かっこの前がマイナスのとき
このレッスンでできるようになること
- かっこの前のマイナスが \(-1\) をかけていることだと説明できる
- \(-(x - 4)\) のような式のかっこを、符号を落とさずに外せる
- \(5 - 2(x - 3)\) のように、かっこの前に別の項が残っている式のかっこを外せる
- 外したあとの式が正しいかどうかを、数を代入して自分で確かめられる
前のレッスンの確認
- 項 … 式を \(+\) と \(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
- 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
- 係数 … 文字にかけられている数のこと
- 移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
- 分配法則 … \(a(b + c) = ab + ac\)
前の2つのレッスンでは、\(3(x + 2)\) のようにかっこの外が正の数の場合の外し方と、外したあとに同類項をまとめる手順を学びました。文字式の約束で、1は書かないことも確認しています。\(x\) の係数は \(1\)、\(-x\) の係数は \(-1\) です。
ここからは、かっこの前がマイナスになります。このセクションでいちばん答えを落とすのがここです。 落とす理由はほとんどひとつで、符号の変え忘れです。
今日の問いを先に出しておきます。\(-(x - 4)\) は \(-x - 4\) でしょうか、それとも \(-x + 4\) でしょうか。 読み進めながら考えてください。
かっこの前のマイナスは何を表しているか
\(-(x - 4)\) を見ると、かっこの前にマイナスだけがあって、数が見当たりません。分配法則は「かっこの外の数を中にかける」ルールでした。かける数がないように見えるので、ここで手が止まります。
思い出してほしいのは、文字式では1を書かないという約束です。
- \(x\) は、本当は \(1 \times x\) です
- \(-x\) は、本当は \(-1 \times x\) です
\(1\) と \(\times\) が省略されているだけで、消えてしまったわけではありません。
かっこの前でも、まったく同じことが起きています。
\(-(x - 4) = -1 \times (x - 4)\)
かっこの前の \(-\) は、\(-1\) から \(1\) と \(\times\) が省略された形です。書かれていないだけで、\(-1\) がかけられています。
だからここでも、分配法則がそのまま使えます。かっこの外の数は \(-1\) です。手順として覚えるのではなく、\(-1\) がかけられているから分配法則が使えるという順番で見てください。
負の数どうしのかけ算を思い出す
かっこの中の \(-4\) に \(-1\) をかけると \((-1) \times (-4) = +4\) になります。ここが分かれ目です。
正負の数のかけ算のきまりは、符号だけ見れば次の2行です。
| かける2つの数 | 積の符号 |
|---|---|
| 同じ符号どうし(正 \(\times\) 正、負 \(\times\) 負) | 正 |
| 違う符号どうし(正 \(\times\) 負、負 \(\times\) 正) | 負 |
\(-1\) も \(-4\) も負の数なので、負かける負で正になります。だから \((-1) \times (-4) = +4\) です。
ここを飛ばすと、かっこの中の \(-4\) が外したあとに \(+4\) になる理由が分かりません。中のマイナスと外のマイナスがぶつかると、プラスになる。 これが今日の中心にある計算です。
符号がどう変わるかを図で見る
かっこの外の \(-1\) は、中の両方の項に届きます。\(x\) は \(-x\) になり、\(-4\) は \(+4\) になります。届くのは片方だけではありません。
例題で手順を確かめる
やることはいつも同じ3つです。
- かっこの外の数を確かめる(マイナスだけなら \(-1\))
- その数を、かっこの中のすべての項にかける
- 出てきた符号を、そのまま書き並べる
例題1
\(-(x - 4)\) のかっこを外します。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-(x - 4)\) | もとの式。外の数は \(-1\) |
| \((-1) \times x + (-1) \times (-4)\) | \(-1\) を中のすべての項にかけた |
| \(-x + 4\) | かけ算の結果を書き並べた |
例題2
\(-(2x + 5)\) のかっこを外します。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-(2x + 5)\) | もとの式。外の数は \(-1\) |
| \((-1) \times 2x + (-1) \times 5\) | \(-1\) を中のすべての項にかけた |
| \(-2x - 5\) | かけ算の結果を書き並べた |
中が \(+5\) だったので、外したあとは \(-5\) です。\(+\) が \(-\) に変わっています。
例題3
\(-2(x + 5)\) のように、外の数がはっきり書かれている場合です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-2(x + 5)\) | もとの式。外の数は \(-2\) |
| \((-2) \times x + (-2) \times 5\) | \(-2\) を中のすべての項にかけた |
| \(-2x - 10\) | かけ算の結果を書き並べた |
例題4
\(-3(2x - 1)\) は、外が負で、中にも引き算がある形です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-3(2x - 1)\) | もとの式。外の数は \(-3\) |
| \((-3) \times 2x + (-3) \times (-1)\) | \(-3\) を中のすべての項にかけた |
| \(-6x + 3\) | \((-3) \times (-1)\) は負かける負なので \(+3\) |
例題5
\(5 - 2(x - 3)\) は、このセクション最大の難所です。見るべきは、どこからどこまでがかっこにかかっているかです。
\(5\) はかっこの外にぽつんとある項で、かっこには関係ありません。かっこにかかっているのは、その次の \(-2\) です。\(-\) は \(2\) にくっついていて、\(-2\) でひとかたまりの数です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(5 - 2(x - 3)\) | もとの式。かっこにかかっているのは \(-2\) |
| \(5 + (-2) \times x + (-2) \times (-3)\) | \(5\) はそのまま置き、\(-2\) を中の両方にかけた |
| \(5 - 2x + 6\) | かけ算を実行した |
| \(-2x + 11\) | \(5\) と \(6\) をまとめた |
\(5\) を巻き込んで計算しないこと、\(-2\) を \(x\) だけにかけて \(-3\) を忘れないこと。この2つのどちらかを外すと、答えが変わります。
中の項を全部変える
かっこの前がマイナスのとき、中のすべての項の符号が変わります。
| もとの式 | かっこを外したあと |
|---|---|
| \(-(x + 3)\) | \(-x - 3\) |
| \(-(x - 3)\) | \(-x + 3\) |
| \(-(2x + 7)\) | \(-2x - 7\) |
| \(-(3x - 8)\) | \(-3x + 8\) |
| \(-(x + 3 - 5)\) | \(-x - 3 + 5\) |
項が2つなら2つとも、3つなら3つとも変わります。1つでも変え忘れると答えが変わります。 外したあとに、かっこの中にあった項の数と、外に出た項の数が合っているかを数えてください。
代入して確かめる
外し方が正しいかどうかは、数を代入すれば自分で判定できます。元の式と、外したあとの式に同じ数を入れて、値が同じになるかを見ます。
\(5 - 2(x - 3) = -2x + 11\) を確かめます。\(x = 3\) を入れます。かっこの中が0になって計算が楽だからです。
x = 3 のとき
元の式 = 5 − 2 × (3 − 3) = 5 − 0 = 5
外した式 = −2 × 3 + 11 = −6 + 11 = 5
どちらも 5 なので、外し方は正しい
この2行を書くだけで、符号の落とし忘れはほとんど見つかります。答えに自信がないときは、必ずこの形で確かめてください。 入れる数は何でもかまいませんが、かっこの中が0になる数か、\(x = 1\) が計算しやすいです。
今日の問い
\(-(x - 4)\) は \(-x - 4\) でしょうか、\(-x + 4\) でしょうか。
答えは \(-x + 4\) です。
理由はここまでで見た通りです。\(-(x - 4)\) は \(-1 \times (x - 4)\) の \(1\) と \(\times\) が省略された形です。だから外の \(-1\) を、中の \(x\) と \(-4\) の両方にかけます。
- \((-1) \times x = -x\)
- \((-1) \times (-4) = +4\)(負かける負で正)
よって \(-x + 4\) です。
\(-x - 4\) と書いてしまう人は、かっこの中の \(-4\) の符号を変えずに、そのまま写しています。マイナスは \(x\) にだけついたのではありません。\(x\) にも \(-4\) にもついています。
代入して確かめます。
x = 1 のとき
元の式 = −(1 − 4) = −(−3) = 3
−x + 4 = −1 + 4 = 3 ← 合う
−x − 4 = −1 − 4 = −5 ← 合わない
\(-x - 4\) は元の式と値が違うので、まちがいだと分かります。
よくある間違い
まちがい1:かっこの中の後ろの項の符号を変えない
✗ −(x − 4) = −x − 4
\(x\) の符号は変えたのに、\(-4\) をそのまま書き写しています。かっこの外の \(-1\) は、中のすべての項にかかります。
○ −(x − 4) = (−1) × x + (−1) × (−4) = −x + 4
\(x = 1\) で確かめると、元の式は \(-(1 - 4) = 3\) ですが、\(-x - 4\) は \(-5\) です。合いません。
まちがい2:外の数を、最初の項にしかかけない
✗ −2(x − 3) = −2x − 3
\(-2\) を \(x\) にはかけましたが、\(-3\) にかけ忘れています。\(-3\) にも \(-2\) をかけて、\((-2) \times (-3) = +6\) です。
○ −2(x − 3) = (−2) × x + (−2) × (−3) = −2x + 6
\(x = 1\) で確かめると、元の式は \(-2 \times (1 - 3) = 4\)、正しい式は \(-2 + 6 = 4\) で合います。誤答は \(-2 - 3 = -5\) で合いません。
まちがい3:かっこの前にある項まで巻き込む
✗ 5 − 2(x − 3) = 3(x − 3) = 3x − 9
\(5\) と \(-2\) を先に計算して \(3\) にしています。\(5\) はかっこの外にある別の項で、かっこにかかっているのは \(-2\) だけです。かけ算はたし算・ひき算より先に計算します。
○ 5 − 2(x − 3) = 5 − 2x + 6 = −2x + 11
\(x = 1\) を入れると、元の式は \(5 - 2 \times (1 - 3) = 9\)、誤答の \(3x - 9\) は \(-6\) です。合いません。
まちがい4:かける数を正の2だと思ってしまう
✗ 5 − 2(x − 3) = 5 − 2x − 6 = −2x − 1
\(-\) を「ひき算の記号」としてだけ見て、かける数を \(+2\) にしています。この \(-\) は \(2\) にくっついた符号で、かける数は \(-2\) です。だから \((-2) \times (-3) = +6\) になります。
○ 5 − 2(x − 3) = 5 − 2x + 6 = −2x + 11
\(x = 1\) を入れると、元の式は \(9\)、誤答の \(-2x - 1\) は \(-3\) です。合いません。
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。かっこの外の数を先に丸で囲んでから始めると、かけ忘れが減ります。
\(-(x + 6)\) のかっこを外しなさい。
\(-(x - 9)\) のかっこを外しなさい。
\(-4(x + 2)\) のかっこを外しなさい。
\(-5(x - 3)\) のかっこを外しなさい。
\(8 - 3(x - 2)\) のかっこを外しなさい。
ある人が \(-(x - 4)\) を \(-x - 4\) としました。\(x = 2\) を代入して、この答えがまちがっていることを示しなさい。正しい答えも書きなさい。
次の変形はまちがっています。どこが違いますか。正しく直し、代入して確かめなさい。
−2(3x − 4) = −6x − 8
- かっこの前がマイナスのとき、かっこの中のいくつの項の符号が変わりますか。理由もあわせて書きなさい。
答えと考え方
1. 外の数は \(-1\) です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-(x + 6)\) | もとの式。外の数は \(-1\) |
| \((-1) \times x + (-1) \times 6\) | \(-1\) を中のすべての項にかけた |
| \(-x - 6\) | かけ算の結果を書き並べた |
x = 1 のとき
元の式 = −(1 + 6) = −7
外した式 = −1 − 6 = −7
どちらも −7 なので、外し方は正しい
2. 外の数は \(-1\) です。中の \(-9\) にかけると、負かける負で \(+9\) になります。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-(x - 9)\) | もとの式。外の数は \(-1\) |
| \((-1) \times x + (-1) \times (-9)\) | \(-1\) を中のすべての項にかけた |
| \(-x + 9\) | \((-1) \times (-9) = +9\) |
x = 1 のとき
元の式 = −(1 − 9) = −(−8) = 8
外した式 = −1 + 9 = 8
どちらも 8 なので、外し方は正しい
3. 外の数は \(-4\) です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-4(x + 2)\) | もとの式。外の数は \(-4\) |
| \((-4) \times x + (-4) \times 2\) | \(-4\) を中のすべての項にかけた |
| \(-4x - 8\) | かけ算の結果を書き並べた |
x = 1 のとき
元の式 = −4 × (1 + 2) = −4 × 3 = −12
外した式 = −4 − 8 = −12
どちらも −12 なので、外し方は正しい
4. 外の数は \(-5\) です。\((-5) \times (-3) = +15\) です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-5(x - 3)\) | もとの式。外の数は \(-5\) |
| \((-5) \times x + (-5) \times (-3)\) | \(-5\) を中のすべての項にかけた |
| \(-5x + 15\) | \((-5) \times (-3) = +15\) |
x = 1 のとき
元の式 = −5 × (1 − 3) = −5 × (−2) = 10
外した式 = −5 + 15 = 10
どちらも 10 なので、外し方は正しい
5. \(8\) はそのままにして、\(-3\) を \(x\) と \(-2\) の両方にかけます。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(8 - 3(x - 2)\) | もとの式。かっこにかかっているのは \(-3\) |
| \(8 + (-3) \times x + (-3) \times (-2)\) | \(8\) はそのまま置き、\(-3\) を中の両方にかけた |
| \(8 - 3x + 6\) | かけ算を実行した |
| \(-3x + 14\) | \(8\) と \(6\) をまとめた |
x = 2 のとき
元の式 = 8 − 3 × (2 − 2) = 8 − 0 = 8
外した式 = −3 × 2 + 14 = −6 + 14 = 8
どちらも 8 なので、外し方は正しい
6. \(x = 2\) を代入します。
x = 2 のとき
元の式 = −(2 − 4) = −(−2) = 2
その人の式 = −2 − 4 = −6
2 と −6 は違うので、−x − 4 はまちがい
正しい答えは \(-x + 4\) です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(-(x - 4)\) | もとの式。外の数は \(-1\) |
| \((-1) \times x + (-1) \times (-4)\) | \(-1\) を中のすべての項にかけた |
| \(-x + 4\) | \((-1) \times (-4) = +4\) |
x = 2 のとき
元の式 = −(2 − 4) = 2
外した式 = −2 + 4 = 2
どちらも 2 なので、外し方は正しい
7. 後ろの項の符号が違います。\((-2) \times (-4)\) は負かける負なので \(+8\) ですが、\(-8\) と書かれています。
✗ −2(3x − 4) = −6x − 8
○ −2(3x − 4) = (−2) × 3x + (−2) × (−4) = −6x + 8
x = 1 のとき
元の式 = −2 × (3 − 4) = −2 × (−1) = 2
正しい式 = −6 + 8 = 2 ← 合う
誤答 = −6 − 8 = −14 ← 合わない
8. 中のすべての項の符号が変わります。
かっこの前のマイナスは、\(-1\) がかけられている形です。分配法則により、外の数はかっこの中のすべての項にかかります。\(-1\) をかけられた項は符号が反対になるので、項が2つなら2つとも、3つなら3つとも変わります。1つでも変え忘れると、元の式とは値の違う式になってしまいます。
次のレッスンへ
かっこの前がマイナスでも、\(-1\) を書き戻せば分配法則で外せることが分かりました。ここまでで、かっこの外し方はひと通りそろっています。次は、この外し方を方程式の中で使います。かっこを外して、移項して、両辺を同じ数でわる。これまでのレッスンで学んだ手順が、1本の流れにつながります。
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