよい
方程式の解は整数とはかぎりません。\(x = \dfrac{5}{2}\) と書けば、それが答えです。不安なら、やり直すのではなく代入して確かめてください。
左辺 = 2 × (5÷2) = 5
右辺 = 5
左辺 = 右辺 なので x=5÷2 は解
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。それぞれの行で段階1と段階2のどちらをしたのかを、必ず式の横に書き残すこと。
\(5x + 4 = 24\) を解きなさい。
\(4x + 13 = 1\) を解きなさい。
\(4x - 3 = 7\) を解きなさい。
\(-2x + 7 = 1\) を解きなさい。
\(3x + 5 = 20\) を、先に両辺を3で割るやり方で最後まで解きなさい。そのうえで、先に移項するやり方と比べて何が違ったかを書きなさい。
次の変形はまちがっています。どの行から違いますか。理由を書き、正しく解き直しなさい。
2x − 5 = 13
2x = 13 − 5
2x = 8
x = 4
- 次の変形はまちがっています。どの行から違いますか。理由を書き、正しく解き直しなさい。
5x + 10 = 25
x + 10 = 5
x = −5
答えと考え方
1. \(+4\) を移項してから、係数5で割ります。
5x + 4 = 24
5x = 24 − 4 ← +4 を移項した(段階1)
5x = 20
x = 20 ÷ 5 ← 両辺を5で割った(段階2)
x = 4
左辺 = 5 × 4 + 4 = 24
右辺 = 24
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
2. 右辺が負の数になりますが、そのまま進めます。
4x + 13 = 1
4x = 1 − 13 ← +13 を移項した(段階1)
4x = −12
x = −12 ÷ 4 ← 両辺を4で割った(段階2)
x = −3
左辺 = 4 × (−3) + 13 = −12 + 13 = 1
右辺 = 1
左辺 = 右辺 なので x=−3 は解
3. 移すのは \(-3\) なので、右辺では \(+3\) になります。
4x − 3 = 7
4x = 7 + 3 ← −3 を移項した(段階1)
4x = 10
x = 10 ÷ 4 ← 両辺を4で割った(段階2)
\(10 \div 4\) は割り切れません。約分して \(x = \dfrac{5}{2}\) が答えです。
左辺 = 4 × (5÷2) − 3 = 10 − 3 = 7
右辺 = 7
左辺 = 右辺 なので x=5÷2 は解
4. 係数は \(-2\) です。割る数も \(-2\) です。
−2x + 7 = 1
−2x = 1 − 7 ← +7 を移項した(段階1)
−2x = −6
x = −6 ÷ (−2) ← 両辺を −2 で割った(段階2)
x = 3
左辺 = −2 × 3 + 7 = −6 + 7 = 1
右辺 = 1
左辺 = 右辺 なので x=3 は解
負の数どうしのわり算なので、解は正の数になります。ここでも代入して確かめておくと安心です。
5. 先に両辺を3で割ると、左辺の \(+5\) も割られます。
\(\dfrac{3x + 5}{3} = \dfrac{20}{3}\)
\(x + \dfrac{5}{3} = \dfrac{20}{3}\)
\(x = \dfrac{20}{3} - \dfrac{5}{3} = \dfrac{15}{3} = 5\)
答えは \(x = 5\) で、先に移項したときと同じです。このやり方もまちがいではありません。 等式の性質④に反していないので、途中の式もすべて正しい式です。
違うのは手間だけです。先に移項すれば \(3x = 15\)、\(x = 5\) と整数のまま終わりますが、先に割ると \(\dfrac{5}{3}\) や \(\dfrac{20}{3}\) という分数を持ち歩くことになります。左辺の3は \(3x\) という項の係数であって左辺全体にかかる数ではないので、割ると \(+5\) が巻き添えになる。これが分数の出どころです。
左辺 = 3 × 5 + 5 = 20
右辺 = 20
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
6. 2行目から違います。
\(-5\) を右辺へ移項したのに、符号を変えていません。移項は「両辺に5を足す」を短く書いたものなので、右辺は \(13 + 5\) になります。
○ 2x − 5 = 13
○ 2x = 13 + 5 ← −5 を移項した(符号が変わる)
○ 2x = 18
○ x = 18 ÷ 2
○ x = 9
左辺 = 2 × 9 − 5 = 18 − 5 = 13
右辺 = 13
左辺 = 右辺 なので x=9 は解
誤答の \(x = 4\) を入れると左辺は \(2 \times 4 - 5 = 3\) で、右辺の13と合いません。
7. 2行目から違います。
左辺では \(5x\) だけを5で割り、\(+10\) はそのままにしています。右辺は全部を5で割っています。両辺に同じ操作をしていないので、この式はもう成り立ちません。
先に移項して、左辺を \(5x\) ひとつにしてから割ります。
○ 5x + 10 = 25
○ 5x = 25 − 10 ← +10 を移項した(段階1)
○ 5x = 15
○ x = 15 ÷ 5 ← 両辺を5で割った(段階2)
○ x = 3
左辺 = 5 × 3 + 10 = 15 + 10 = 25
右辺 = 25
左辺 = 右辺 なので x=3 は解
なお、この問題で両辺をきちんと5で割るなら \(x + 2 = 5\) となり、ここから \(x = 3\) が出ます。これは正しいやり方です。まちがいだったのは「割ったこと」ではなく、「左辺の一つの項だけを割ったこと」です。
誤答の \(x = -5\) を入れると左辺は \(5 \times (-5) + 10 = -15\) で、右辺の25と合いません。
次のレッスンへ
移項してから係数で割る、という二段階の進め方が使えるようになりました。このレッスンで扱った方程式は、文字が左辺だけにありました。次は \(3x + 5 = x + 9\) のように、両辺に文字がある方程式を正面から扱います。やることは変わりません。文字の項を片方の辺に集めて、左辺を項ひとつにしてから割る。同類項をまとめる力が、ここで効いてきます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。