熟字訓・特別な読み方:意味と手掛かりをつかむ
このレッスンの役割
ここまでは、漢字一字の音訓、形声文字の音符、熟語の組み立てなど、「字から読みや意味を導く」方法を扱いました。ここでは、その方法が使えない語を扱います。
今回の中心技能は、一字ずつの音訓では読めない語(熟字訓)があることを知り、それを語全体のまとまりと意味で覚える、という考え方を身につけることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「大人」を一字ずつ読むと、「大(ダイ・おお)」「人(ジン・ひと)」です。でも、この語は「おとな」と読みます。「お・と・な」のどの音も、「大」「人」の音訓にはありません。
このように、二字以上の語全体に、一つの訓(日本語)を当てた読みを熟字訓といいます。「今日(きょう)」「明日(あす)」「昨日(きのう)」「今朝(けさ)」「大人(おとな)」「一人(ひとり)」「二人(ふたり)」「眼鏡(めがね)」「果物(くだもの)」「時雨(しぐれ)」などです。
なぜ字から読めないのか
熟字訓は、先に日本語の言葉(おとな、くだもの)があり、あとから意味の合う漢字を当てたものです。漢字の音を組み合わせて作った語ではないので、字から読みは導けません。
| 日本語の言葉 | 当てた漢字 | 漢字を当てた理由 |
|---|---|---|
| くだもの | 果物 | 木になる実(果)の物 |
| めがね | 眼鏡 | 眼のための鏡 |
| しぐれ | 時雨 | 時々降る雨 |
| なだれ | 雪崩 | 雪が崩れる |
| たなばた | 七夕 | 七月七日の夕べ |
意味から漢字を当てているので、漢字から意味は分かるのに、漢字から読みは分からないという逆転が起きます。これが熟字訓の特徴です。
覚え方の基本:語をまとまりで
熟字訓は、一字ずつではなく、語全体を一つのまとまりとして覚えます。
- 語を見て、意味を言う(「果物」→木の実などの食べ物)
- 意味から、日本語の言葉を思い出す(→くだもの)
- 漢字と読みを、意味を仲立ちにして結ぶ
「果物」を「か・もの」と読もうとするのは、一字ずつ読もうとしているからです。意味を先に取れば、「くだもの」が出てきます。
入試でよく出る熟字訓
| 分野 | 語 |
|---|---|
| 時・日 | 今日(きょう)・明日(あす)・昨日(きのう)・今朝(けさ)・今年(ことし)・二十日(はつか) |
| 人 | 大人(おとな)・一人(ひとり)・二人(ふたり)・博士(はかせ)・息子(むすこ)・迷子(まいご)・玄人(くろうと)・素人(しろうと) |
| 自然・季節 | 時雨(しぐれ)・五月雨(さみだれ)・梅雨(つゆ)・吹雪(ふぶき)・雪崩(なだれ)・紅葉(もみじ)・景色(けしき)・日和(ひより) |
| 物 | 眼鏡(めがね)・果物(くだもの)・土産(みやげ)・風邪(かぜ)・足袋(たび)・浴衣(ゆかた)・竹刀(しない) |
| その他 | 上手(じょうず)・下手(へた)・田舎(いなか)・行方(ゆくえ)・名残(なごり)・笑顔(えがお)・真面目(まじめ)・最寄り(もより) |
二通りに読める語
同じ漢字でも、熟字訓と音読みの両方がある語があります。
| 語 | 熟字訓 | 音読み | 使い分け |
|---|---|---|---|
| 今日 | きょう | こんにち | 「今日は暑い」/「今日の社会では」 |
| 明日 | あす・あした | みょうにち | ふだんは「あす・あした」 |
| 紅葉 | もみじ | こうよう | 木の名前・葉そのもの/葉が色づく現象 |
| 清水 | しみず | せいすい | 地名や湧き水/清らかな水 |
| 上手 | じょうず | (うわて・かみて) | 得意/優位・舞台の向き |
文脈でどちらか決まります。「今日の社会」を「きょうの社会」と読むと意味がずれます。
よくある間違い
一字ずつ読もうとする
「今朝」を「いまあさ」、「果物」を「かぶつ」と読む誤りです。意味を先に取り、日本語の言葉を思い出します。
音読みの熟語と決めつける
「時雨」を「じう」と読んでも語になりません。音読みで意味のある語にならなければ、熟字訓を疑います。
熟字訓を知らないことを「漢字が弱い」と思う
熟字訓は、字から導けないので、知らなければ読めないのが当たり前です。語として一つずつ覚えるものです。
自分で確かめよう
確認1:「眼鏡」の読みと、字から読めない理由
「めがね」です。先に「めがね」という日本語があり、「眼のための鏡」という意味で漢字を当てたので、字の音訓とは関係がありません。
確認2:「紅葉」の二つの読みと使い分け
「もみじ」は木の名前や葉そのもの、「こうよう」は葉が色づく現象を指します。「紅葉狩り(もみじがり)」「紅葉が進む(こうよう)」です。
確認3:熟字訓を覚えるとき、何を仲立ちにしますか
意味です。語を見て意味を言い、意味から日本語の言葉を思い出して、漢字と読みを結びます。
まとめと次の一歩
熟字訓は、日本語の言葉に意味の合う漢字を当てた語なので、字から読みは導けません。語全体を一つのまとまりとして、意味を仲立ちに覚えます。二通りに読める語は文脈で決めます。
次のレッスンでは、熟字訓かどうかを見分け、意味から読みを引き出す手順を一行ずつ使います。
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