抽象表現を具体化しよう:抽象度と役割をつかむ
このレッスンの役割
前のセクションでは、具体から抽象へ上りました。ここでは逆に、筆者の抽象的な説明に当てはまる例を自分で考えます。入試では「本文の内容に当てはまる例を選べ」「筆者の考えに合う身近な例を挙げよ」の形で出ます。作文や面接でも、抽象的な意見に例を添える力が要ります。
今回の中心技能は、抽象的な説明を見て、よい具体例の三つの条件(要素を含む・範囲内・反例でない)を満たす例を作れることです。目安時間は8分です。
今日の問い
人は、知らないことに出会うと、知っていることに当てはめて理解しようとする。
この説明に当てはまる身近な例を考えます。「初めて聞いた外国の歌を『〇〇という日本の歌手に似ている』と言った」。要素:知らないこと(外国の歌)、知っていること(日本の歌手)、当てはめる(似ていると言う)。三つの要素が全部入っています。「外国の歌を聞いた」だけでは、「当てはめる」が抜けています。
具体化の二つの方向
| 方向 | 内容 | 設問 |
|---|---|---|
| 本文の中へ | 他の段落にある例を探す | 「本文中で〜の例として挙げられているもの」 |
| 本文の外へ | 身近な場面から例を作る | 「筆者の考えに当てはまる例を挙げよ」「次のうち当てはまるものを選べ」 |
本文の中への具体化は、前のセクションの手順で解けます。ここでは本文の外への具体化を扱います。
よい具体例の三つの条件
| 条件 | 内容 | 失敗の例 |
|---|---|---|
| ① 要素を含む | 抽象の各要素に対応する内容がある | 「外国の歌を聞いた」(当てはめる、が抜ける) |
| ② 範囲内 | 抽象が言っている範囲の出来事 | 「知っている歌を聞いた」(知らないこと、ではない) |
| ③ 反例でない | 抽象を否定する例になっていない | 「外国の歌を、何にも似ていないと感じた」(当てはめていない) |
抽象の要素への分け方
| 抽象 | 要素 |
|---|---|
| 人は知らないことに出会うと、知っていることに当てはめて理解する | 知らないこと/知っていること/当てはめる/理解する |
| 便利さは人から何かを奪う | 便利なもの/奪われる能力/奪う(使わなくなる) |
| 名前を呼ばれると、人はいることを実感する | 名前を呼ばれる/実感する |
要素を先に分けると、例に何を入れればよいかが決まります。
例題:条件で判定する
「便利さは人から何かを奪う」に当てはまる例として適切なものを選びなさい。 ア 地図アプリに頼って、道を覚えなくなった。 イ 地図アプリは、初めての場所でも迷わずに着ける。 ウ 地図アプリを使わずに、紙の地図で歩いた。 エ 地図アプリの電池が切れて困った。
| 選択肢 | 要素 | 範囲 | 反例 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| ア | 便利(アプリ)・奪われる(道を覚える)・使わなくなる ○ | ○ | ○ | 適切 |
| イ | 「奪う」がない(便利さの利点のみ) | ― | ― | 不適切 |
| ウ | 便利さを使っていない | 範囲外 | ― | 不適切 |
| エ | 「奪う能力」がない(不便の話) | ― | ― | 不適切 |
設問の形
| 設問 | 答え方 |
|---|---|
| 当てはまる例を選べ | 三つの条件で各選択肢を判定 |
| 当てはまる例を挙げよ(記述) | 要素を全部含む一文を作る |
| 当てはまらない例を選べ | 反例、または要素が抜けたもの |
よくある間違い
話題が同じなら例になると思う
「地図アプリ」の話でも、「奪う」が入っていなければ例ではありません。
筆者の意見に賛成する例なら何でもよいと思う
要素が対応しなければ、別の話です。
反例を例と見なす
「何にも似ていないと感じた」は、「当てはめる」の否定です。
自分で確かめよう
確認1:よい具体例の三つの条件
要素を含む、範囲内、反例でない。
確認2:「便利さは人から何かを奪う」の要素
便利なもの、奪われる能力、使わなくなる(奪う)。
確認3:「地図アプリは迷わずに着ける」が例として不適切な理由
「奪う」の要素がない(利点だけ)。
まとめと次の一歩
具体化は、抽象を要素に分け、全部の要素を含み、範囲内で、反例でない例を作る作業です。本文の中への具体化と、本文の外への具体化があります。
次のレッスンでは、要素に分けてから例を作り、条件で点検する手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。