因果関係を根拠にするとき:抽象度と役割をつかむ
このレッスンの役割
「AだからB」は、論説文で最も多い根拠の形ですが、最も誤りやすい形でもあります。前後して起きただけ、一緒に起きるだけの関係を、原因と結果と見なしてしまうからです。ここでは、前後・相関・因果の三つを区別し、因果を根拠にするための条件をつかみます。
今回の中心技能は、「AとB」の関係を前後・相関・因果の三つに分け、因果と言うために必要な三つの条件を言えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
読書量の多い生徒ほど、国語の成績がよい。だから、読書をすれば成績が上がる。
「読書量が多い」と「成績がよい」は一緒に起きています(相関)。しかし「読書が成績を上げる」(因果)とは限りません。成績がよい生徒は読む余裕があるのかもしれず(逆の因果)、家庭の学習環境が両方を生んでいるのかもしれません(第三の原因)。相関を因果と見なしています。
三つの関係
| 関係 | 内容 | 例 | 根拠としての強さ |
|---|---|---|---|
| 前後 | AのあとにBが起きた | 雨が降った。その後、試合が始まった | 弱い(時間の順だけ) |
| 相関 | AとBが一緒に起きる・変わる | 読書量が多いほど成績がよい | 中(関係はあるが向きが不明) |
| 因果 | AがBを引き起こす | 気温が上がると、熱中症の搬送が増える | 強い(条件を満たせば) |
因果と言うための三つの条件
| 条件 | 内容 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| ① 前後 | Aが先、Bが後 | 時間の順を確かめる |
| ② 相関 | Aが変わるとBも変わる | Aの多い少ないでBが違うか |
| ③ 他の原因の排除 | 第三の原因や逆の向きではない | 「Cが両方を生んでいないか」「BがAを生んでいないか」を問う |
三つがそろって、初めて「AがBの原因」と言えます。論説文では③が省かれることが多く、そこが弱点になります。
第三の原因と逆の向き
| 誤り | 例 | 本当は |
|---|---|---|
| 第三の原因 | アイスの売上が増えると水難事故が増える → アイスが事故の原因? | 気温(夏)が両方を増やす |
| 逆の向き | 成績がよい生徒は読書量が多い → 読書が成績を上げる? | 成績がよいから読む余裕がある可能性 |
| 偶然 | 二つの数値がたまたま同じ年に増えた | 関係なし |
「情報の関係」の因果テストとの対応
| テスト | 条件 |
|---|---|
| AがなければBは起きないか | ②相関+③他の原因の排除の簡易版 |
因果テストで「Aがなくても別の理由でBが起きる」なら、Aは唯一の原因ではなく、第三の原因や逆の向きを疑います。
例題:三つに分ける
ア 朝食をとった日は、集中できた。 イ 朝食をとる生徒は、とらない生徒より午前のテストの正答率が高い。 ウ 朝食をとると血糖値が安定し、脳にエネルギーが供給されるため、集中力が保たれる。
| 文 | 関係 | 理由 |
|---|---|---|
| ア | 前後 | 一日の体験、他の原因(睡眠)もあり得る |
| イ | 相関 | 一緒に起きるが、向き(朝食→集中か、生活習慣→両方か)は不明 |
| ウ | 因果(仕組みの説明つき) | 原因から結果への道筋がある |
ウのように「仕組み」が説明されていると、条件③を満たしやすくなります。
よくある間違い
相関があれば因果だと思う
一緒に起きるだけでは、向きも第三の原因も分かりません。
前後だけで「〜のせいで」と言う
一回の前後は偶然かもしれません。繰り返しの相関が要ります。
筆者が「だから」で結んでいれば因果だと思う
筆者の「だから」も、三つの条件で点検します。
自分で確かめよう
確認1:前後・相関・因果の違い
前後:時間の順だけ。相関:一緒に変わる。因果:AがBを引き起こす。
確認2:因果と言うための三つの条件
前後、相関、他の原因の排除。
確認3:「読書量が多いほど成績がよい」から「読書が成績を上げる」と言えない理由
逆の向き(成績がよいから読める)や第三の原因(学習環境)が排除されていない。
まとめと次の一歩
「AとB」の関係は、前後・相関・因果の三つに分かれます。因果と言うには、前後・相関・他の原因の排除の三条件が要り、論説文では三つ目が省かれやすいです。
次のレッスンでは、本文の因果の主張を三条件で点検し、弱点を指摘する手順を一行ずつ使えるようにします。
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