熟字訓・特別な読み方:判断手順を一行ずつ使う
このレッスンの役割
前のレッスンで、熟字訓は意味を仲立ちに語全体で覚えることを知りました。ここでは、文の中で見慣れない語に出会ったとき、熟字訓かどうかを見分けて読む手順を使えるようにします。
今回の中心技能は、「音読みで語になるか試す → ならなければ意味を取る → 意味から日本語の言葉を思い出す → 文脈で確かめる」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
次の文の「名残」は、どう読むでしょうか。
祭りの名残を惜しんで、しばらく会場に残った。
手順で決めます。音読みで「めいざん」としても語になりません。意味は「残っている気配・余韻」。それを表す日本語は「なごり」。「名残を惜しむ」で文脈に合います。したがって「なごり」です。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 「名残」の場合 |
|---|---|---|
| 1 | 音読みで読んで、知っている語になるか試す | めいざん → 語にならない |
| 2 | 字の意味から、語の意味を取る | 名(なごり・あと)+残る → 残っている気配 |
| 3 | その意味を表す日本語の言葉を思い出す | なごり |
| 4 | 文脈に当てはめて自然か確かめる | 「名残を惜しむ」 → 自然 |
段階1で語になれば音読みの熟語で、熟字訓ではありません。段階1で語にならなければ、熟字訓を疑って段階2へ進みます。
例題1:「行方」
- 「こうほう」 → 語にならない
- 行く+方向 → 行った先、どこにいるか
- ゆくえ
- 「行方が分からない」 → 自然
例題2:「日和」
- 「にちわ」 → 語にならない
- 日+和やか → 天気がよい日
- ひより
- 「運動会日和」 → 自然
「日和」は「小春日和(こはるびより)」のように、あとに付くと「びより」と濁ります。語をまとまりで覚えておくと、こうした変化にも対応できます。
例題3:「今日」の二通り
- 「こんにち」 → 語になる
- 文脈を見る。「今日の社会では」なら「現代」の意味、「今日は暑い」なら「この日」の意味
- 現代なら「こんにち」、この日なら「きょう」
- 文に戻す
音読みで語になる場合でも、熟字訓の読みが別にある語は、文脈で選びます。
当て字も同じ手順で
意味ではなく音に漢字を当てた語を当て字といいます。「寿司(すし)」「出鱈目(でたらめ)」「素敵(すてき)」「滅茶苦茶(めちゃくちゃ)」「兎に角(とにかく)」などです。
当て字は、段階1の音読みで近い音が出ることがあります(寿司→じゅし→すし)。意味からは読めないので、語として覚えます。入試では、熟字訓ほど多くは出ません。
段階3で言葉が出ないとき
意味は取れたのに日本語が思い出せないときは、次の順で切り替えます。
- 同じ字を使う別の熟字訓を思い出す(「名残」が出なければ「名所(めいしょ)」ではなく、「残り」の意味から)
- 文脈から意味だけ取って読み進める(読解は意味が分かれば進む)
- 読みは保留し、あとで確かめる
読めないことと、文章が分からないことは別です。意味が取れていれば設問は解けます。
よくある間違い
段階1を飛ばして全部熟字訓だと思う
「今日」は「こんにち」とも読みます。音読みで語になるかを先に試します。
段階2を飛ばして音だけで思い出そうとする
「なごり」は「名残」の音からは出てきません。意味を取って、意味から言葉を引き出します。
文脈に戻さない
「紅葉」を「もみじ」と読んで「紅葉が進む」とすると不自然です。文に戻して自然か確かめます。
自分で確かめよう
確認1:「土産」を四段階で読んでください
「どさん」 → 語にならない → その土地で産する物、旅先で買って帰る物 → みやげ → 「土産を買う」で自然。
確認2:「紅葉が色づく季節」の「紅葉」の読み
葉が色づく現象なので「こうよう」です。木や葉そのものを指すなら「もみじ」です。
確認3:意味は分かるが読みが出ないとき、読解ではどうしますか
意味だけ取って読み進めます。読みは保留し、設問に関係するときだけあとで確かめます。
まとめと次の一歩
手順は、音読みで語になるか試す、意味を取る、日本語の言葉を思い出す、文脈で確かめる、の四段階です。音読みで語になる語でも、熟字訓の読みが別にあれば文脈で選びます。
次のレッスンでは、熟字訓でよく起きる誤りを集め、どの段階で崩れたかを見抜けるようにします。
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