抽象的な表現とは:根拠のずれを直す
このレッスンの役割
抽象的な表現は、筆者の考えを伝える一方で、具体と対応していないと「もっともらしいが何も言っていない」文になります。ここでは、抽象の四種ごとに起きやすいずれを四つの型に分け、直します。
今回の中心技能は、抽象的な表現と主張・具体の組を見て、四つの型のどれかを言い、どう直せば支えになるかを言えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
主張:学校は読書の時間を増やすべきだ。 根拠:読書は人生を豊かにするものであり、教育の根幹に関わる営みだからだ。
根拠は抽象的で立派に聞こえますが、「人生を豊かに」「教育の根幹」は何にでも当てはまり、具体で確かめられません。広すぎて何も言っていない型①です。「読書は語彙を増やし、読解力の調査で読書量と相関がある」のように、具体に下りられる根拠に直します。
誤りの四つの型
| 型 | 抽象の種類 | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 広すぎる根拠 | 性質・傾向 | 何にでも当てはまり、具体で確かめられない | 一段下りて、具体に対応する性質に |
| ② 未定義のキーワード | 概念 | 筆者の語を定義せずに根拠に使う | 本文の定義を添える、または定義の文を探す |
| ③ 判断を根拠に | 判断・評価 | 「大切だ」「望ましい」で主張を支える | 判断の理由になる事実・性質に替える |
| ④ 一般化のずれ | 一般化 | 「このように」のまとめが具体と合わない | 具体の共通点を取り直す |
型①を直す:一段下りる
| 広すぎる根拠 | 一段下りた根拠 |
|---|---|
| 読書は人生を豊かにする | 読書は語彙を増やし、文章を理解する力を高める |
| 運動は心身によい | 運動は睡眠の質を上げ、集中力を保つ |
| 伝統は大切だ | 祭りは世代をつなぎ、地域の人が顔を合わせる機会になる |
「具体で確かめられるか」をテストにします。
型②を直す:定義を添える
| 未定義 | 定義を添えた形 |
|---|---|
| 「能力の外注」が進んでいるから | 道具に任せて自分の能力を使わなくなる「能力の外注」が進んでいるから |
| 「選択疲れ」が原因だ | 多すぎる情報から選ぶことで疲れる「選択疲れ」が原因だ |
設問「──線部の語の意味を本文から抜き出せ」は、この定義の文を探す問題です。
型③を直す:判断の理由へ
| 判断を根拠に | 直し |
|---|---|
| 読書の時間を増やすべきだ。読書は大切だからだ | 読書の時間を増やすべきだ。読書量と読解力に相関があるからだ |
| この方法は望ましい。よい方法だからだ | この方法は望ましい。短時間で同じ効果が得られるからだ |
「大切だ」は主張の言い換えで、理由になっていません。「なぜ大切か」の事実・性質を根拠にします。
型④を直す:共通点を取り直す
| 具体 | ずれた一般化 | 直し |
|---|---|---|
| 望遠鏡・自動車・計算機が範囲を広げた | このように、道具は人を怠けさせる | このように、道具は人の能力を広げる |
| 店主と会話が生まれた、顔なじみができた | このように、商店街は便利だ | このように、商店街は人と人をつなぐ |
「このように」の後が、直前の具体の共通点になっているかを確かめます。
例題:どの型か
主張:スマートフォンの使用時間を制限すべきだ。根拠:スマートフォンは現代の「心の毒」だからだ。
型②③。「心の毒」は未定義のキーワードで、しかも判断(毒=悪い)。「使用時間が長いほど睡眠時間が短いという調査がある」のような事実に。
具体:練習を続けた生徒は上達した、途中でやめた生徒は伸びなかった。一般化:このように、才能がすべてだ。
型④。具体の共通点は「継続が上達を左右する」。
よくある間違い
立派な言葉の根拠を強いと思う
「人生を豊かに」「根幹」は、具体で確かめられないので弱い根拠です。
キーワードを「本文にあるから」そのまま根拠にする
定義を添えないと、読み手には意味が伝わりません。
「このように」の後を疑わない
筆者のまとめが具体とずれていることもあります(入試の「適切でないまとめ」)。
自分で確かめよう
確認1:「読書は人生を豊かにするから」の根拠のずれの型と直し方
型①(広すぎる)。一段下りて「語彙を増やし読解力を高める」のように具体で確かめられる性質に。
確認2:「読書は大切だから」が根拠にならない理由
判断(主張の言い換え)で、理由になっていない(型③)。
確認3:「このように」の後を確かめる方法
直前の具体の共通点になっているか(型④)。
まとめと次の一歩
抽象的な表現のずれは、広すぎる根拠、未定義のキーワード、判断を根拠に、一般化のずれ、の四つの型で見つけます。一段下りる、定義を添える、理由の事実に替える、共通点を取り直す、で直します。
次のレッスンでは、入試形式の問題で、抽象の種類・役割・言い換え・ずれの判定を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。