根拠の種類を知ろう:根拠のずれを直す
このレッスンの役割
根拠の種類に関わる誤りは、経験だけで全体を主張する、出典のない数値・専門家、理由が主張の言い換え、観察を事実と断定する、の四つに分けられます。ここでは、それぞれを型に分け、直します。入試の「根拠の問題点を説明せよ」は、この型で答えます。
今回の中心技能は、根拠を見て四つの型のどれかを言い、どの種類の根拠に替えれば直るかを言えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
主張:中学生の多くは、スマートフォンに時間を奪われている。 根拠:私は毎晩二時間はスマートフォンを見てしまう。
根拠は筆者一人の経験で、「中学生の多く」という範囲を覆えません。経験だけで全体を主張する型①です。「中学生の平均利用時間は一日三時間という調査」のような数値に替えます。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 経験だけで全体 | 一人の体験で「多くの人」「〜は一般に」を主張 | 私は二時間見る → 中学生の多くは | 数値・調査に替える、または主張を「私は」に狭める |
| ② 出典のない数値・専門家 | 「ある調査で」「専門家によれば」だけで、誰の・いつの調査か不明 | 専門家は危険だと言っている | 出典(誰・いつ・どこ)を添える。入試では「出典が示されていない」と指摘 |
| ③ 理由が言い換え | 主張を別の言葉で繰り返しただけ | 読書は大切だ。なぜなら有益だからだ | 主張とは別の事実・性質を理由に |
| ④ 観察を断定 | 筆者が見た範囲を「〜である」と断定 | 教室を見ると質問が具体的だ → 手書きは質問を具体的にする | 「〜ように見える」「私の見る限り」と範囲を限る、または数値で裏づける |
型①を直す:範囲の対応
| 主張の範囲 | 経験で覆えるか | 直し |
|---|---|---|
| 私は | ○ | そのまま |
| 私の周りでは | △(複数の観察) | 観察を複数挙げる |
| 中学生の多くは | × | 数値(調査) |
| 人は一般に | × | 数値+専門家 |
型②を直す:出典の要素
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 誰が | 〇〇大学の研究、文部科学省の調査 |
| いつ | 二〇二四年 |
| 対象 | 全国の中学生三千人 |
| 何を | 一日の利用時間 |
入試の「この根拠の問題点」で、「調査の出典や対象が示されていない」は定番の答えです。
型③を直す:言い換えの見分け
| 主張 | 理由 | 判定 |
|---|---|---|
| 読書は大切だ | 有益だからだ | 言い換え(大切=有益) |
| 読書は大切だ | 語彙と読解力を育てるからだ | 理由(別の性質) |
| 掃除をすべきだ | 掃除は必要だからだ | 言い換え |
| 掃除をすべきだ | 場所を整える態度が育つからだ | 理由 |
理由が主張と同じ意味なら、理由になっていません。
型④を直す:観察の範囲
| 断定 | 直し |
|---|---|
| 手書きの生徒は質問が具体的だ(事実として) | 私の教室では、手書きの生徒のほうが質問が具体的に見える |
| 商店街は人通りがまばらだ(町全体の衰退の根拠として) | 夕方の駅前では人通りがまばらだった(一時点の観察) |
観察は「筆者が見た範囲」の話です。全体の事実に広げるには数値が要ります。
例題:どの型か
主張:運動は成績を上げる。根拠:専門家がそう言っている。
型②。誰が、どんな研究でかが不明。「〇〇大学の研究で、週三回運動する生徒の成績が〜」のように出典を添える。
主張:朝食は大切だ。根拠:朝食をとるべきだからだ。
型③。「べき」は「大切」の言い換え。「脳のエネルギーになり集中力を保つから」に。
よくある間違い
自分の経験は本当だから根拠として十分だと思う
本当でも、主張の範囲が「多くの人」なら覆えません。
「専門家」「調査」の語があれば強いと思う
出典がなければ確かめられません。弱い根拠です。
「なぜなら」の後なら理由だと思う
主張の言い換えは理由ではありません。別の内容かを確かめます。
自分で確かめよう
確認1:「私は毎晩二時間見る」→「中学生の多くは時間を奪われている」のずれの型と直し方
型①(経験だけで全体)。調査の数値に替えるか、主張を「私は」に狭める。
確認2:「専門家がそう言っている」の問題点
出典(誰が・どんな研究で)が示されていない(型②)。
確認3:「読書は大切だ。有益だからだ」の問題点
理由が主張の言い換えで、理由になっていない(型③)。
まとめと次の一歩
根拠の種類のずれは、経験だけで全体、出典のない数値・専門家、理由の言い換え、観察の断定、の四つに分けられます。範囲の対応、出典の要素、別の性質、観察の範囲、で直します。
次のレッスンでは、入試形式の「根拠を分類せよ」「最も説得力のある根拠」「根拠の問題点」で、根拠の種類の判断を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。