両辺に同じ数をかける
このレッスンでできるようになること
- 等式の性質③を、自分の言葉と式で説明できる
- \(\dfrac{x}{a} = b\) の形の方程式を、理由を書きながら解ける
- 両辺に0をかけてはいけない理由を説明できる
前のレッスンの確認
- 等式 … 等号 \(=\) で結ばれた式
- 左辺 … 等号の左側にある式/右辺 … 等号の右側にある式/両辺 … 左辺と右辺の両方
- 成り立つ … 左辺の値と右辺の値が等しくなること
- 解 … その方程式を成り立たせる、文字の値/解く … 解を求めること
- 代入 … 式の中の文字を、数に置き換えること
- 等式の性質① … \(A = B\) のとき、\(A + C = B + C\)
- 等式の性質② … \(A = B\) のとき、\(A - C = B - C\)
足す・引くだけでは足りない
前のレッスンで、足し算・引き算だけでできている方程式は解けるようになりました。ところが、次の式の前では手が止まります。
\(\dfrac{x}{2} = 6\)
\(\dfrac{x}{2}\) は \(x \div 2\) と同じ意味です。「ある数 \(x\) を2で割ったら6になった」と読めます。この先の途中式では、桁がそろって読みやすいように \(x \div 2\) の形で書きます。
まず性質①で、両辺に2を足してみます。
x ÷ 2 = 6
x ÷ 2 + 2 = 6 + 2 ← 両辺に2を足した(性質①)
x ÷ 2 + 2 = 8
左辺には \(x \div 2\) がそのまま残っています。それどころか \(+2\) が増えて、前より遠ざかりました。では性質②で、両辺から2を引いてみます。
x ÷ 2 = 6
x ÷ 2 − 2 = 6 − 2 ← 両辺から2を引いた(性質②)
x ÷ 2 − 2 = 4
やはり \(x \div 2\) は消えません。2で割られている状態は、足しても引いても外れないのです。
前のレッスンで使った考え方は「打ち消すには反対の操作をする」でした。足されているなら引く、引かれているなら足す。同じように考えれば、割られているならかけるはずです。ここで新しい性質が要ります。
等式の性質③(両辺に同じ数をかける)
\(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
言葉にすると「等しい2つの量に、同じ数をかけても、等しいままである」ということです。
性質①②が「両方の皿に同じおもりを乗せる・両方の皿から同じおもりを取る」だったのに対して、性質③はもう少し大きな操作です。どういう操作なのかを、天びんで確かめます。
天びんでは「中身を同じ組数にする」操作
天びんの左の皿に \(x\)、右の皿に \(6\) が乗ってつり合っているとします。
ここで3をかける、というのは、おもりを3個足すことではありません。両方の皿の中身を、そっくり同じ数だけ用意し直す操作です。つまり、皿の中身を3組ずつにするということです。
左の皿には \(x\) が3組。右の皿には \(6\) が3組。もともと1組どうしがつり合っていたのだから、それを3組ずつに増やしても、左と右の重さは同じだけ増えます。だからやはりつり合ったままです。
右の図の左の皿は \(x\) が3つ、つまり \(x \times 3\) です。右の皿は \(6\) が3つ、つまり \(6 \times 3 = 18\) です。\(x\) が6なら、左は18、右も18。ちゃんとつり合っています。
もちろん、片方の皿だけを3組にしたら傾きます。左を3組、右を2組にしても傾きます。守るべきことは足す・引くのときとまったく同じで、同じ数を、両方にです。
実際に解いてみる
性質③を使って、さっき手が止まった式を片づけます。
例題1 x を2で割った形
\(\dfrac{x}{2} = 6\) を解きます。左辺の \(x\) は2で割られているので、反対の操作であるかけ算で打ち消します。両辺に2をかけます。
x ÷ 2 = 6
x ÷ 2 × 2 = 6 × 2 ← 両辺に2をかけた(性質③)
x = 12
\(x \div 2 \times 2\) は、2で割ってから2をかけているので、もとの \(x\) に戻ります。右辺は \(6 \times 2 = 12\) です。
確かめ
左辺 = 12 ÷ 2 = 6
右辺 = 6
左辺 = 右辺 なので x=12 は解
例題2 x を5で割った形
\(\dfrac{x}{5} = 3\) を解きます。5で割られているので、両辺に5をかけます。
x ÷ 5 = 3
x ÷ 5 × 5 = 3 × 5 ← 両辺に5をかけた(性質③)
x = 15
確かめ
左辺 = 15 ÷ 5 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=15 は解
割っている数を、そのままかける。 これが \(\dfrac{x}{a} = b\) の形の解き方です。
左右が入れかわっていても同じ
\(4 = \dfrac{x}{3}\) のような形も出てきます。等号は向きを持たないので、慌てる必要はありません。\(x\) のある側を見て、何をすればよいかを決めます。
右辺の \(x\) は3で割られているので、両辺に3をかけます。
4 = x ÷ 3
4 × 3 = x ÷ 3 × 3 ← 両辺に3をかけた(性質③)
12 = x
x = 12 ← 答えは x = の向きにそろえる
確かめ
左辺 = 4
右辺 = 12 ÷ 3 = 4
左辺 = 右辺 なので x=12 は解
両辺に0をかけてはいけない
性質③は「同じ数をかけてよい」と言っています。では、0をかけたらどうなるでしょうか。実際にやってみます。
x ÷ 2 = 6
x ÷ 2 × 0 = 6 × 0 ← 両辺に0をかけた
0 = 0
たしかに \(0 = 0\) は成り立っています。等式としてまちがってはいません。ところが、\(x\) がどこにもいなくなってしまいました。
どんな数に0をかけても0です。だから両辺に0をかけると、左辺も右辺も0になり、\(0 = 0\) という当たり前の式に化けてしまいます。当たり前すぎて、\(x\) について何も教えてくれません。\(x\) が5でも100でも \(0 = 0\) になるので、解を求めるという目的からすると完全な行き止まりです。
だから、性質③を使うときは0をかけません。「同じ数をかけてよい。ただし0は除く」と覚えてください。
0がからむ話は、次のレッスンでもう一度出てきます。
今日の問い
\(\dfrac{x}{2} = 6\) を解くとき、両辺に2をかけます。2で割るのではありません。なぜでしょうか。
左辺を見ます。\(x\) が2で割られている状態です。この「2で割られている」を消したいので、反対の操作をします。割られているならかける、かけられているなら割る。これで打ち消し合って \(x\) だけが残ります。
x ÷ 2 = 6
x ÷ 2 × 2 = 6 × 2 ← 両辺に2をかけた(性質③)
x = 12
もしここで両辺を2で割ってしまうと、左辺は \(x \div 4\) になり、\(x\) から遠ざかります。打ち消すのか、さらに割るのかを、左辺を見て決めます。
よくある間違い
まちがい1:片方の辺だけにかける
✗ x ÷ 2 = 6
✗ x ÷ 2 × 2 = 6
✗ x = 6
左辺には2をかけたのに、右辺は6のままです。天びんでいえば、左の皿だけ2組にした状態なので傾きます。
○ x ÷ 2 = 6
○ x ÷ 2 × 2 = 6 × 2
○ x = 12
誤答の \(x = 6\) を元の式に代入すると、左辺は \(6 \div 2 = 3\) で、右辺の6と合いません。
まちがい2:両辺に違う数をかける
✗ x ÷ 3 = 4
✗ x ÷ 3 × 3 = 4 × 4
✗ x = 16
左辺には3、右辺には4をかけています。同じ操作ではありますが、数が違います。天びんでは左を3組、右を4組にしたことになるので傾きます。
○ x ÷ 3 = 4
○ x ÷ 3 × 3 = 4 × 3
○ x = 12
誤答の \(x = 16\) を代入すると左辺は \(16 \div 3\) となり、右辺の4になりません。代入して合わなければ、必ずどこかの行が違います。
まちがい3:割られているのに、さらに割る
✗ x ÷ 2 = 6
✗ x ÷ 2 ÷ 2 = 6 ÷ 2
✗ x ÷ 4 = 3
両辺に同じ操作はしているので、この式自体は成り立っています。しかし左辺は \(x \div 4\) になり、\(x\) だけを残すという目的からは遠ざかりました。打ち消すには、かけるのが正解です。
○ x ÷ 2 = 6
○ x ÷ 2 × 2 = 6 × 2
○ x = 12
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。両辺に何をかけたのかを、必ず式に書き残すこと。
等式の性質③を、\(A\)、\(B\)、\(C\) を使った式で書きなさい。また、言葉でも説明しなさい。
\(\dfrac{x}{4} = 5\) を解きなさい。
\(\dfrac{x}{7} = 2\) を解きなさい。
\(6 = \dfrac{x}{2}\) を解きなさい。
次の変形はまちがっています。どの行から違いますか。正しく解き直しなさい。
x ÷ 5 = 3
x ÷ 5 × 5 = 3 × 3
x = 9
- \(\dfrac{x}{3} = 4\) の両辺に0をかけると、式はどうなりますか。実際に書いたうえで、なぜこの操作をしてはいけないのかを説明しなさい。
答えと考え方
1.
- 性質③ … \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
言葉でいえば「等しい2つの量に同じ数をかけても、等しいままである」ということです。天びんでいえば、両方の皿の中身を同じ組数にそろえて増やす操作にあたります。ただし0をかけると両辺とも0になってしまうので、方程式を解くときに0はかけません。
2. 左辺の \(x\) は4で割られているので、両辺に4をかけます(性質③)。
x ÷ 4 = 5
x ÷ 4 × 4 = 5 × 4 ← 両辺に4をかけた
x = 20
左辺 = 20 ÷ 4 = 5
右辺 = 5
左辺 = 右辺 なので x=20 は解
3. 左辺の \(x\) は7で割られているので、両辺に7をかけます。
x ÷ 7 = 2
x ÷ 7 × 7 = 2 × 7 ← 両辺に7をかけた
x = 14
左辺 = 14 ÷ 7 = 2
右辺 = 2
左辺 = 右辺 なので x=14 は解
4. \(x\) があるのは右辺です。左右が入れかわっていても、やることは同じです。右辺の \(x\) は2で割られているので、両辺に2をかけます。
6 = x ÷ 2
6 × 2 = x ÷ 2 × 2 ← 両辺に2をかけた
12 = x
x = 12 ← 答えは x = の向きにそろえる
左辺 = 6
右辺 = 12 ÷ 2 = 6
左辺 = 右辺 なので x=12 は解
5. 2行目から違います。
左辺には5をかけているのに、右辺には3をかけています。かけ算という操作は同じでも、かけた数が違います。両辺には同じ数をかけなければなりません。
○ x ÷ 5 = 3
○ x ÷ 5 × 5 = 3 × 5
○ x = 15
左辺 = 15 ÷ 5 = 3
右辺 = 3
左辺 = 右辺 なので x=15 は解
誤答の \(x = 9\) を元の式に代入すると、左辺は \(9 \div 5\) となり、右辺の3になりません。ここで気づけます。
6. 両辺に0をかけると、こうなります。
x ÷ 3 = 4
x ÷ 3 × 0 = 4 × 0 ← 両辺に0をかけた
0 = 0
\(0 = 0\) という、当たり前の式になってしまいます。
どんな数に0をかけても0なので、左辺も右辺も0になり、\(x\) が式の中から消えてしまいます。\(0 = 0\) は \(x\) が何であっても成り立つので、この式からは \(x\) の値が分かりません。解を求めるという目的からすると行き止まりです。だから性質③を使うときに0はかけません。
ちなみに、この式の正しい解は次のとおりです。
x ÷ 3 = 4
x ÷ 3 × 3 = 4 × 3 ← 両辺に3をかけた
x = 12
左辺 = 12 ÷ 3 = 4
右辺 = 4
左辺 = 右辺 なので x=12 は解
次のレッスンへ
これで、\(x\) が割られている形は解けるようになりました。残っているのは \(3x = 12\) のように、\(x\) に数がかけられている形です。打ち消すには反対の操作、つまり両辺を同じ数で割ることになります。次はその性質④を確定させます。そして、このレッスンで顔を出した0が、今度は「割る」側でもっと厳しい形で戻ってきます。0で割ることは、かけるとき以上に許されません。その理由も見ます。
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