前提チェック(情報の関係):具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
論説文を読むとは、筆者の抽象的な考えを具体で確かめ、具体例から筆者の考えへ上ることです。この「往復」が、このコースの中心の動きです。ここでは、一つの文を起点に、一段上と一段下を作る手順を一つに決めます。
今回の中心技能は、「文の抽象度を決める → 一段上の抽象に上る → 一段下の具体に下りる → 対応を確かめる」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
読書は語彙と表現を豊かにする。
手順で往復します。抽象度:中。一段上:「本を読むことは人を育てる」(語彙と表現を含む、より広い性質)。一段下:「ある生徒は一年で五十冊読み、作文の表現が豊かになった」(一人の出来事)。対応:上は元の文を含むか → 含む。下は元の文の例になるか → なる。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 文の抽象度を決める | 中(性質だが話題は読書に限る) |
| 2 | 一段上の抽象(共通点)に上る | 本を読むことは人を育てる |
| 3 | 一段下の具体(例)に下りる | ある生徒が五十冊読んで表現が豊かになった |
| 4 | 上と下が元の文と対応するか確かめる | 上は含む、下は例になる |
段階2:上る方法
| 方法 | 例 |
|---|---|
| 「〜など」を外して広い語にする | 語彙と表現 → 言葉の力 → 人の力 |
| 「つまり」で言い換える | つまり、読書は人を育てる |
| 複数の具体の共通点を言う | 語彙が増える、表現が豊かになる、考えが深まる → 人を育てる |
上りすぎると「物事は大切だ」のように何にでも当てはまり、意味がなくなります。一段だけ上ります。
段階3:下りる方法
| 方法 | 例 |
|---|---|
| 「たとえば」で例を置く | たとえば、ある生徒は〜 |
| 数値・固有名詞・場面を入れる | 一年で五十冊、作文、〇〇さん |
| 「〜という場合」を作る | 読書量が多い生徒の作文が豊かになる場合 |
下りすぎると、一つの出来事にしか当てはまらず、元の文の例にならないことがあります。
段階4:対応の確かめ
| 確かめ | 問い | 失敗の例 |
|---|---|---|
| 上 | 上の文は元の文を含むか | 「読書は楽しい」(別の性質で、含まない) |
| 下 | 下の文は元の文の例になるか | 「ある生徒は毎日運動した」(読書と無関係) |
対応しなければ、段階2・3をやり直します。
例題:具体から上る
田中さんは、友人の荷物を持ち、電車で席をゆずり、迷っている人に道を教えた。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 低い(三つの出来事) |
| 2 | 田中さんは困っている人を助ける人だ(共通点) |
| 3 | (元が具体なので省略可。さらに下は「四月十日に〜」) |
| 4 | 三つの出来事はすべて「助ける」の例 → 対応 |
例題:抽象から下りる
現代人は、情報を受け取るばかりで、自分で考える時間を失っている。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 高い |
| 2 | 便利さは人から何かを奪う(さらに上) |
| 3 | 通学中にスマートフォンでニュースを流し読みし、内容を覚えていない |
| 4 | 下は「受け取るばかりで考えない」の例になる → 対応 |
よくある間違い
段階2で二段以上上る
「読書は語彙を豊かにする」→「物事は大切だ」は上りすぎ。一段ずつ。
段階3で別の話題に下りる
元の文の例でなければ下りたことになりません。
段階4を省く
上下の文が元の文とずれていても気づけません。
自分で確かめよう
確認1:「読書は語彙と表現を豊かにする」の一段上と一段下
上:本を読むことは人を育てる。下:ある生徒が五十冊読んで作文の表現が豊かになった。
確認2:上りすぎるとどうなりますか
何にでも当てはまり、意味がなくなる(物事は大切だ)。
確認3:段階4で確かめる二つのこと
上の文は元の文を含むか、下の文は元の文の例になるか。
まとめと次の一歩
往復の手順は、抽象度を決める、一段上る、一段下りる、対応を確かめる、の四段階です。一段ずつ、同じ話題で、対応を確かめながら動きます。
次のレッスンでは、根拠が主張とずれる三つの型(範囲・向き・種類)を確認し、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。