移項とは何か
このレッスンでできるようになること
- 移項が何をしていることなのかを、等式の性質にさかのぼって説明できる
- 等式の性質で3行かけて書いた変形を、移項を使って1行に書き直せる
- 移項した式から、省略する前の形に戻せる
- 数の項も文字の項も、符号を変えて反対の辺へ移せる
前のレッスンの確認
- 項 … 式を \(+\) と \(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
- 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
- 係数 … 文字にかけられている数のこと
- 等式の性質① … \(A = B\) のとき、\(A + C = B + C\)
- 等式の性質② … \(A = B\) のとき、\(A - C = B - C\)
前のセクションで、\(x + a = b\)、\(x - a = b\)、\(ax = b\)、\(\dfrac{x}{a} = b\) の4つの形が解けるようになりました。解き方はもう手の中にあります。このレッスンで新しく増えるのは、同じ解き方を短く書く方法です。
3行は少し長い
\(x + 5 = 12\) を、等式の性質だけで解きます。
x + 5 = 12
x + 5 − 5 = 12 − 5 ← 両辺から5を引いた(性質②)
x = 12 − 5
x = 7
これで正しく解けています。ここで2行目をよく見てください。
2行目は「両辺から5を引きます」という宣言の行です。左辺は \(x + 5 - 5\) になりますが、\(+5\) と \(-5\) は打ち消し合うので、残るのは \(x\) だけです。右辺は \(12 - 5\) です。
つまり2行目を書いても書かなくても、次に出てくる行は必ず \(x = 12 - 5\) になります。結果が決まっているなら、書かなくてもよいのではないか。 これが今日の出発点です。
2行目を書かずに進む
2行目を飛ばして書くと、こうなります。
x + 5 = 12
x = 12 − 5
x = 7
3行が2行になりました。1行目と2行目だけを見比べます。
- 1行目の左辺にあった \(+5\) が、
- 2行目の右辺に \(-5\) となって現れています。
辺が変わり、符号も変わりました。この見え方が、これから何度も出てきます。
省略する前と、省略したあと
同じ式を上下に並べます。どの行がどこにつながっているかを目で追ってください。
上の1行目は、下の1行目にそのまま写ります。上の3行目は、下の2行目にそのまま写ります。消えたのは真ん中の1行だけです。答えの \(x = 7\) は、どちらの書き方でも同じです。
移項
真ん中の行を省いて書くこの進み方には、名前がついています。
移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
\(x + 5 = 12\) では、左辺の項 \(+5\) を、\(-5\) に変えて右辺へ移しました。だから \(x = 12 - 5\) になります。
大事なのは、符号を変えることと反対の辺へ移すことが、必ずセットだという点です。どちらか片方だけでは移項になりません。
移項は新しい規則ではない
移項は、新しく覚える計算のルールではありません。等式の性質を短く書いただけです。だからいつでも、省略する前の形に戻せます。
戻し方を実際にやってみます。次の式が目の前にあるとします。
x + 5 = 12
x = 12 − 5
右辺の \(-5\) は、両辺から5を引いたしるしです。そこで、消えていた行を書き足します。
x + 5 = 12
x + 5 − 5 = 12 − 5 ← 書き足した行(性質②)
x = 12 − 5
元の3行にもどりました。\(x - 4 = 9\) でもやってみます。移項した形はこうです。
x − 4 = 9
x = 9 + 4
右辺の \(+4\) は、両辺に4を足したしるしです。書き足します。
x − 4 = 9
x − 4 + 4 = 9 + 4 ← 書き足した行(性質①)
x = 9 + 4
移項した式は、いつでもこの形に戻せます。 自分の書いた式が不安になったら、戻して確かめてください。戻せない式は、どこかが違っています。
例題1
\(x - 11 = 6\) を解きます。負の項を右へ移します。
x − 11 = 6
x = 6 + 11
x = 17
左辺の \(-11\) が、右辺で \(+11\) になりました。符号を変えて移しています。
左辺 = 17 − 11 = 6
右辺 = 6
左辺 = 右辺 なので x=17 は解
例題2
\(3x = 2x + 6\) を解きます。移せるのは数の項だけではありません。文字の項も、同じように移項できます。
右辺の \(+2x\) を、\(-2x\) に変えて左辺へ移します。
3x = 2x + 6
3x − 2x = 6
x = 6
\(3x - 2x\) は同類項なので、まとめて \(x\) になります。\(3 - 2 = 1\) で、\(1x\) すなわち \(x\) です。
省略する前の形も見ておきます。
3x = 2x + 6
3x − 2x = 2x + 6 − 2x ← 両辺から2xを引いた(性質②)
3x − 2x = 6
x = 6
引く数が文字の式であっても、両辺に同じことをしているので等式は保たれます。
左辺 = 3 × 6 = 18
右辺 = 2 × 6 + 6 = 12 + 6 = 18
左辺 = 右辺 なので x=6 は解
例題3
\(15 = x + 8\) を解きます。左右が入れかわった形でも、やることは同じです。\(x\) のない側へ数の項を移します。ここでは右辺の \(+8\) を、\(-8\) に変えて左辺へ移します。
15 = x + 8
15 − 8 = x
7 = x
x = 7 ← 答えは x = の向きにそろえる
左辺 = 15
右辺 = 7 + 8 = 15
左辺 = 右辺 なので x=7 は解
ここまでで書けるようになったこと
移項を使うと、これまで3行かかっていた変形が1行で書けます。書く量が減るだけでなく、式の形の変化が目で追いやすくなります。
ただし、このレッスンで練習したのは、移す項が1つだけの式です。次の形を扱いました。
- \(x + a = b\) の形
- \(x - a = b\) の形
- \(ax = bx + c\) の形。ここでは、文字の項をまとめると係数が1になるものを選んであります
\(ax = bx + c\) で係数が1にならないときは、まとめたあとに両辺をその係数で割ります。割り算そのものは前のセクションで扱ったので、次のレッスンから少しずつ出てきます。
いっぽう \(3x + 5 = 20\) のような式は、\(+5\) を移項してから、さらに係数の3で両辺を割ることになります。移項と割り算のどちらを先にするかという順番の話は、このセクションの4本目で扱います。今は解こうとしなくて大丈夫です。
今日の問い
\(x - 4 = 9\) を移項して解くと \(x = 9 + 4\) になります。\(-4\) が \(+4\) に変わりました。この符号の変化は、決まりとして覚えるしかないのでしょうか。
覚える必要はありません。省略する前の形に戻せば、どこから来たのかが見えます。
x − 4 = 9
x − 4 + 4 = 9 + 4 ← 両辺に4を足した(性質①)
x = 9 + 4
右辺の \(+4\) は、両辺に足した4がそのまま残ったものです。左辺の \(-4\) は、足した \(+4\) と打ち消し合って消えました。
つまり \(-4\) が \(+4\) に「変身した」のではありません。両辺に同じ操作をした結果、反対の辺に反対の符号で現れたのです。移項という書き方は、この結果だけを写し取っています。
なぜどんな項でも必ずそうなるのかを、もっと丁寧に見るのは次のレッスンの仕事です。今日は次の2つを持っていてください。
- 移項は、等式の性質を短く書いたものである
- 迷ったら、省略する前の形に戻せる
よくある間違い
まちがい1:移したのに、符号を変えない
✗ x + 5 = 12
✗ x = 12 + 5
✗ x = 17
項を右辺へ移しましたが、\(+5\) のままです。移項は符号を変えるところまでがセットです。
○ x + 5 = 12
○ x = 12 − 5
○ x = 7
\(x = 17\) を元の式に入れると、左辺は \(17 + 5 = 22\) で、右辺の12と合いません。代入して合わなければ、必ずどこかの行が違います。
まちがい2:符号を変えたのに、項を移さない
✗ x + 5 = 12
✗ x − 5 = 12
左辺の \(+5\) を \(-5\) に書き換えただけで、右辺へ移していません。これは元の式とは別の式です。
移項は「符号を変える」と「反対の辺へ移す」の2つがそろって初めて成り立ちます。片方だけでは、式の意味が変わってしまいます。
まちがい3:移していない項の符号まで変える
✗ 3x = 2x + 6
✗ 3x − 2x = −6
移したのは \(2x\) だけです。それなのに、右辺に残っている6の符号まで変えてしまいました。
○ 3x = 2x + 6
○ 3x − 2x = 6
○ x = 6
動かした項だけが符号を変えます。動かさなかった項は、そのままの姿で残ります。
まちがい4:左右が入れかわった形で、向きをまちがえる
✗ 15 = x + 8
✗ 15 + 8 = x
✗ 23 = x
右辺の \(+8\) を左辺へ移しているので、\(-8\) にしなければなりません。
○ 15 = x + 8
○ 15 − 8 = x
○ 7 = x
○ x = 7
\(x\) が右辺にあっても、移項のやり方は変わりません。移す項の符号を変える、それだけです。
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。移項したときは、どの項を動かしたのかが分かるように書くこと。
移項とは何か、言葉で書きなさい。
次は等式の性質を使って解いた式です。移項を使って、途中の1行を省いた形に書き直しなさい。
x + 9 = 21
x + 9 − 9 = 21 − 9
x = 21 − 9
x = 12
- 次は移項を使って書いた式です。省略する前の形に戻しなさい。両辺への操作の行を書き足します。
x − 6 = 10
x = 10 + 6
x = 16
\(x + 13 = 20\) を、移項を使って解きなさい。
\(x - 8 = 5\) を、移項を使って解きなさい。
\(5x = 4x + 9\) を、移項を使って解きなさい。
次の変形はまちがっています。どこが違いますか。正しく解き直しなさい。
x − 7 = 3
x = 3 − 7
x = −4
答えと考え方
1. 移項とは、項を、符号を変えて反対の辺へ移すことです。
新しい規則ではなく、等式の性質①②を短く書いたものです。両辺に同じ数を足す(引く)という行を省略した結果、移した項が反対の符号で反対の辺に現れます。
2. 省くのは2行目です。
x + 9 = 21
x = 21 − 9
x = 12
左辺の \(+9\) を、\(-9\) に変えて右辺へ移しました。
左辺 = 12 + 9 = 21
右辺 = 21
左辺 = 右辺 なので x=12 は解
3. 右辺の \(+6\) は、両辺に6を足したしるしです。その行を書き足します。
x − 6 = 10
x − 6 + 6 = 10 + 6 ← 両辺に6を足した(性質①)
x = 10 + 6
x = 16
左辺の \(-6\) と、足した \(+6\) が打ち消し合って \(x\) だけが残っています。
左辺 = 16 − 6 = 10
右辺 = 10
左辺 = 右辺 なので x=16 は解
4. 左辺の \(+13\) を、\(-13\) に変えて右辺へ移します。
x + 13 = 20
x = 20 − 13
x = 7
左辺 = 7 + 13 = 20
右辺 = 20
左辺 = 右辺 なので x=7 は解
5. 左辺の \(-8\) を、\(+8\) に変えて右辺へ移します。
x − 8 = 5
x = 5 + 8
x = 13
左辺 = 13 − 8 = 5
右辺 = 5
左辺 = 右辺 なので x=13 は解
6. 右辺の \(+4x\) を、\(-4x\) に変えて左辺へ移します。文字の項でも同じです。
5x = 4x + 9
5x − 4x = 9
x = 9
\(5x - 4x\) は同類項なので、\(5 - 4 = 1\) より \(x\) になります。
左辺 = 5 × 9 = 45
右辺 = 4 × 9 + 9 = 36 + 9 = 45
左辺 = 右辺 なので x=9 は解
7. 2行目から違います。
左辺の \(-7\) を右辺へ移すとき、符号を変えていません。移項したのだから \(+7\) にしなければなりません。
○ x − 7 = 3
○ x = 3 + 7
○ x = 10
左辺 = 10 − 7 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=10 は解
誤答の \(x = -4\) を元の式に入れると、左辺は \(-4 - 7 = -11\) で、右辺の3と合いません。ここで気づけます。
省略する前の形に戻して確かめることもできます。
x − 7 = 3
x − 7 + 7 = 3 + 7 ← 両辺に7を足した(性質①)
x = 3 + 7
x = 10
次のレッスンへ
移項を「符号を変えて反対の辺へ移すこと」と決めました。ただし符号が変わる理由は、まだ「両辺に同じ操作をした結果そうなる」としか言っていません。次のレッスンでは、そこだけを取り出します。数の項でも文字の項でも、正の項でも負の項でも、必ず符号が入れかわるのはなぜか。理由がはっきりすれば、移項は覚えるものではなくなります。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。