LESSON 01

小数・分数を含む方程式

小数の方程式を整数に直す

小数のまま計算せず、両辺を10倍・100倍して整数の式に直してから解く。なぜ両辺を何倍してよいのか、なぜすべての項にかかるのかを根拠から確かめる。

小数の方程式を整数に直す

このレッスンでできるようになること

  • 小数を含む方程式を、両辺を10倍・100倍して整数の式に直して解ける
  • 両辺を何倍してよい理由を、等式の性質③と分配法則で説明できる
  • 何倍するかを、式の中のいちばん下の位から決められる

前のレッスンの確認

  • … 式を \(+\)\(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
  • 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
  • 移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
  • 係数 … 文字にかけられている数のこと
  • 分配法則\(a(b + c) = ab + ac\)
  • 等式の性質③ … \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
  • 等式の性質④ … \(A = B\) のとき、\(C\) が0でなければ \(\dfrac{A}{C} = \dfrac{B}{C}\)

ここまでで、かっこを含む方程式まで「かっこを外す → 移項 → 同類項をまとめる → 係数で割る → 検算」で解けます。今回はその手前に、準備の操作を一つ足します。

小数のままでも解けます。でも、やりたくありません

\(0.2x + 0.5 = 1.1\) を、これまでの手順のまま解きます。

0.2x + 0.5 = 1.1
0.2x = 1.1 − 0.5      ← +0.5 を右辺へ移項した
0.2x = 0.6
   x = 0.6 ÷ 0.2      ← 係数 0.2 で両辺を割った
   x = 3

手順は何も変わっていません。変わったのは計算の中身が小数になったことだけです。ところが、その「だけ」がやっかいで、\(1.1 - 0.5\) で小数点をそろえ損ねたり、\(0.6 \div 0.2\)\(0.3\) と答えたりします。

そこで発想を変えます。小数の計算をがんばるのではなく、小数の出てこない式に作りかえてから解きます。 整数の式にしてしまえば、あとは今まで通りです。

両辺に同じ数をかけてよい理由

\(0.2 \times 10 = 2\)\(0.5 \times 10 = 5\)\(1.1 \times 10 = 11\)。10倍すれば全部整数になりそうです。でも、勝手に10倍してよいのでしょうか。

根拠はもう持っています。等式の性質③です。

\(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)

「等しい2つの量に、同じ数をかけても、等しいままである」ということです。いま \(A\) は左辺の \(0.2x + 0.5\)\(B\) は右辺の \(1.1\)\(C\)\(10\)。等しい2つの量に同じ数をかけているだけなので、等号は保たれます。

\(10(0.2x + 0.5) = 10 \times 1.1\)

新しいルールは一つも使っていません。両辺を10倍する操作は、性質③そのものです。

なぜすべての項にかかるのか

性質③が保証しているのは、\(A\) という辺ぜんぶ\(C\) をかけてよいということです。「辺の中の好きな項にかけてよい」とは言っていません。

左辺は \(0.2x + 0.5\) という一つのかたまりです。それを10倍するのだから \(10(0.2x + 0.5)\) と書けます。かっこがついたところで、分配法則の出番です。

\(a(b + c) = ab + ac\)

\(a\)\(10\)\(b\)\(0.2x\)\(c\)\(0.5\) なので、

\(10 \times 0.2x + 10 \times 0.5 = 2x + 5\)

\(0.2x\) にも \(0.5\) にも10がかかりました。「全部の項にかける」は暗記事項ではなく、分配法則から出てくる結果です。

両辺を10倍する二つの段階 小数を含む式の両辺という等しい二つの量に同じ十をかける段階と、そのあと分配法則によって左辺のすべての項に十がかかり、整数だけの式に変わる段階を、上から順に並べた図。 ① 辺ぜんぶを 10 倍する(等式の性質③) 0.2x + 0.5 = 1.1 同じ 10 をかける 10 × (0.2x + 0.5) = 10 × 1.1 ② 分配法則で、かっこの中の全部にかかる 10 × 0.2x + 10 × 0.5 = 10 × 1.1 2x + 5 = 11 小数が消えて、整数の式になりました

慣れたら \(10(0.2x + 0.5)\) の行は飛ばしてかまいません。飛ばしてよいのは、飛ばした中身を説明できるからです。

何倍すればよいかの決め方

式の中の小数を全部見て、いちばん下の位に合わせます。浅い位に合わせると、深い位の小数が消え残るからです。

いちばん下の位 何倍するか
\(0.2x + 0.5 = 1.1\) 小数第1位 10倍
\(0.4x - 0.3 = 1.7\) 小数第1位 10倍
\(0.25x + 0.1 = 0.6\) 小数第2位(\(0.25\) 100倍
\(1.5x + 0.08 = 0.5\) 小数第2位(\(0.08\) 100倍

3番目の \(0.1\)\(0.6\) は10倍でも整数になりますが、倍率は式全体で一つにそろえます。項ごとに変えるのは、性質③を使ったことになりません。

例題1 小数第1位だけの式

この行でしたこと
\(0.2x + 0.5 = 1.1\) もとの式
\(10(0.2x + 0.5) = 10 \times 1.1\) 両辺に10をかけた(性質③)
\(2x + 5 = 11\) 分配法則で展開し、右辺も計算した
\(2x = 11 - 5 = 6\) \(+5\) を右辺へ移項して計算した
\(x = 3\) 両辺を2で割った(性質④)

確かめ

左辺 = 0.2 × 3 + 0.5 = 0.6 + 0.5 = 1.1
右辺 = 1.1
左辺 = 右辺 なので x=3 は解

小数のまま解いたときと同じ答えです。やり方を変えても答えが変わらないことが、性質③を正しく使えた証拠になります。

例題2 引き算のある式

この行でしたこと
\(0.4x - 0.3 = 1.7\) もとの式
\(4x - 3 = 17\) 両辺を10倍し、分配法則で展開した
\(4x = 17 + 3 = 20\) \(-3\) を右辺へ移項して計算した
\(x = 5\) 両辺を4で割った(性質④)

確かめ

左辺 = 0.4 × 5 − 0.3 = 2 − 0.3 = 1.7
右辺 = 1.7
左辺 = 右辺 なので x=5 は解

\(-0.3\) は符号を含めて一つの項なので、10倍すると \(-3\) になります。

例題3 小数第2位が混じる式

\(0.25\) が小数第2位なので、式全体を100倍します。

この行でしたこと
\(0.25x + 0.1 = 0.6\) もとの式
\(25x + 10 = 60\) 両辺を100倍し、分配法則で展開した
\(25x = 60 - 10 = 50\) \(+10\) を右辺へ移項して計算した
\(x = 2\) 両辺を25で割った(性質④)

確かめ

左辺 = 0.25 × 2 + 0.1 = 0.5 + 0.1 = 0.6
右辺 = 0.6
左辺 = 右辺 なので x=2 は解

\(0.1\) は10倍すれば \(1\) になりますが、ここでは100倍して \(10\) にします。そろえるのは倍率です。

例題4 かっこのある式

左辺の \(0.3(x - 2)\)\(+\)\(-\) で区切れる場所がなく、これ全体で一つの項です。だから10をかける相手は係数の \(0.3\) です。

この行でしたこと
\(0.3(x - 2) = 1.2\) もとの式
\(10 \times 0.3(x - 2) = 10 \times 1.2\) 両辺に10をかけた(性質③)
\(3(x - 2) = 12\) 10を係数 \(0.3\) にかけた
\(3x - 6 = 12\) 分配法則でかっこを外した
\(3x = 12 + 6 = 18\) \(-6\) を右辺へ移項して計算した
\(x = 6\) 両辺を3で割った(性質④)

確かめ

左辺 = 0.3 × (6 − 2) = 0.3 × 4 = 1.2
右辺 = 1.2
左辺 = 右辺 なので x=6 は解

かっこの中の \(x\)\(-2\) には10をかけません。かけると左辺は10倍ではなく100倍になってしまいます。

例題5 両辺に文字がある式

この行でしたこと
\(0.5x + 1 = 0.2x + 4\) もとの式
\(5x + 10 = 2x + 40\) 両辺を10倍し、分配法則で展開した
\(5x - 2x = 40 - 10\) \(2x\) を左辺へ、\(+10\) を右辺へ移項した
\(3x = 30\) 同類項をまとめ、右辺を計算した
\(x = 10\) 両辺を3で割った(性質④)

確かめ

左辺 = 0.5 × 10 + 1 = 5 + 1 = 6
右辺 = 0.2 × 10 + 4 = 2 + 4 = 6
左辺 = 右辺 なので x=10 は解

\(1\)\(10\) に、\(4\)\(40\) に変わったところをよく見てください。

今日の問い

例題5の \(1\)\(4\) は、そもそも小数ではありません。それなのに10倍したのはなぜでしょうか。

性質③が許しているのは「辺」への操作だからです。左辺は \(0.5x + 1\) というひとかたまりで、10倍する相手はそのかたまり全体です。\(10(0.5x + 1)\) と書いた瞬間、分配法則によって \(1\) にも10がかかることが決まります。

\(1\) をそのままにすると、左辺を10倍したことになりません。中途半端に変わった別の式になり、等号は成り立ちません。小数か整数かは関係なく、その辺にある項は全部です。

よくある間違い

まちがい1:小数の項だけ10倍して、整数の項をそのままにする

✗ 0.4x + 2 = 0.1x + 3.5
✗   4x + 2 = x + 35        ← 2 だけ10倍していない
✗   4x − x = 35 − 2
✗       3x = 33
✗        x = 11

\(x = 11\) を代入すると左辺は \(0.4 \times 11 + 2 = 6.4\)、右辺は \(0.1 \times 11 + 3.5 = 4.6\) で合いません。

○ 0.4x + 2 = 0.1x + 3.5
○  4x + 20 = x + 35       ← 2 も10倍して 20 にする
○   4x − x = 35 − 20
○       3x = 15
○        x = 5

確かめ

左辺 = 0.4 × 5 + 2 = 2 + 2 = 4
右辺 = 0.1 × 5 + 3.5 = 0.5 + 3.5 = 4
左辺 = 右辺 なので x=5 は解

整数に直したはずなのに小数が残っていたら、かけ忘れた項か、かけ忘れた辺があります。

まちがい2:かっこの中まで10倍してしまう

✗ 0.2(x + 5) = 1.6
✗ 2(10x + 50) = 16       ← 係数にも中身にも10をかけた
✗  20x + 100 = 16
✗        20x = −84
✗          x = −4.2

左辺は \(0.2 \times 10 = 2\) と、かっこの中の10倍とで、合わせて100倍されています。右辺は10倍だけ。倍率がそろっていません。

○ 0.2(x + 5) = 1.6
○   2(x + 5) = 16        ← 10 は係数 0.2 にだけかける
○   2x + 10 = 16
○        2x = 6
○         x = 3

確かめ

左辺 = 0.2 × (3 + 5) = 0.2 × 8 = 1.6
右辺 = 1.6
左辺 = 右辺 なので x=3 は解

自分で確かめよう

紙に書いてから、答えを開いてください。両辺を何倍したのかを、必ず式に書き残すこと。

  1. 次の方程式は、両辺を何倍すれば整数だけの式になりますか。倍率だけ答えなさい。 (1) \(0.3x + 1.2 = 2.1\) (2) \(0.07x - 0.5 = 0.2\) (3) \(2.4x + 3 = 0.9x\)

  2. \(0.3x + 0.4 = 1.9\) を解きなさい。

  3. \(0.15x + 0.2 = 0.8\) を解きなさい。

  4. \(0.4(x + 3) = 2.8\) を解きなさい。

  5. \(0.6x + 2 = 0.1x + 4.5\) を解きなさい。

  6. \(0.8x + 3.4 = 1.8\) を解きなさい。

  7. 次の2つの変形はどちらもまちがっています。どの行から違うかを言い、正しく解き直しなさい。

(1) 0.2x + 1.3 = 2.1
      2x + 1.3 = 2.1
            2x = 0.8
             x = 0.4
(2) 0.25x + 0.5 = 1.5
       25x + 5 = 15
           25x = 10
             x = 0.4
  1. \(0.2x + 0.5 = 1.1\) の両辺を10倍すると、\(0.5\) にも10がかかります。それはなぜですか。使った性質と法則の名前を出して説明しなさい。
答えと考え方

1. (1) 10倍(いちばん下は小数第1位)。(2) 100倍\(0.07\) が小数第2位)。(3) 10倍\(2.4\)\(0.9\) が小数第1位。整数の \(3\) も10倍して \(30\) にします)。

2.

0.3x + 0.4 = 1.9
3x + 4 = 19       ← 両辺を10倍(性質③)し、分配法則で展開した
3x = 19 − 4 = 15  ← +4 を右辺へ移項して計算した
 x = 5            ← 両辺を3で割った

確かめ

左辺 = 0.3 × 5 + 0.4 = 1.5 + 0.4 = 1.9
右辺 = 1.9
左辺 = 右辺 なので x=5 は解

3. \(0.15\) が小数第2位なので、\(0.2\)\(0.8\) も含めて100倍します。

0.15x + 0.2 = 0.8
15x + 20 = 80     ← 両辺を100倍(性質③)し、分配法則で展開した
15x = 80 − 20 = 60
  x = 4           ← 両辺を15で割った

確かめ

左辺 = 0.15 × 4 + 0.2 = 0.6 + 0.2 = 0.8
右辺 = 0.8
左辺 = 右辺 なので x=4 は解

4. 左辺は \(0.4(x + 3)\) 全体で一つの項です。10は係数の \(0.4\) にかけます。

0.4(x + 3) = 2.8
4(x + 3) = 28     ← 両辺を10倍(性質③)。10 は係数 0.4 にかける
4x + 12 = 28      ← 分配法則でかっこを外した
4x = 28 − 12 = 16
 x = 4            ← 両辺を4で割った

確かめ

左辺 = 0.4 × (4 + 3) = 0.4 × 7 = 2.8
右辺 = 2.8
左辺 = 右辺 なので x=4 は解

5. 左辺の \(2\) も忘れずに10倍します。

0.6x + 2 = 0.1x + 4.5
6x + 20 = x + 45   ← 両辺を10倍。整数の 2 も 20 になる
6x − x = 45 − 20   ← x を左辺へ、20 を右辺へ移項した
5x = 25
 x = 5             ← 両辺を5で割った

確かめ

左辺 = 0.6 × 5 + 2 = 3 + 2 = 5
右辺 = 0.1 × 5 + 4.5 = 0.5 + 4.5 = 5
左辺 = 右辺 なので x=5 は解

6. 解が負になりますが、手順は変わりません。

0.8x + 3.4 = 1.8
8x + 34 = 18      ← 両辺を10倍(性質③)し、分配法則で展開した
8x = 18 − 34 = −16
 x = −2           ← 両辺を8で割った

確かめ

左辺 = 0.8 × (−2) + 3.4 = −1.6 + 3.4 = 1.8
右辺 = 1.8
左辺 = 右辺 なので x=−2 は解

7. (1) 2行目から違います。 \(0.2x\) だけを10倍し、\(1.3\)\(2.1\) をそのままにしています。左辺を10倍するなら \(10(0.2x + 1.3)\) で、分配法則により \(1.3\) にも10がかかります。右辺も10倍します。

○ 0.2x + 1.3 = 2.1
○   2x + 13 = 21     ← 3つの項すべてを10倍した
○       2x = 21 − 13 = 8
○        x = 4

確かめ

左辺 = 0.2 × 4 + 1.3 = 0.8 + 1.3 = 2.1
右辺 = 2.1
左辺 = 右辺 なので x=4 は解

誤答の \(x = 0.4\) では左辺が \(0.2 \times 0.4 + 1.3 = 1.38\) で、右辺の \(2.1\) と合いません。

7. (2) 2行目から違います。 \(0.25\) は100倍して \(25\) にしたのに、\(0.5\)\(1.5\) は10倍して \(5\)\(15\) にしています。小数点を何個ずらすかを項ごとに決めてはいけません。いちばん下の位は \(0.25\) の小数第2位なので、全部100倍です。

○ 0.25x + 0.5 = 1.5
○   25x + 50 = 150   ← 3つの項すべてを100倍した
○       25x = 150 − 50 = 100
○         x = 4

確かめ

左辺 = 0.25 × 4 + 0.5 = 1 + 0.5 = 1.5
右辺 = 1.5
左辺 = 右辺 なので x=4 は解

誤答の \(x = 0.4\) では左辺が \(0.25 \times 0.4 + 0.5 = 0.6\) で、右辺の \(1.5\) と合いません。

8. 使ったのは等式の性質③分配法則の2つです。

性質③により、左辺と右辺という等しい2つの量に同じ10をかけられます。10がかかる相手は左辺という辺の全体なので \(10(0.2x + 0.5)\) と書けます。この形に分配法則 \(a(b + c) = ab + ac\) を使うと \(10 \times 0.2x + 10 \times 0.5\) となり、\(0.5\) にも10がかかります。

つまり「すべての項にかける」は決まりではなく、辺全体を10倍したことを分配法則で書き直した結果です。

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小数はこれで整数に直せます。残るのは分数を含む方程式です。\(\dfrac{x}{2} + \dfrac{x}{3} = 5\) も「両辺に同じ数をかけて分母を消す」だけですが、\(10\)\(100\) ではうまくいきません。かける数を自分で見つける必要があります。次はその道具を用意します。

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UNDERSTANDING CHECK

理解チェック:小数の方程式を整数に直す

70% 合格ライン
  1. 設問 0
    小数を含む方程式で、両辺を何倍するかを決めるときの見方として正しいものはどれですか。
  2. 設問 1
    $0.5x + 2 = 3.5$ の両辺を10倍すると、小数ではない $2$ にも10がかかります。その理由として正しいものはどれですか。
  3. 設問 2
    $0.3x + 0.8 = 2$ を解きなさい。
  4. 設問 3
    $0.2x + 0.7 = 0.5x - 2$ を解きなさい。
  5. 設問 4
    $0.6x + 2 = 3.2$ の両辺を10倍して $6x + 2 = 32$ とした人がいます。この変形のどこがまちがっていますか。

まずは自分で選んでみましょう。採点・学習履歴への記録は、回答APIとの連携時に追加します。