因果関係を根拠にするとき:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで、因果の三条件を知りました。ここでは、本文の因果の主張を取り出し、三条件を順に点検し、弱点を指摘する手順を一つに決めます。設問「筆者の因果の説明の問題点を述べよ」「この因果関係を確かめるために必要な事実は何か」は、この手順で解けます。
今回の中心技能は、「因果をA→Bの形に書く → 前後と相関を事実で確かめる → 第三の原因と逆の向きを具体的に考える → 本文が排除しているかを判定する」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
スマートフォンの利用時間が長い生徒ほど、睡眠時間が短い。スマートフォンが睡眠を奪っているのだ。
手順で点検します。A→B:スマートフォンの利用→睡眠時間の減少。前後・相関:相関はある(長いほど短い)。前後は本文に明示なし。第三の原因:部活や塾で帰宅が遅く、両方が起きる。逆の向き:眠れないからスマートフォンを見る。排除:本文は排除していない。判定:相関はあるが因果の条件③を満たさず、根拠として弱い。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 因果の主張をA→Bの形に書く | スマホ利用→睡眠減 |
| 2 | 前後と相関を本文の事実で確かめる | 相関あり、前後は不明 |
| 3 | 第三の原因と逆の向きを具体的に考える | 帰宅時間(第三)、眠れないから見る(逆) |
| 4 | 本文がそれを排除しているかを判定する | 排除なし → 弱い |
段階1:A→Bの取り出し方
| 合図 | 例 |
|---|---|
| 〜が〜を招く、〜が〜を生む | 気温上昇が搬送増加を招いた |
| 〜ので、〜ため、〜によって | 便利になったため、能力が衰えた |
| 〜ほど〜だ。だから〜 | 読書量が多いほど成績がよい。だから読書が〜 |
「だから」の前後を、原因(A)と結果(B)に分けます。
段階2:前後と相関の確かめ
| 条件 | 本文に探すもの |
|---|---|
| 前後 | Aが先に起きたことを示す記述(年、〜してから) |
| 相関 | Aの多い少ないでBが違う記述(〜ほど、〜の生徒は〜より) |
一回の出来事(前後だけ)なら、相関がないと判定します。
段階3:第三の原因と逆の向きの考え方
| 問い | 例 |
|---|---|
| AとBの両方を生むCはないか | 帰宅時間、家庭環境、季節 |
| BがAを生んでいないか | 眠れない→スマホ、成績がよい→読書 |
| 偶然ではないか | 同じ年に増えただけ |
ここでは「具体的に」考えます。「他の原因があるかもしれない」だけでは答えになりません。「帰宅時間が遅いと、スマホの利用も睡眠の減少も起きる」のように書きます。
段階4:排除の判定
| 本文の記述 | 判定 |
|---|---|
| 「帰宅時間が同じ生徒同士で比べても、差があった」 | 第三の原因を排除 → 強い |
| 「利用を制限した生徒は、睡眠時間が増えた」 | 向きを確認(A を変えると B が変わる)→ 強い |
| 記述なし | 排除していない → 弱い |
排除の記述があれば、因果として強い根拠です。
例題:排除がある文章
手書きの学生は、パソコン入力の学生より理解度テストの点が高かった。両群の学力は事前テストで同じだった。また、入力の学生に手書きをさせたところ、点が上がった。手書きが理解を深めるのである。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 手書き→理解 |
| 2 | 相関あり(点差)、前後あり(手書きの後にテスト) |
| 3 | 第三:元の学力差。逆:理解が深い学生が手書きを選ぶ |
| 4 | 事前テストで学力差を排除、手書きをさせて向きを確認 → 強い |
設問の形への対応
| 設問 | 答え |
|---|---|
| 因果の説明の問題点 | 段階3の第三の原因・逆の向き+「本文はそれを排除していない」 |
| 因果を確かめるために必要な事実 | 段階4の排除の記述(同条件での比較、Aを変えたときのB) |
| 筆者の因果の根拠は適切か | 段階2〜4の判定 |
よくある間違い
段階3を「他にも原因があるかも」で済ませる
具体的な第三の原因を一つ挙げます。
相関の記述を因果の証拠だと思う
相関は条件②だけです。③がなければ弱い。
筆者が排除の記述をしているのに見落とす
「同じ条件で比べても」「〜させたところ」は排除の合図です。
自分で確かめよう
確認1:「スマホ利用→睡眠減」の第三の原因の例
帰宅時間が遅い(部活・塾)と、利用も睡眠減も起きる。
確認2:因果を確かめるために必要な事実の例
同じ条件(帰宅時間)の生徒同士の比較、利用を制限したときの睡眠時間の変化。
確認3:排除の記述の合図
「同じ条件で比べても」「〜させたところ〜が変わった」。
まとめと次の一歩
手順は、A→Bの形に書く、前後と相関を確かめる、第三の原因と逆の向きを具体的に考える、排除を判定する、の四段階です。排除の記述があれば強く、なければ相関止まりで弱いと判定します。
次のレッスンでは、因果の根拠でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。