具体的な表現とは:抽象度と役割をつかむ
このレッスンの役割
「具体的」とは、内容を思い浮かべやすいことです。論説文の具体的な表現には、いくつかの種類があり、それぞれ役割が違います。ここでは、具体的な表現を四種に分け、文章の中で何をしているかをつかみます。
今回の中心技能は、具体的な表現を見て「事例・行動・数値・場面描写」のどれかを言い、その役割(裏づけ・説明・印象づけ)を言えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
日本の夏は暑くなっている。昨年の八月、東京では最高気温三十五度以上の日が十七日あった。帰宅途中、アスファルトの熱が靴底から伝わり、立ち止まるたびに汗が首筋を流れた。
「三十五度以上の日が十七日」は数値で、暑くなっていることの裏づけ。「アスファルトの熱が靴底から」は場面描写で、暑さを読者に感じさせる印象づけ。どちらも具体ですが、役割が違います。
具体的な表現の四種
| 種類 | 内容 | 例 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 事例 | 実際にあった出来事・人物・物 | ある生徒は一年で五十冊読んだ | 裏づけ(主張が当てはまる例) |
| 行動 | 誰かが何をしたか | 席をゆずった、手書きで書いた | 説明(抽象語の中身を示す) |
| 数値 | 量・割合・回数・年 | 三十五度、十七日、二割 | 裏づけ(測れる事実) |
| 場面描写 | 五感で感じる様子 | 熱が靴底から伝わる | 印象づけ(読者に体感させる) |
役割の三つ
| 役割 | 内容 | 設問での扱い |
|---|---|---|
| 裏づけ | 主張や一般論が事実であることを示す | 「根拠として挙げられている事実」 |
| 説明 | 抽象語の意味を具体的に示す | 「──線部の具体例」「どういうことか」 |
| 印象づけ | 読者の感覚に訴えて納得させる | 「表現の効果」 |
事例と数値は裏づけ、行動は説明、場面描写は印象づけになりやすいですが、文脈で変わります。
具体の見分け方(確認)
| 手掛かり | 例 |
|---|---|
| 固有名詞・数字 | 東京、八月、三十五度 |
| 「たとえば」「実際に」「ある〜」 | ある生徒は |
| 五感の語 | 熱、汗、音、におい |
| 「〜など」を付けて自然 | 席をゆずるなど |
例題:種類と役割
地域の祭りは人をつなぐ。①準備の日、普段は話さない隣家の男性と、三時間並んで提灯を吊るした。②参加者は昨年より二百人増えた。③太鼓の音が腹に響き、見知らぬ人と同じ拍子で手を叩いていた。
| 文 | 種類 | 役割 |
|---|---|---|
| ① | 行動(事例) | 説明(「つなぐ」の中身) |
| ② | 数値 | 裏づけ(祭りの広がり) |
| ③ | 場面描写 | 印象づけ(一体感を体感させる) |
具体が多すぎる文章・少なすぎる文章
| 状態 | 問題 |
|---|---|
| 具体が多すぎる | 筆者の考え(抽象)が見えない。読み手が「で、何が言いたいのか」となる |
| 具体が少なすぎる | 抽象ばかりで納得できない。「本当にそうか」となる |
論説文は、抽象の文に具体を添える「組」で進みます。組になっていない具体は、役割を疑います。
よくある間違い
具体=事実だと思う
場面描写は具体ですが、事実の裏づけではなく印象づけです。
数値があれば根拠として十分だと思う
数値も「範囲」と「向き」のずれは起きます(前提チェック)。
場面描写を読み飛ばす
設問「表現の効果」で問われます。役割(印象づけ)を言えるようにします。
自分で確かめよう
確認1:具体的な表現の四種
事例、行動、数値、場面描写。
確認2:「アスファルトの熱が靴底から伝わり」の種類と役割
場面描写。印象づけ。
確認3:数値の主な役割
裏づけ(測れる事実として主張を支える)。
まとめと次の一歩
具体的な表現は、事例・行動・数値・場面描写の四種で、裏づけ・説明・印象づけのいずれかの役割を持ちます。論説文は抽象と具体の組で進みます。
次のレッスンでは、具体から抽象へ上る往復を、四種の具体ごとに練習します。
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