小数の方程式を整数に直す
このレッスンでできるようになること
- 小数を含む方程式を、両辺を10倍・100倍して整数の式に直して解ける
- 両辺を何倍してよい理由を、等式の性質③と分配法則で説明できる
- 何倍するかを、式の中のいちばん下の位から決められる
前のレッスンの確認
- 項 … 式を \(+\) と \(-\) で区切った、ひとかたまりのこと(符号は項に含まれる)
- 同類項 … 文字の部分がまったく同じ項どうしのこと
- 移項 … 項を、符号を変えて反対の辺へ移すこと
- 係数 … 文字にかけられている数のこと
- 分配法則 … \(a(b + c) = ab + ac\)
- 等式の性質③ … \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
- 等式の性質④ … \(A = B\) のとき、\(C\) が0でなければ \(\dfrac{A}{C} = \dfrac{B}{C}\)
ここまでで、かっこを含む方程式まで「かっこを外す → 移項 → 同類項をまとめる → 係数で割る → 検算」で解けます。今回はその手前に、準備の操作を一つ足します。
小数のままでも解けます。でも、やりたくありません
\(0.2x + 0.5 = 1.1\) を、これまでの手順のまま解きます。
0.2x + 0.5 = 1.1
0.2x = 1.1 − 0.5 ← +0.5 を右辺へ移項した
0.2x = 0.6
x = 0.6 ÷ 0.2 ← 係数 0.2 で両辺を割った
x = 3
手順は何も変わっていません。変わったのは計算の中身が小数になったことだけです。ところが、その「だけ」がやっかいで、\(1.1 - 0.5\) で小数点をそろえ損ねたり、\(0.6 \div 0.2\) を \(0.3\) と答えたりします。
そこで発想を変えます。小数の計算をがんばるのではなく、小数の出てこない式に作りかえてから解きます。 整数の式にしてしまえば、あとは今まで通りです。
両辺に同じ数をかけてよい理由
\(0.2 \times 10 = 2\)、\(0.5 \times 10 = 5\)、\(1.1 \times 10 = 11\)。10倍すれば全部整数になりそうです。でも、勝手に10倍してよいのでしょうか。
根拠はもう持っています。等式の性質③です。
③ \(A = B\) のとき、\(A \times C = B \times C\)
「等しい2つの量に、同じ数をかけても、等しいままである」ということです。いま \(A\) は左辺の \(0.2x + 0.5\)、\(B\) は右辺の \(1.1\)、\(C\) は \(10\)。等しい2つの量に同じ数をかけているだけなので、等号は保たれます。
\(10(0.2x + 0.5) = 10 \times 1.1\)
新しいルールは一つも使っていません。両辺を10倍する操作は、性質③そのものです。
なぜすべての項にかかるのか
性質③が保証しているのは、\(A\) という辺ぜんぶに \(C\) をかけてよいということです。「辺の中の好きな項にかけてよい」とは言っていません。
左辺は \(0.2x + 0.5\) という一つのかたまりです。それを10倍するのだから \(10(0.2x + 0.5)\) と書けます。かっこがついたところで、分配法則の出番です。
\(a(b + c) = ab + ac\)
\(a\) が \(10\)、\(b\) が \(0.2x\)、\(c\) が \(0.5\) なので、
\(10 \times 0.2x + 10 \times 0.5 = 2x + 5\)
\(0.2x\) にも \(0.5\) にも10がかかりました。「全部の項にかける」は暗記事項ではなく、分配法則から出てくる結果です。
慣れたら \(10(0.2x + 0.5)\) の行は飛ばしてかまいません。飛ばしてよいのは、飛ばした中身を説明できるからです。
何倍すればよいかの決め方
式の中の小数を全部見て、いちばん下の位に合わせます。浅い位に合わせると、深い位の小数が消え残るからです。
| 式 | いちばん下の位 | 何倍するか |
|---|---|---|
| \(0.2x + 0.5 = 1.1\) | 小数第1位 | 10倍 |
| \(0.4x - 0.3 = 1.7\) | 小数第1位 | 10倍 |
| \(0.25x + 0.1 = 0.6\) | 小数第2位(\(0.25\)) | 100倍 |
| \(1.5x + 0.08 = 0.5\) | 小数第2位(\(0.08\)) | 100倍 |
3番目の \(0.1\) と \(0.6\) は10倍でも整数になりますが、倍率は式全体で一つにそろえます。項ごとに変えるのは、性質③を使ったことになりません。
例題1 小数第1位だけの式
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(0.2x + 0.5 = 1.1\) | もとの式 |
| \(10(0.2x + 0.5) = 10 \times 1.1\) | 両辺に10をかけた(性質③) |
| \(2x + 5 = 11\) | 分配法則で展開し、右辺も計算した |
| \(2x = 11 - 5 = 6\) | \(+5\) を右辺へ移項して計算した |
| \(x = 3\) | 両辺を2で割った(性質④) |
確かめ
左辺 = 0.2 × 3 + 0.5 = 0.6 + 0.5 = 1.1
右辺 = 1.1
左辺 = 右辺 なので x=3 は解
小数のまま解いたときと同じ答えです。やり方を変えても答えが変わらないことが、性質③を正しく使えた証拠になります。
例題2 引き算のある式
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(0.4x - 0.3 = 1.7\) | もとの式 |
| \(4x - 3 = 17\) | 両辺を10倍し、分配法則で展開した |
| \(4x = 17 + 3 = 20\) | \(-3\) を右辺へ移項して計算した |
| \(x = 5\) | 両辺を4で割った(性質④) |
確かめ
左辺 = 0.4 × 5 − 0.3 = 2 − 0.3 = 1.7
右辺 = 1.7
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
\(-0.3\) は符号を含めて一つの項なので、10倍すると \(-3\) になります。
例題3 小数第2位が混じる式
\(0.25\) が小数第2位なので、式全体を100倍します。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(0.25x + 0.1 = 0.6\) | もとの式 |
| \(25x + 10 = 60\) | 両辺を100倍し、分配法則で展開した |
| \(25x = 60 - 10 = 50\) | \(+10\) を右辺へ移項して計算した |
| \(x = 2\) | 両辺を25で割った(性質④) |
確かめ
左辺 = 0.25 × 2 + 0.1 = 0.5 + 0.1 = 0.6
右辺 = 0.6
左辺 = 右辺 なので x=2 は解
\(0.1\) は10倍すれば \(1\) になりますが、ここでは100倍して \(10\) にします。そろえるのは倍率です。
例題4 かっこのある式
左辺の \(0.3(x - 2)\) は \(+\) や \(-\) で区切れる場所がなく、これ全体で一つの項です。だから10をかける相手は係数の \(0.3\) です。
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(0.3(x - 2) = 1.2\) | もとの式 |
| \(10 \times 0.3(x - 2) = 10 \times 1.2\) | 両辺に10をかけた(性質③) |
| \(3(x - 2) = 12\) | 10を係数 \(0.3\) にかけた |
| \(3x - 6 = 12\) | 分配法則でかっこを外した |
| \(3x = 12 + 6 = 18\) | \(-6\) を右辺へ移項して計算した |
| \(x = 6\) | 両辺を3で割った(性質④) |
確かめ
左辺 = 0.3 × (6 − 2) = 0.3 × 4 = 1.2
右辺 = 1.2
左辺 = 右辺 なので x=6 は解
かっこの中の \(x\) や \(-2\) には10をかけません。かけると左辺は10倍ではなく100倍になってしまいます。
例題5 両辺に文字がある式
| 式 | この行でしたこと |
|---|---|
| \(0.5x + 1 = 0.2x + 4\) | もとの式 |
| \(5x + 10 = 2x + 40\) | 両辺を10倍し、分配法則で展開した |
| \(5x - 2x = 40 - 10\) | \(2x\) を左辺へ、\(+10\) を右辺へ移項した |
| \(3x = 30\) | 同類項をまとめ、右辺を計算した |
| \(x = 10\) | 両辺を3で割った(性質④) |
確かめ
左辺 = 0.5 × 10 + 1 = 5 + 1 = 6
右辺 = 0.2 × 10 + 4 = 2 + 4 = 6
左辺 = 右辺 なので x=10 は解
\(1\) が \(10\) に、\(4\) が \(40\) に変わったところをよく見てください。
今日の問い
例題5の \(1\) と \(4\) は、そもそも小数ではありません。それなのに10倍したのはなぜでしょうか。
性質③が許しているのは「辺」への操作だからです。左辺は \(0.5x + 1\) というひとかたまりで、10倍する相手はそのかたまり全体です。\(10(0.5x + 1)\) と書いた瞬間、分配法則によって \(1\) にも10がかかることが決まります。
\(1\) をそのままにすると、左辺を10倍したことになりません。中途半端に変わった別の式になり、等号は成り立ちません。小数か整数かは関係なく、その辺にある項は全部です。
よくある間違い
まちがい1:小数の項だけ10倍して、整数の項をそのままにする
✗ 0.4x + 2 = 0.1x + 3.5
✗ 4x + 2 = x + 35 ← 2 だけ10倍していない
✗ 4x − x = 35 − 2
✗ 3x = 33
✗ x = 11
\(x = 11\) を代入すると左辺は \(0.4 \times 11 + 2 = 6.4\)、右辺は \(0.1 \times 11 + 3.5 = 4.6\) で合いません。
○ 0.4x + 2 = 0.1x + 3.5
○ 4x + 20 = x + 35 ← 2 も10倍して 20 にする
○ 4x − x = 35 − 20
○ 3x = 15
○ x = 5
確かめ
左辺 = 0.4 × 5 + 2 = 2 + 2 = 4
右辺 = 0.1 × 5 + 3.5 = 0.5 + 3.5 = 4
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
整数に直したはずなのに小数が残っていたら、かけ忘れた項か、かけ忘れた辺があります。
まちがい2:かっこの中まで10倍してしまう
✗ 0.2(x + 5) = 1.6
✗ 2(10x + 50) = 16 ← 係数にも中身にも10をかけた
✗ 20x + 100 = 16
✗ 20x = −84
✗ x = −4.2
左辺は \(0.2 \times 10 = 2\) と、かっこの中の10倍とで、合わせて100倍されています。右辺は10倍だけ。倍率がそろっていません。
○ 0.2(x + 5) = 1.6
○ 2(x + 5) = 16 ← 10 は係数 0.2 にだけかける
○ 2x + 10 = 16
○ 2x = 6
○ x = 3
確かめ
左辺 = 0.2 × (3 + 5) = 0.2 × 8 = 1.6
右辺 = 1.6
左辺 = 右辺 なので x=3 は解
自分で確かめよう
紙に書いてから、答えを開いてください。両辺を何倍したのかを、必ず式に書き残すこと。
次の方程式は、両辺を何倍すれば整数だけの式になりますか。倍率だけ答えなさい。 (1) \(0.3x + 1.2 = 2.1\) (2) \(0.07x - 0.5 = 0.2\) (3) \(2.4x + 3 = 0.9x\)
\(0.3x + 0.4 = 1.9\) を解きなさい。
\(0.15x + 0.2 = 0.8\) を解きなさい。
\(0.4(x + 3) = 2.8\) を解きなさい。
\(0.6x + 2 = 0.1x + 4.5\) を解きなさい。
\(0.8x + 3.4 = 1.8\) を解きなさい。
次の2つの変形はどちらもまちがっています。どの行から違うかを言い、正しく解き直しなさい。
(1) 0.2x + 1.3 = 2.1
2x + 1.3 = 2.1
2x = 0.8
x = 0.4
(2) 0.25x + 0.5 = 1.5
25x + 5 = 15
25x = 10
x = 0.4
- \(0.2x + 0.5 = 1.1\) の両辺を10倍すると、\(0.5\) にも10がかかります。それはなぜですか。使った性質と法則の名前を出して説明しなさい。
答えと考え方
1. (1) 10倍(いちばん下は小数第1位)。(2) 100倍(\(0.07\) が小数第2位)。(3) 10倍(\(2.4\) と \(0.9\) が小数第1位。整数の \(3\) も10倍して \(30\) にします)。
2.
0.3x + 0.4 = 1.9
3x + 4 = 19 ← 両辺を10倍(性質③)し、分配法則で展開した
3x = 19 − 4 = 15 ← +4 を右辺へ移項して計算した
x = 5 ← 両辺を3で割った
確かめ
左辺 = 0.3 × 5 + 0.4 = 1.5 + 0.4 = 1.9
右辺 = 1.9
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
3. \(0.15\) が小数第2位なので、\(0.2\) と \(0.8\) も含めて100倍します。
0.15x + 0.2 = 0.8
15x + 20 = 80 ← 両辺を100倍(性質③)し、分配法則で展開した
15x = 80 − 20 = 60
x = 4 ← 両辺を15で割った
確かめ
左辺 = 0.15 × 4 + 0.2 = 0.6 + 0.2 = 0.8
右辺 = 0.8
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
4. 左辺は \(0.4(x + 3)\) 全体で一つの項です。10は係数の \(0.4\) にかけます。
0.4(x + 3) = 2.8
4(x + 3) = 28 ← 両辺を10倍(性質③)。10 は係数 0.4 にかける
4x + 12 = 28 ← 分配法則でかっこを外した
4x = 28 − 12 = 16
x = 4 ← 両辺を4で割った
確かめ
左辺 = 0.4 × (4 + 3) = 0.4 × 7 = 2.8
右辺 = 2.8
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
5. 左辺の \(2\) も忘れずに10倍します。
0.6x + 2 = 0.1x + 4.5
6x + 20 = x + 45 ← 両辺を10倍。整数の 2 も 20 になる
6x − x = 45 − 20 ← x を左辺へ、20 を右辺へ移項した
5x = 25
x = 5 ← 両辺を5で割った
確かめ
左辺 = 0.6 × 5 + 2 = 3 + 2 = 5
右辺 = 0.1 × 5 + 4.5 = 0.5 + 4.5 = 5
左辺 = 右辺 なので x=5 は解
6. 解が負になりますが、手順は変わりません。
0.8x + 3.4 = 1.8
8x + 34 = 18 ← 両辺を10倍(性質③)し、分配法則で展開した
8x = 18 − 34 = −16
x = −2 ← 両辺を8で割った
確かめ
左辺 = 0.8 × (−2) + 3.4 = −1.6 + 3.4 = 1.8
右辺 = 1.8
左辺 = 右辺 なので x=−2 は解
7. (1) 2行目から違います。 \(0.2x\) だけを10倍し、\(1.3\) と \(2.1\) をそのままにしています。左辺を10倍するなら \(10(0.2x + 1.3)\) で、分配法則により \(1.3\) にも10がかかります。右辺も10倍します。
○ 0.2x + 1.3 = 2.1
○ 2x + 13 = 21 ← 3つの項すべてを10倍した
○ 2x = 21 − 13 = 8
○ x = 4
確かめ
左辺 = 0.2 × 4 + 1.3 = 0.8 + 1.3 = 2.1
右辺 = 2.1
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
誤答の \(x = 0.4\) では左辺が \(0.2 \times 0.4 + 1.3 = 1.38\) で、右辺の \(2.1\) と合いません。
7. (2) 2行目から違います。 \(0.25\) は100倍して \(25\) にしたのに、\(0.5\) と \(1.5\) は10倍して \(5\) と \(15\) にしています。小数点を何個ずらすかを項ごとに決めてはいけません。いちばん下の位は \(0.25\) の小数第2位なので、全部100倍です。
○ 0.25x + 0.5 = 1.5
○ 25x + 50 = 150 ← 3つの項すべてを100倍した
○ 25x = 150 − 50 = 100
○ x = 4
確かめ
左辺 = 0.25 × 4 + 0.5 = 1 + 0.5 = 1.5
右辺 = 1.5
左辺 = 右辺 なので x=4 は解
誤答の \(x = 0.4\) では左辺が \(0.25 \times 0.4 + 0.5 = 0.6\) で、右辺の \(1.5\) と合いません。
8. 使ったのは等式の性質③と分配法則の2つです。
性質③により、左辺と右辺という等しい2つの量に同じ10をかけられます。10がかかる相手は左辺という辺の全体なので \(10(0.2x + 0.5)\) と書けます。この形に分配法則 \(a(b + c) = ab + ac\) を使うと \(10 \times 0.2x + 10 \times 0.5\) となり、\(0.5\) にも10がかかります。
つまり「すべての項にかける」は決まりではなく、辺全体を10倍したことを分配法則で書き直した結果です。
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小数はこれで整数に直せます。残るのは分数を含む方程式です。\(\dfrac{x}{2} + \dfrac{x}{3} = 5\) も「両辺に同じ数をかけて分母を消す」だけですが、\(10\) や \(100\) ではうまくいきません。かける数を自分で見つける必要があります。次はその道具を用意します。
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