具体例から共通点をまとめよう:抽象度と役割をつかむ
このレッスンの役割
ここまでは、本文にある抽象と具体の対応を読みました。ここからは、自分で抽象を作ります。複数の具体から共通点を取り出す作業を「抽象化」と呼びます。入試の「これらの例に共通することを答えよ」「まとめて何というか」は、この作業です。
今回の中心技能は、複数の具体から共通点を取り出し、その共通点が「ちょうどよい高さ」かを判定できることです。目安時間は8分です。
今日の問い
水墨画では描かない部分が景色を作る。能では動きを止めた瞬間が感情を伝える。俳句では言わない部分が余韻を残す。
三つの共通点は何でしょうか。「何もしない部分に意味を持たせる」。「水墨画の余白」では狭すぎ(能・俳句に当てはまらない)、「日本の芸術」では広すぎ(共通する性質を言っていない)。ちょうどよい高さは、三つ全部に当てはまり、他と区別できる言葉です。
抽象化の仕組み
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 具体を並べる | 水墨画の余白、能の静止、俳句の省略 |
| 各具体の要素を分ける | 何を(描かない・止める・言わない)、何が起きる(景色・感情・余韻) |
| 要素ごとに共通する語を探す | 「何もしない」「意味が生まれる」 |
| 一文にする | 何もしない部分に意味を持たせる |
要素に分けると、共通点が見つけやすくなります。
ちょうどよい高さの基準
| 基準 | 問い | 失敗 |
|---|---|---|
| 全部に当てはまる | 三つのどれにも言えるか | 狭すぎ(水墨画の余白) |
| 他と区別できる | この具体の組だけの性質か | 広すぎ(日本の芸術、大切なこと) |
| 要素を落としていない | 「何もしない」と「意味」の両方があるか | 片方だけ(省略すること) |
高さの階段で見る
| 高さ | 例 | 判定 |
|---|---|---|
| 広すぎ | 日本の文化は素晴らしい | 性質を言っていない |
| 広すぎ | 芸術には工夫がある | 何にでも当てはまる |
| ちょうどよい | 何もしない部分に意味を持たせる | ○ |
| 狭すぎ | 絵に余白がある | 能・俳句に当てはまらない |
まとめの文の役割
| 役割 | 位置 | 合図 |
|---|---|---|
| 段落のまとめ | 具体の後 | このように、つまり、要するに |
| 主張の根拠 | 主張の前 | 〜である。だから〜 |
| 定義 | キーワードの前 | 〜を「〇〇」と呼ぶ |
自分で作った共通点は、記述の答えになるだけでなく、文章の構造を読む鍵にもなります。
例題:共通点を取る
部活の先輩は、練習のたびに後輩の名前を呼んで指示した。担任の先生は、提出物に必ず一言コメントを書いた。祖母は、電話のたびに前回の話の続きを尋ねた。
| 要素 | 先輩 | 先生 | 祖母 |
|---|---|---|---|
| 相手 | 後輩 | 生徒 | 孫 |
| 行動 | 名前を呼ぶ | 一言書く | 続きを尋ねる |
| 共通 | 相手を一人の人として覚え、個別に接する |
共通点:「相手を一人の人として覚え、個別に接している」。「優しい」は広すぎ、「名前を呼ぶ」は狭すぎ。
よくある間違い
一つの具体を共通点にする
「水墨画に余白がある」は三つのうち一つです。
広い語で済ませる
「素晴らしい」「大切」「工夫」は、どの組にも言えて区別できません。
要素を片方落とす
「何もしない」だけでは、「意味を持たせる」が抜けます。
自分で確かめよう
確認1:共通点の「ちょうどよい高さ」の三つの基準
全部に当てはまる、他と区別できる、要素を落としていない。
確認2:「水墨画の余白、能の静止、俳句の省略」の共通点
何もしない部分に意味を持たせる。
確認3:「日本の文化は素晴らしい」が共通点として不適切な理由
広すぎて性質を言っていない(他と区別できない)。
まとめと次の一歩
抽象化は、具体を要素に分け、要素ごとに共通する語を探して一文にする作業です。共通点は、全部に当てはまり、他と区別でき、要素を落とさない高さにします。
次のレッスンでは、共通点を取り出して記述の形に整える手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。