LESSON 01

移項

移項とは何か

等式の性質で3行かけて書いていた変形を、1行に短く書いたものが移項である。省略される前の姿と並べて対応を確かめ、移項を暗記ではなく理解として身につける。

移項とは何か

このレッスンでできるようになること

  • 移項が何をしていることなのかを、等式の性質にさかのぼって説明できる
  • 等式の性質で3行かけて書いた変形を、移項を使って1行に書き直せる
  • 移項した式から、省略する前の形に戻せる
  • 数の項も文字の項も、符号を変えて反対の辺へ移せる

前のレッスンの確認

  • … 式を \(+\)\(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
  • 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
  • 係数 … 文字にかけられている数のこと
  • 等式の性質①\(A = B\) のとき、\(A + C = B + C\)
  • 等式の性質②\(A = B\) のとき、\(A - C = B - C\)

前のセクションで、\(x + a = b\)\(x - a = b\)\(ax = b\)\(\dfrac{x}{a} = b\) の4つの形が解けるようになりました。解き方はもう手の中にあります。このレッスンで新しく増えるのは、同じ解き方を短く書く方法です。

3行は少し長い

\(x + 5 = 12\) を、等式の性質だけで解きます。

x + 5 = 12
x + 5 − 5 = 12 − 5      ← 両辺から5を引いた(性質②)
        x = 12 − 5
        x = 7

これで正しく解けています。ここで2行目をよく見てください。

2行目は「両辺から5を引きます」という宣言の行です。左辺は \(x + 5 - 5\) になりますが、\(+5\)\(-5\) は打ち消し合うので、残るのは \(x\) だけです。右辺は \(12 - 5\) です。

つまり2行目を書いても書かなくても、次に出てくる行は必ず \(x = 12 - 5\) になります。結果が決まっているなら、書かなくてもよいのではないか。 これが今日の出発点です。

2行目を書かずに進む

2行目を飛ばして書くと、こうなります。

x + 5 = 12
    x = 12 − 5
    x = 7

3行が2行になりました。1行目と2行目だけを見比べます。

  • 1行目の左辺にあった \(+5\) が、
  • 2行目の右辺\(-5\) となって現れています。

辺が変わり、符号も変わりました。この見え方が、これから何度も出てきます。

省略する前と、省略したあと

同じ式を上下に並べます。どの行がどこにつながっているかを目で追ってください。

省略する前と省略したあとの対応 上に等式の性質で解いた3行の式、下に移項で解いた2行の式を並べた図。1行目はそのまま下の1行目へ、上の3行目は下の2行目へ矢印でつながり、上の2行目は書かないことを示している。 省略する前 等式の性質で3行 x + 5 = 12 x + 5 − 5 = 12 − 5 x = 12 − 5 この行を書かない 省略したあと 移項を使って1行 x + 5 = 12 x = 12 − 5 そのまま 直接つなぐ

上の1行目は、下の1行目にそのまま写ります。上の3行目は、下の2行目にそのまま写ります。消えたのは真ん中の1行だけです。答えの \(x = 7\) は、どちらの書き方でも同じです。

移項

真ん中の行を省いて書くこの進み方には、名前がついています。

移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと

\(x + 5 = 12\) では、左辺の項 \(+5\) を、\(-5\) に変えて右辺へ移しました。だから \(x = 12 - 5\) になります。

大事なのは、符号を変えることと反対の辺へ移すことが、必ずセットだという点です。どちらか片方だけでは移項になりません。

移項は新しい規則ではない

移項は、新しく覚える計算のルールではありません。等式の性質を短く書いただけです。だからいつでも、省略する前の形に戻せます。

戻し方を実際にやってみます。次の式が目の前にあるとします。

x + 5 = 12
    x = 12 − 5

右辺の \(-5\) は、両辺から5を引いたしるしです。そこで、消えていた行を書き足します。

x + 5 = 12
x + 5 − 5 = 12 − 5      ← 書き足した行(性質②)
        x = 12 − 5

元の3行にもどりました。\(x - 4 = 9\) でもやってみます。移項した形はこうです。

x − 4 = 9
    x = 9 + 4

右辺の \(+4\) は、両辺に4を足したしるしです。書き足します。

x − 4 = 9
x − 4 + 4 = 9 + 4      ← 書き足した行(性質①)
        x = 9 + 4

移項した式は、いつでもこの形に戻せます。 自分の書いた式が不安になったら、戻して確かめてください。戻せない式は、どこかが違っています。

例題1

\(x - 11 = 6\) を解きます。負の項を右へ移します。

x − 11 = 6
     x = 6 + 11
     x = 17

左辺の \(-11\) が、右辺で \(+11\) になりました。符号を変えて移しています。

左辺 = 17 − 11 = 6
右辺 = 6
左辺 = 右辺 なので x=17 は解

例題2

\(3x = 2x + 6\) を解きます。移せるのは数の項だけではありません。文字の項も、同じように移項できます。

文字の項を移項する 3x イコール 2x たす 6 の右辺にある2xが、符号を変えて左辺へ移り、3x ひく 2x イコール 6 になる様子を矢印で示した図。 文字の項も移項できる 3x = 2x + 6 符号を変えて 反対の辺へ 3x 2x = 6 x = 6 同類項をまとめた

右辺の \(+2x\) を、\(-2x\) に変えて左辺へ移します。

3x = 2x + 6
3x − 2x = 6
      x = 6

\(3x - 2x\) は同類項なので、まとめて \(x\) になります。\(3 - 2 = 1\) で、\(1x\) すなわち \(x\) です。

省略する前の形も見ておきます。

3x = 2x + 6
3x − 2x = 2x + 6 − 2x      ← 両辺から2xを引いた(性質②)
3x − 2x = 6
      x = 6

引く数が文字の式であっても、両辺に同じことをしているので等式は保たれます。

左辺 = 3 × 6 = 18
右辺 = 2 × 6 + 6 = 12 + 6 = 18
左辺 = 右辺 なので x=6 は解

例題3

\(15 = x + 8\) を解きます。左右が入れかわった形でも、やることは同じです。\(x\) のない側へ数の項を移します。ここでは右辺の \(+8\) を、\(-8\) に変えて左辺へ移します。

15 = x + 8
15 − 8 = x
     7 = x
     x = 7              ← 答えは x = の向きにそろえる
左辺 = 15
右辺 = 7 + 8 = 15
左辺 = 右辺 なので x=7 は解

ここまでで書けるようになったこと

移項を使うと、これまで3行かかっていた変形が1行で書けます。書く量が減るだけでなく、式の形の変化が目で追いやすくなります。

ただし、このレッスンで練習したのは、移す項が1つだけの式です。次の形を扱いました。

  • \(x + a = b\) の形
  • \(x - a = b\) の形
  • \(ax = bx + c\) の形。ここでは、文字の項をまとめると係数が1になるものを選んであります

\(ax = bx + c\) で係数が1にならないときは、まとめたあとに両辺をその係数で割ります。割り算そのものは前のセクションで扱ったので、次のレッスンから少しずつ出てきます。

いっぽう \(3x + 5 = 20\) のような式は、\(+5\) を移項してから、さらに係数の3で両辺を割ることになります。移項と割り算のどちらを先にするかという順番の話は、このセクションの4本目で扱います。今は解こうとしなくて大丈夫です。

今日の問い

\(x - 4 = 9\) を移項して解くと \(x = 9 + 4\) になります。\(-4\)\(+4\) に変わりました。この符号の変化は、決まりとして覚えるしかないのでしょうか。

覚える必要はありません。省略する前の形に戻せば、どこから来たのかが見えます。

x − 4 = 9
x − 4 + 4 = 9 + 4      ← 両辺に4を足した(性質①)
        x = 9 + 4

右辺の \(+4\) は、両辺に足した4がそのまま残ったものです。左辺の \(-4\) は、足した \(+4\) と打ち消し合って消えました。

つまり \(-4\)\(+4\) に「変身した」のではありません。両辺に同じ操作をした結果、反対の辺に反対の符号で現れたのです。移項という書き方は、この結果だけを写し取っています。

なぜどんな項でも必ずそうなるのかを、もっと丁寧に見るのは次のレッスンの仕事です。今日は次の2つを持っていてください。

  • 移項は、等式の性質を短く書いたものである
  • 迷ったら、省略する前の形に戻せる

よくある間違い

まちがい1:移したのに、符号を変えない

✗ x + 5 = 12
✗     x = 12 + 5
✗     x = 17

項を右辺へ移しましたが、\(+5\) のままです。移項は符号を変えるところまでがセットです。

○ x + 5 = 12
○     x = 12 − 5
○     x = 7

\(x = 17\) を元の式に入れると、左辺は \(17 + 5 = 22\) で、右辺の12と合いません。代入して合わなければ、必ずどこかの行が違います。

まちがい2:符号を変えたのに、項を移さない

✗ x + 5 = 12
✗ x − 5 = 12

左辺の \(+5\)\(-5\) に書き換えただけで、右辺へ移していません。これは元の式とは別の式です。

移項は「符号を変える」と「反対の辺へ移す」の2つがそろって初めて成り立ちます。片方だけでは、式の意味が変わってしまいます。

まちがい3:移していない項の符号まで変える

✗ 3x = 2x + 6
✗ 3x − 2x = −6

移したのは \(2x\) だけです。それなのに、右辺に残っている6の符号まで変えてしまいました。

○ 3x = 2x + 6
○ 3x − 2x = 6
○       x = 6

動かした項だけが符号を変えます。動かさなかった項は、そのままの姿で残ります。

まちがい4:左右が入れかわった形で、向きをまちがえる

✗ 15 = x + 8
✗ 15 + 8 = x
✗    23 = x

右辺の \(+8\) を左辺へ移しているので、\(-8\) にしなければなりません。

○ 15 = x + 8
○ 15 − 8 = x
○      7 = x
○      x = 7

\(x\) が右辺にあっても、移項のやり方は変わりません。移す項の符号を変える、それだけです。

自分で確かめよう

紙に書いてから、答えを開いてください。移項したときは、どの項を動かしたのかが分かるように書くこと。

  1. 移項とは何か、言葉で書きなさい。

  2. 次は等式の性質を使って解いた式です。移項を使って、途中の1行を省いた形に書き直しなさい。

x + 9 = 21
x + 9 − 9 = 21 − 9
        x = 21 − 9
        x = 12
  1. 次は移項を使って書いた式です。省略する前の形に戻しなさい。両辺への操作の行を書き足します。
x − 6 = 10
    x = 10 + 6
    x = 16
  1. \(x + 13 = 20\) を、移項を使って解きなさい。

  2. \(x - 8 = 5\) を、移項を使って解きなさい。

  3. \(5x = 4x + 9\) を、移項を使って解きなさい。

  4. 次の変形はまちがっています。どこが違いますか。正しく解き直しなさい。

x − 7 = 3
    x = 3 − 7
    x = −4
答えと考え方

1. 移項とは、項を、符号を変えて反対の辺へ移すことです。

新しい規則ではなく、等式の性質①②を短く書いたものです。両辺に同じ数を足す(引く)という行を省略した結果、移した項が反対の符号で反対の辺に現れます。

2. 省くのは2行目です。

x + 9 = 21
    x = 21 − 9
    x = 12

左辺の \(+9\) を、\(-9\) に変えて右辺へ移しました。

左辺 = 12 + 9 = 21
右辺 = 21
左辺 = 右辺 なので x=12 は解

3. 右辺の \(+6\) は、両辺に6を足したしるしです。その行を書き足します。

x − 6 = 10
x − 6 + 6 = 10 + 6      ← 両辺に6を足した(性質①)
        x = 10 + 6
        x = 16

左辺の \(-6\) と、足した \(+6\) が打ち消し合って \(x\) だけが残っています。

左辺 = 16 − 6 = 10
右辺 = 10
左辺 = 右辺 なので x=16 は解

4. 左辺の \(+13\) を、\(-13\) に変えて右辺へ移します。

x + 13 = 20
     x = 20 − 13
     x = 7
左辺 = 7 + 13 = 20
右辺 = 20
左辺 = 右辺 なので x=7 は解

5. 左辺の \(-8\) を、\(+8\) に変えて右辺へ移します。

x − 8 = 5
    x = 5 + 8
    x = 13
左辺 = 13 − 8 = 5
右辺 = 5
左辺 = 右辺 なので x=13 は解

6. 右辺の \(+4x\) を、\(-4x\) に変えて左辺へ移します。文字の項でも同じです。

5x = 4x + 9
5x − 4x = 9
      x = 9

\(5x - 4x\) は同類項なので、\(5 - 4 = 1\) より \(x\) になります。

左辺 = 5 × 9 = 45
右辺 = 4 × 9 + 9 = 36 + 9 = 45
左辺 = 右辺 なので x=9 は解

7. 2行目から違います。

左辺の \(-7\) を右辺へ移すとき、符号を変えていません。移項したのだから \(+7\) にしなければなりません。

○ x − 7 = 3
○     x = 3 + 7
○     x = 10
左辺 = 10 − 7 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=10 は解

誤答の \(x = -4\) を元の式に入れると、左辺は \(-4 - 7 = -11\) で、右辺の3と合いません。ここで気づけます。

省略する前の形に戻して確かめることもできます。

x − 7 = 3
x − 7 + 7 = 3 + 7      ← 両辺に7を足した(性質①)
        x = 3 + 7
        x = 10

次のレッスンへ

移項を「符号を変えて反対の辺へ移すこと」と決めました。ただし符号が変わる理由は、まだ「両辺に同じ操作をした結果そうなる」としか言っていません。次のレッスンでは、そこだけを取り出します。数の項でも文字の項でも、正の項でも負の項でも、必ず符号が入れかわるのはなぜか。理由がはっきりすれば、移項は覚えるものではなくなります。

次のレッスンへ なぜ符号が変わるのか →

クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。

UNDERSTANDING CHECK

理解チェック:移項とは何か

70% 合格ライン
  1. 設問 0
    移項とは何ですか。正しい説明を選びなさい。
  2. 設問 1
    $x + 7 = 15$ を $x = 15 - 7$ と書いてよいのは、なぜですか。
  3. 設問 2
    $x - 12 = 5$ を移項した次の行として、正しいものはどれですか。
  4. 設問 3
    $4x = 3x - 14$ を移項して解くと、$x$ の値はいくつですか。
  5. 設問 4
    ある人が $x + 17 = 6$ を解いて、$x = 6 + 17$ から $x = 23$ と答えました。まちがいの説明として、正しいものはどれですか。

まずは自分で選んでみましょう。採点・学習履歴への記録は、回答APIとの連携時に追加します。