具体的な表現とは:根拠のずれを直す
このレッスンの役割
具体例は、主張を支えるために置かれますが、支えきれていないことがあります。ここでは、具体の四種ごとに起きやすいずれを四つの型に分け、直します。入試の「根拠として適切でないものを選べ」は、この型で解けます。
今回の中心技能は、具体例と主張の組を見て、四つの型のどれかを言い、どう直せば支えになるかを言えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
主張:日本の夏は年々暑くなっている。 根拠:昨日は三十六度で、外に出ると汗が止まらなかった。
三十六度は数値ですが、「昨日」一日の話で、「年々暑くなっている」という変化の主張には合いません。変化を示すには、複数年の比較が要ります。数値の条件がずれている型②です。「汗が止まらなかった」は場面描写で、裏づけではありません(型④)。
誤りの四つの型
| 型 | 具体の種類 | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 事例の範囲が狭い | 事例 | 一人・一回の出来事で全体を支える | 複数の事例、または調査に替える |
| ② 数値の条件が違う | 数値 | 時点・対象・単位が主張と合わない | 主張の条件(変化なら複数年、全体なら全体の数)に合う数値に |
| ③ 行動が中身とずれる | 行動 | 抽象語の説明として合わない行動 | 抽象語の定義に当てはまる行動に |
| ④ 描写を裏づけと見なす | 場面描写 | 印象づけを事実の根拠として扱う | 描写は印象づけ。裏づけには事例・数値を |
型①を直す:範囲
| 主張 | ずれた事例 | 直し |
|---|---|---|
| 中学生は読書量が減っている | 弟は本を読まない | 中学生の読書量の調査(複数年) |
| 祭りは人をつなぐ | 私は隣人と話した | 参加者の声を複数、または参加者数の増加 |
型②を直す:数値の条件
| 主張 | ずれた数値 | 合う数値 |
|---|---|---|
| 年々暑くなっている(変化) | 昨日は三十六度(一時点) | 三十五度以上の日数の十年間の推移 |
| 日本全体で〜(全体) | 東京では〜(一地点) | 全国平均 |
| 一人あたりが減った | 全体が減った | 一人あたりの数値 |
数値の「時点・対象・単位」を主張と照らします(「情報の関係」の図表と同じ)。
型③を直す:行動と抽象語
| 抽象語 | ずれた行動 | 合う行動 |
|---|---|---|
| 誠実 | 毎日早起きする | 約束を守る、間違いを認める |
| 手書きが理解を深める | ノートを美しく清書する | 聞いた内容を自分の言葉に直して書く |
抽象語の定義(「情報の関係」の共通点)に当てはまる行動かを確かめます。
型④を直す:描写の役割
| 主張 | 描写 | 扱い |
|---|---|---|
| 夏は暑くなっている | 汗が首筋を流れた | 印象づけ。裏づけには数値を添える |
| 祭りは人をつなぐ | 太鼓が腹に響いた | 印象づけ。裏づけには参加者の行動や数を |
描写は「読者に感じさせる」役割で、「事実を示す」役割ではありません。設問「根拠として挙げられている事実」には選びません。
例題:どの型か
主張:この町の人口は減っている。根拠:駅前の商店街は、夕方になると人通りがまばらで、シャッターの音だけが響く。
型④。描写で印象づけているが、人口減の裏づけではない。人口の推移の数値が要る。
主張:読書は思考力を育てる。根拠:読書家の友人は、クイズ番組で正解が多い。
型①③。一人の例で範囲が狭く、「クイズの正解」は「思考力」の中身とずれる。
よくある間違い
数値があれば裏づけになると思う
時点・対象・単位が主張と合わなければ、裏づけになりません。
印象的な描写を根拠に数える
描写は納得を助けますが、事実の根拠ではありません。
一つの型で止める
今日の問いのように、型②と型④が重なります。全部挙げます。
自分で確かめよう
確認1:「昨日は三十六度だった」が「年々暑くなっている」の根拠にならない理由と型
一時点の数値で変化を示せない。型②(数値の条件が違う)。
確認2:場面描写の役割と、裏づけに使えない理由
印象づけ。読者に感じさせるが、事実を示していない。
確認3:「誠実」の説明として「毎日早起きする」がずれている型
型③(行動が抽象語の中身とずれる)。
まとめと次の一歩
具体例のずれは、事例の範囲、数値の条件、行動と抽象語、描写の役割、の四つの型で見つけます。種類ごとに直し方が決まっています。
次のレッスンでは、入試形式の問題で、具体の種類・役割・ずれの判定を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。