なぜ方程式を使うのか
このレッスンでできるようになること
- 「方程式」「等式」「未知数」「解」という言葉を、自分の言葉で説明できる
- 文字を使った式の書き方の約束(\(120 \times x\) を \(120x\) と書くなど)にしたがって式を書ける
- 日本語で書かれた数の関係を、xを使った等式に書きかえられる
まず、方程式なしでやってみる
次の問題を考えてください。
ある数に3を足したら10になりました。ある数はいくつですか。
すぐに7だと分かったと思います。頭の中では「10から3を引けばいい」か、「5かな→8。ちがう。6かな→9。ちがう。7だ」のどちらかをやったはずです。
では、次はどうでしょう。
ある数を4倍して7を引いた数は、その数に29を足した数と同じになりました。ある数はいくつですか。
今度は「引けばいい」では済みません。当てずっぽうで試すと、こうなります。
| ある数 | 4倍して7を引く | 29を足す | 同じ? |
|---|---|---|---|
| 1 | −3 | 30 | ちがう |
| 2 | 1 | 31 | ちがう |
| 3 | 5 | 32 | ちがう |
| 5 | 13 | 34 | ちがう |
| 10 | 33 | 39 | ちがう |
| 11 | 37 | 40 | ちがう(だいぶ近い) |
| 12 | 41 | 41 | 同じ! |
答えは12でした。でも、たどり着くまでに何回も計算しています。もし答えが 137 や 0.5 だったら、この方法では一生見つかりません。
分からない数に、名前をつける
当てずっぽうがつらいのは、分からない数を「分からないまま」扱えていないからです。毎回どれかの数を自分で決めて試すしかありません。
そこで発想を変えます。分からない数に名前をつけて、分からないまま計算を進めてしまうのです。名前には、ふつう \(x\) という文字を使います。
さっきの問題を、xを使って書いていきます。
- ある数 → \(x\)
- ある数を4倍する → \(4x\)
- そこから7を引く → \(4x - 7\)
- ある数に29を足す → \(x + 29\)
- この2つが同じになる → \(4x - 7 = x + 29\)
これで、問題文がまるごと1本の式になりました。この式が 方程式 です。
大事なのは、答えを知らないまま式が書けたことです。当てずっぽうは「答えを当ててから確かめる」順番でしたが、方程式は「式にしてから答えを出す」順番になります。
この単元でずっと使う言葉
ここで出てきた言葉を、一度きちんと決めておきます。ここから先のレッスンで何度も出てくるので、迷ったらこの表に戻ってください。
| 言葉 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 等式 | 等号 \(=\) で結ばれた式 | \(4x - 7 = x + 29\)、\(3 + 5 = 8\) |
| 左辺 | 等号の左側にある式 | \(4x - 7\) |
| 右辺 | 等号の右側にある式 | \(x + 29\) |
| 両辺 | 左辺と右辺の両方 | 上の式の \(4x - 7\) と \(x + 29\) |
| 成り立つ | 左辺の値と右辺の値が等しくなること | x=12のとき、左辺41・右辺41なので成り立つ |
| 未知数 | まだ分かっていない数を表す文字 | この式の \(x\) |
| 方程式 | 文字を含む等式で、文字に入れる数によって成り立ったり成り立たなかったりするもの | \(4x - 7 = x + 29\) |
| 解 | その方程式を成り立たせる、文字の値 | \(x = 12\) |
| 解く | 解を求めること | 「この方程式を解きなさい」 |
図で確かめます。
「左辺と右辺を合わせて両辺」です。これから「両辺に3を足す」といった言い方が何度も出てきます。
文字式の書き方の約束
\(4x\) は「4とxをかけたもの」という意味でした。かけ算の記号 \(\times\) が消えています。これは書き忘れではなく、約束です。
| 表したいこと | 正しい書き方 | まちがい・書かない形 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 120とxをかける | \(120x\) | \(x120\)、\(120 \times x\) | ×は省く。数を文字の前に書く |
| 1とxをかける | \(x\) | \(1x\) | 1は書かない |
| −1とxをかける | \(-x\) | \(-1x\) | 同じく1は書かない |
| xを3で割る | \(\dfrac{x}{3}\)(分数の形) | \(x \div 3\) | ÷は使わず分数で書く |
| xと3を足す | \(x + 3\) | \(3x\) | 足し算は省略できない |
いちばん多い勘違いが、最後の行です。\(3x\) は「3とxをかけたもの」であって、「3とxを足したもの」ではありません。省略できるのはかけ算だけだと覚えてください。
なぜ
×を省くのか 文字のxとかけ算の×は形がよく似ていて、3×x×5のように書くと、どれが記号でどれが文字か分からなくなるからです。だから中学からは×を書かないことにしています。
今日の問い
\(4x - 7 = x + 29\) の解が \(x = 12\) であることを、いま学んだ言葉を使って説明できるでしょうか。
やってみます。xに12を入れると、
- 左辺 \(= 4 \times 12 - 7 = 48 - 7 = 41\)
- 右辺 \(= 12 + 29 = 41\)
左辺と右辺の値が等しくなりました。つまり この方程式は x=12 のとき成り立つので、12はこの方程式の解です。
このように「文字のところに数を入れる」操作には名前がついています。次のレッスンのあとで、代入として詳しく扱います。
よくある間違い
まちがい1:3x を「3とxを足したもの」と読む
✗ x = 5 のとき、3x = 3 + 5 = 8
○ x = 5 のとき、3x = 3 × 5 = 15
省略されているのは かけ算 です。足し算の \(+\) は絶対に省略されません。式に \(+\) が書かれていなければ、それは足し算ではありません。
まちがい2:x120 や 120×x と書く
✗ x120 ✗ 120×x ○ 120x
数は文字の前、\(\times\) は書かない、が約束です。読めればいいのではなく、みんなが同じ形で書くことに意味があります。
まちがい3:1x と書く
✗ 1x = 7 ○ x = 7
1をかけても値は変わらないので、1は書きません。逆に \(x\) を見たときは「1がかけられているんだな」と読みます。
まちがい4:式を作っただけで答えが出たと思う
✗ 4x − 7 = x + 29 答え x = 4x − 7
○ 4x − 7 = x + 29 ← ここまでは式が書けただけ。答えはまだ出ていない
\(4x - 7 = x + 29\) を書けたのは大きな前進ですが、これはまだ答えではありません。ここから x の値を求める作業(=解く)が残っています。方程式づくりはスタート地点です。
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。
次のうち、方程式はどれですか。すべて選びなさい。 ① \(x + 4\) ② \(2x = 8\) ③ \(3 + 5 = 8\) ④ \(x > 2\) ⑤ \(5x - 1 = 9\)
\(5x + 1 = 16\) の左辺と右辺を、それぞれ書きなさい。
文字式の約束にしたがって書き直しなさい。 (1) \(80 \times x\) (2) \(1 \times x\) (3) \(x \div 5\) (4) \(x \times 7 + 2\)
次を x の式で表しなさい。 (1) ある数 x を5倍して3を引いた数 (2) ある数 x に9を足した数 (3) 1本90円のペンを x 本買ったときの代金
「ある数を5倍して3を引いた数は、その数に9を足した数と等しい」を、x を使った方程式で表しなさい。
5の方程式で、x に 3 を入れたときの左辺の値と右辺の値をそれぞれ計算し、この方程式が x=3 で成り立つかどうか答えなさい。
答えと考え方
1. ② と ⑤
- ① \(x + 4\) … 等号がないので等式ではありません。ただの式です。
- ② \(2x = 8\) … 等号があり、文字を含みます。方程式です(x=4のとき成り立ちます)。
- ③ \(3 + 5 = 8\) … 等式ですが、文字がありません。いつでも成り立つただの計算です。
- ④ \(x > 2\) … 等号ではなく不等号なので等式ではありません。
- ⑤ \(5x - 1 = 9\) … 等号があり文字を含むので方程式です(x=2のとき成り立ちます)。
判定のしかた:「等号があるか」と「文字があるか」の2つを順に見ます。両方あれば方程式です。
確かめ:②と⑤が本当に「成り立ったり成り立たなかったりする」かを見ます。
② x=4 のとき 左辺 = 2 × 4 = 8 右辺 = 8 → 成り立つ
x=5 のとき 左辺 = 2 × 5 = 10 右辺 = 8 → 成り立たない
⑤ x=2 のとき 左辺 = 5 × 2 − 1 = 10 − 1 = 9 右辺 = 9 → 成り立つ
x=3 のとき 左辺 = 5 × 3 − 1 = 15 − 1 = 14 右辺 = 9 → 成り立たない
入れる数によって成り立ったり成り立たなかったりしているので、たしかに方程式です。③はどんなときも左辺8・右辺8のままで、変わりようがありません。
2. 左辺 \(5x + 1\)、右辺 \(16\)
右辺のように、数が1つだけでも立派な「辺」です。
3.
| 答え | 注意点 | |
|---|---|---|
| (1) | \(80x\) | 数を先、×は書かない |
| (2) | \(x\) | 1は書かない |
| (3) | \(\dfrac{x}{5}\) | ÷は使わず分数の形に |
| (4) | \(7x + 2\) | かけ算の部分だけ省略。\(+2\) の+は残る |
(4)で \(9x\) としてしまった人は、まちがい1を読み直してください。かけ算と足し算を混ぜてはいけません。
確かめ:書き方を変えただけなので、どんな数を入れても値は変わらないはずです。x = 10 で見比べます。
| 書き直す前 | x = 10 のとき | 書き直した式 | x = 10 のとき | |
|---|---|---|---|---|
| (1) | \(80 \times x\) | \(80 \times 10 = 800\) | \(80x\) | \(80 \times 10 = 800\) |
| (2) | \(1 \times x\) | \(1 \times 10 = 10\) | \(x\) | \(10\) |
| (3) | \(x \div 5\) | \(10 \div 5 = 2\) | \(\dfrac{x}{5}\) | \(\dfrac{10}{5} = 2\) |
| (4) | \(x \times 7 + 2\) | \(10 \times 7 + 2 = 72\) | \(7x + 2\) | \(7 \times 10 + 2 = 72\) |
4つとも前と後ろで同じ値になりました。もし値が変わってしまったら、書き直しをまちがえています。たとえば(4)を \(9x\) とすると \(9 \times 10 = 90\) で、72 とちがう数になります。
4.
- (1) \(5x - 3\) … 「5倍」が先、「3を引く」が後。順番どおりに書きます。
- (2) \(x + 9\)
- (3) \(90x\) 円 … 「1本90円が x 本ぶん」なので \(90 \times x\) です。
確かめ:x = 4 を入れて、日本語の手順をそのまま計算した結果と見比べます。
(1) 式で 5 × 4 − 3 = 20 − 3 = 17
文章で 4を5倍して20、そこから3を引いて17 → 一致
(2) 式で 4 + 9 = 13
文章で 4に9を足して13 → 一致
(3) 式で 90 × 4 = 360
文章で 90 + 90 + 90 + 90 = 360(90円が4本ぶん) → 一致
式と文章が同じ数になれば、その式は文章を正しく表しています。
5. \(5x - 3 = x + 9\)
「〜は…と等しい」が等号にあたります。「は」の前が左辺、後ろが右辺です。左辺は4の(1)、右辺は4の(2)でつくった式そのものです。
この式のように、等号の左と右の両方に文字がある形は、いま出てくる立式の中でもいちばん手ごわいところです。うまく書けなくても心配いりません。この形は、あとのレッスン「数当て問題を方程式にする」(L4)でもう一度練習します。
6. x=3 のとき、
左辺 = 5 × 3 − 3 = 15 − 3 = 12
右辺 = 3 + 9 = 12
左辺と右辺が等しいので、この方程式は x=3 で成り立ちます。つまり3はこの方程式の解です。
計算するときは、必ず左辺と右辺を別々の行に書いてから見比べてください。1行で \(5 \times 3 - 3 = 3 + 9\) と書くと、途中でどちらの話をしているか分からなくなります。
確かめ:3以外の数だと成り立たないことも見ておきます。
x=2 のとき 左辺 = 5 × 2 − 3 = 10 − 3 = 7 右辺 = 2 + 9 = 11 → 成り立たない
x=4 のとき 左辺 = 5 × 4 − 3 = 20 − 3 = 17 右辺 = 4 + 9 = 13 → 成り立たない
x=3 のときだけ両辺が12でそろいました。これがこの方程式の解です。
次のレッスンへ
方程式が書けるようになったので、次は等号 \(=\) そのものを見直します。小学校では \(=\) を「答えはこうなる」という合図として使ってきましたが、方程式ではもっと大事な意味を持っています。天びんの図を使って確かめます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。