抽象語を使って要約しよう:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで、残すもの・削るもの・置き換えの型を知りました。ここでは、本文から字数内の要約を書き上げるまでを一つの手順に決めます。この手順は、「筆者の主張を〜字で」「本文を〜字で要約せよ」のどちらにも使えます。
今回の中心技能は、「図の上二層を取り出す → 具体を抽象語に置き換える → 『〜ので〜』の一文につなぐ → 字数と要素を照らして調整する」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
①人は、知らないことに出会うと、知っていることに当てはめて理解しようとする。②初めて食べた料理を「カレーに似ている」と言うのがそれだ。③この働きは素早い理解に役立つ。④しかし、「カレー」と言った瞬間に、その料理の独自の味は見えなくなる。⑤だから、知らないものを本当に知るには、「似ているが違う」という感覚を保つ必要がある。⑥つまり、本当に知るとは、知っている枠を一度外すことなのである。
五十字以内で要約します。上二層:⑥(中心)、⑤(支える主張)、④(根拠)。置き換え:「カレーと言った瞬間に独自の味が見えなくなる」→「既知に当てはめると独自性が見えなくなる」。つなぐ:「既知に当てはめると独自性が見えなくなるので、本当に知るには知っている枠を一度外す必要がある。」(四十七字)。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 図の上二層を取り出す | ⑥中心、⑤支え、④根拠 |
| 2 | 具体を抽象語に置き換える | カレーの例→既知に当てはめる、独自の味→独自性 |
| 3 | 「〜ので〜」の一文につなぐ | 根拠ので主張 |
| 4 | 字数と要素を照らして調整する | 四十七字、要素(当てはめ・独自性・枠を外す)あり |
段階1:上二層の取り出し方
「主張と根拠を図にしよう」の図を使います。図がなければ、「つまり」「だから」「しかし」の後の文(主張)と、「なぜなら」「からだ」の文、数値の文(根拠)に線を引きます。「たとえば」の後は取りません。
段階2:置き換えの表
| 本文の具体 | 型 | 抽象語 |
|---|---|---|
| 初めて食べた料理を「カレーに似ている」と言う | 場面を性質に | 既知に当てはめる |
| 「カレー」と言った瞬間に独自の味は見えなくなる | 場面を性質に | 独自性が見えなくなる |
| 望遠鏡・自動車・電話 | 並列を一語に | 道具 |
| 普段話さない人と何日も作業する | 長い理由を概念に | 協働 |
本文に抽象語(「枠を外す」「独自」)があれば、そのまま使います。
段階3:つなぎ方の型
| 型 | 形 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 理由→主張 | 〜ので、〜だ | 根拠が理由のとき |
| 対立→主張 | 〜ではなく、〜だ | 対立の構造があるとき |
| 定義 | 〜とは、〜ことだ | 中心の主張が定義のとき |
| 二つの根拠 | 〜であり、〜なので、〜だ | 六十字以上で根拠二つ |
今日の問いは、理由→主張、に定義(⑥)を重ねた形です。
段階4:調整の表
| 状況 | 調整 |
|---|---|
| 字数が多い | 根拠を一つ減らす、修飾語を削る、より抽象な語に |
| 字数が少ない | 根拠を一つ足す、数値の要点を足す |
| 要素が落ちている | 落ちた要素を含む語に戻す(上げすぎを直す) |
| 本文にない語を使った | 「本文の言葉で」の指示なら本文の語に戻す |
要素の確認は、「具体化」の三条件と同じです。要約が元の具体を全部含むか、元に戻せるか。
例題:六十字で二つの根拠
学校の図書館は放課後も開いているべきだ。放課後は生徒が自分の興味で本を選べる数少ない時間だからだ。ある中学校では放課後開館で貸出冊数が一・五倍になった。また、放課後の図書館は居場所のない生徒の避難所にもなる。
| 段階 | 結果 |
|---|---|
| 1 | 中心:放課後も開くべき。根拠:興味で選べる時間、居場所になる。数値:一・五倍(三層目、字数次第) |
| 2 | 「居場所のない生徒の避難所」→「居場所」 |
| 3 | 二つの根拠型 |
| 4 | 「放課後は生徒が興味で本を選べる数少ない時間であり、居場所にもなるので、学校図書館は放課後も開いているべきだ。」(五十五字) |
よくある間違い
段階1で本文の最初から順に短くする
要約は上二層の再構成です。本文順に縮めると例が残ります。
段階2で本文にある抽象語を使わず自分の言葉にする
本文に「枠を外す」があれば、それを使います。自分の言葉は要素を落としやすい。
段階4で字数だけ見て要素を見ない
四十字に収まっても「独自性」が落ちていれば減点です。要素を照らします。
自分で確かめよう
確認1:要約を作る四段階
上二層を取り出す、具体を抽象語に置き換える、「〜ので〜」につなぐ、字数と要素を照らして調整。
確認2:字数が多すぎるときの調整
根拠を一つ減らす、修飾語を削る、より抽象な語に置き換える。
確認3:要素が落ちていないかを確かめる方法
要約から元の具体を全部含めるか(元に戻せるか)を見る。
まとめと次の一歩
手順は、上二層を取り出す、抽象語に置き換える、一文につなぐ、字数と要素を照らす、の四段階です。要約は本文を縮めるのではなく、図の上層を再構成する作業です。
次のレッスンでは、要約でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。