必要な根拠を本文から選ぼう:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで、根拠を選ぶ四つの基準を知りました。ここでは、設問を読んでから答案を書くまでを一つの手順に決めます。設問の主張を要素に分けて本文を走査するのが要点で、これで「関係の薄い文」を選ぶ誤りが消えます。
今回の中心技能は、「設問の主張を要素に分ける → 本文を走査して印をつける → 四つの基準で分ける → 設問の指示に合わせて記述に整える」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
設問:筆者が「名前を呼ぶことが最初の信頼を作る」と述べる根拠を、本文の言葉を使って四十字以内で答えよ。 本文:①人は名前を呼ばれると、その場にいることを実感する。②名前は、その人がただ一人であることを示す最も短い言葉だからだ。③店で名前を呼ばれると背筋が伸びる。④病院で番号で呼ばれると順番になった気がする。⑤調査では名前で呼ばれた顧客の満足度が二割高かった。⑥だから、人と接する仕事では名前を呼ぶことが信頼を作る。
手順で選びます。要素:名前を呼ぶ/信頼を作る。走査:①(名前・実感)②(名前・ただ一人)⑤(名前・満足度)に印。基準:①直接、②直接(①の理由)、⑤直接(数値)、③④間接(例)。記述:「名前はただ一人であることを示す言葉で、呼ばれると人はいることを実感するから。」(三十八字)。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 設問の主張を要素に分ける | 名前を呼ぶ/信頼を作る |
| 2 | 本文を走査して要素に対応する文に印をつける | ①②⑤(③④は例) |
| 3 | 四つの基準で直接・間接・関係薄に分ける | 直接①②⑤、間接③④ |
| 4 | 設問の指示に合わせて記述に整える | 四十字、本文の言葉、「〜から」 |
段階1:要素の分け方
| 設問の主張 | 要素 |
|---|---|
| 名前を呼ぶことが信頼を作る | 名前を呼ぶ/信頼(実感・満足) |
| 祭りは続けるべきだ | 祭り/続ける価値(つながり) |
| 手書きを重視すべきだ | 手書き/重視する理由(記憶・理解) |
要素は二〜三個。多すぎると走査が散ります。
段階2:走査の仕方
| 探すもの | 印 |
|---|---|
| 要素の語、またはその言い換え | 名前、呼ぶ、実感、満足、信頼 |
| 「なぜなら」「からだ」の文 | 理由 |
| 数値・調査 | 根拠 |
| 「確かに」「と言われる」の文 | 除外候補 |
本文を最初から最後まで一度通して印をつけます。設問の主張の近くだけ見ると、離れた根拠を落とします。
段階3:分ける表
| 文 | 要素 | 向き | 範囲 | 役割 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | ○ | ○ | 広 | 主張(理由) | 直接 |
| ② | ○ | ○ | 広 | 理由 | 直接 |
| ③ | ○ | ○ | 狭 | 例 | 間接 |
| ④ | ○ | ○ | 狭 | 例(対比) | 間接 |
| ⑤ | ○ | ○ | 広 | 数値 | 直接 |
段階4:記述の整え方
| 指示 | 整え方 |
|---|---|
| 本文の言葉を使って | 直接の根拠の語句をつなぐ(言い換えない) |
| 〜字以内 | 直接の根拠を優先、間接は字数が余れば |
| 根拠を一つ | 最も直接で範囲の広いもの(理由か数値) |
| 根拠をすべて | 直接+間接 |
| 「〜から」「〜ので」で | 文末を指示に合わせる |
例題:離れた根拠
設問:筆者が「図書館は使いやすい場所にあるべきだ」と述べる根拠を答えよ。 【一】ある町では図書館を駅前に移転した翌年、中学生の読書量が二割増えた。 【二】移転後の利用者の六割は放課後の中学生だった。 【三】隣町では読書推進事業だけを行ったが、読書量は変わらなかった。 【四】図書館は、使いやすい場所にあってこそ人を本に近づける。
要素:使いやすい場所/人を本に近づける。走査:【一】(駅前・読書量増)、【二】(放課後の利用)、【三】(場所以外では効果なし)。全部が直接の根拠で、【四】の主張から離れた段落にあります。走査を全体にかける理由です。
よくある間違い
段階1を飛ばして主張の近くを写す
要素に分けないと、「近いが関係の薄い文」を選びます。
段階2で走査を途中でやめる
根拠は離れた段落にもあります。最後まで通します。
段階4で指示を見ずに書く
「本文の言葉で」なのに言い換える、「一つ」なのに三つ書く、は減点です。
自分で確かめよう
確認1:「名前を呼ぶことが信頼を作る」の要素
名前を呼ぶ/信頼(実感・満足)。
確認2:走査を本文全体にかける理由
根拠が主張から離れた段落にあることがあるから。
確認3:「根拠を一つ」のとき選ぶもの
最も直接で範囲の広いもの(理由か数値)。
まとめと次の一歩
手順は、要素に分ける、走査して印、四つの基準で分ける、指示に合わせて整える、の四段階です。要素で走査すれば、近いが関係の薄い文を選ばず、離れた根拠を落としません。
次のレッスンでは、根拠の選択でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。