同訓異字を使い分けよう:判断手順を一行ずつ使う
このレッスンの役割
前のレッスンで、同訓異字は対象と音読みの熟語で見分けることを知りました。ここでは、その見分け方を手順にして、迷う語に同じ順で当てられるようにします。
今回の中心技能は、「対象を言う → 意味を言い換える → 音読みの熟語に置きかえる → 文に戻す」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
「薬がきく」の「きく」は、「聞く」「聴く」「効く」「利く」のどれでしょうか。
手順で決めます。対象は「薬」。意味は「ききめがある」。熟語に置きかえると「効果」「効能」の「効」。「薬が効く」で自然です。したがって「効く」です。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 「薬がきく」の場合 |
|---|---|---|
| 1 | 対象(何が・何を)を言う | 薬が |
| 2 | 意味を別の言葉で言い換える | ききめがある |
| 3 | その意味の音読みの熟語に置きかえる | 効果・効能 → 効 |
| 4 | 文に戻して自然か確かめる | 「薬が効く」 → 自然 |
段階2の言い換えが、段階3の熟語を引き出します。「ききめ」と言えれば「効果」が出てきます。
例題1:「音楽をきく」
- 対象は音楽
- 注意を向けて耳をかたむける
- 「聴取」「傾聴」の「聴」
- 「音楽を聴く」で自然
ただ耳に入るだけなら「聞く」(聞こえる)、尋ねるのも「聞く」(話を聞く、道を聞く)。意識して味わうときは「聴く」です。「気がきく」「右手がきく」のように「はたらく」意味なら「利く」(利用)です。
例題2:「会社につとめる」
- 対象は会社
- そこで働く
- 「勤務」「勤労」の「勤」
- 「会社に勤める」で自然
「議長をつとめる」は役目を果たすので「務める」(任務・職務)、「解決につとめる」は努力するので「努める」(努力)です。
例題3:「姿をあらわす」
- 対象は姿
- 見えるようになる
- 「出現」「現在」の「現」
- 「姿を現す」で自然
気持ちや考えを外に出すなら「表す」(表現・発表)、本を書くなら「著す」(著作・著者)です。
段階3で熟語が出ないとき
その字を使う熟語がすぐに出ないときは、反対の字や仲間の字を使います。
| 迷う組 | 仲間・反対の字 |
|---|---|
| 覚める/冷める | 覚=目覚め・感覚、冷=冷却・冷静 |
| 写す/映す/移す | 写=写真・複写、映=映像・反映、移=移動・移転 |
| 作る/造る/創る | 作=作文・制作(小さい物・形のないもの)、造=造船・建造(大きな物)、創=創造・創作(新しく生み出す) |
| 直す/治す | 直=修理・直線(物や誤り)、治=治療・治安(病気・けが) |
| 送る/贈る | 送=送付・発送(届ける)、贈=贈答・寄贈(プレゼント) |
文脈を言い換えるときの型
| 言い換え | 選ぶ字 |
|---|---|
| 重さ・かさを数える | 量る |
| 長さ・深さ・広さを数える | 測る |
| 時間・数を数える | 計る |
| そうなるように計画する | 図る |
| 中に入れる・手に入れる | 収める |
| 渡すべきものを渡す | 納める |
| 病気やけがをなおす | 治す |
| 物や誤りをなおす | 直す |
よくある間違い
段階1を飛ばして意味だけで決める
「なおす」は、対象が病気なら「治」、機械なら「直」です。対象を先に言うと、意味の言い換えがぶれません。
熟語を一つしか試さない
「写」で迷ったら「写真」「複写」「映像」「移動」と、候補すべての熟語を出してから比べます。
文に戻さない
「薬が利く」と書いて読み返せば、「ききめ」の意味とずれていることに気づけます。
自分で確かめよう
確認1:「鏡に姿をうつす」を四段階で
対象は姿 → 鏡の面に像として出す → 映像・反映の「映」 → 「鏡に映す」で自然。「写す」は書き写す・写真に撮る、「移す」は場所を動かす、です。
確認2:「議長をつとめる」はどれですか
役目を果たす意味なので、「任務」「職務」の「務める」です。
確認3:「機械をなおす」と「かぜをなおす」の漢字
機械は物なので「直す」(修理)、かぜは病気なので「治す」(治療)です。
まとめと次の一歩
手順は、対象を言う、意味を言い換える、音読みの熟語に置きかえる、文に戻す、の四段階です。熟語が出ないときは、仲間の字や反対の字から探します。
次のレッスンでは、同訓異字でよく起きる取り違えを集め、どこで崩れたかを見抜けるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。