主張と根拠を図にしよう:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで、三層の図と二つの約束を知りました。ここでは、本文を読んでから図を完成させるまでを一つの手順に決めます。この手順は、入試の「構成図の選択」と、作文の「構成メモ」の両方に使えます。
今回の中心技能は、「中心の主張を最上段に置く → 各文の役割と抽象度で層を決める → 『何を支えるか』で矢印を引く → 抜け・重複・ずれを点検する」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
①人は名前を呼ばれると、その場にいることを実感する。②名前は、その人がただ一人であることを示す最も短い言葉だからだ。③店で名前を呼ばれると背筋が伸びる。④病院で番号で呼ばれると、人ではなく順番になった気がする。⑤調査では、名前で呼ばれた顧客の満足度が二割高かった。⑥だから、人と接する仕事では、名前を呼ぶことが最初の信頼を作る。
手順で図にします。最上段:⑥。層:①支える主張(中)、②理由(中)、⑤数値(中〜下)、③④例(下)。矢印:②→①、③→①、④→①(対比の例)、⑤→⑥、①→⑥。点検:抜けなし(⑥に①⑤、①に②③④)、重複なし、ずれなし。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 中心の主張を最上段に置く | ⑥(だから の後、文末「作る」の断定) |
| 2 | 各文の役割と抽象度で層を決める | ①中(支える主張)、②中(理由)、⑤中下(数値)、③④下(例) |
| 3 | 「何を支えるか」で矢印を引く | ②③④→①、①⑤→⑥ |
| 4 | 抜け・重複・ずれを点検する | いずれもなし |
段階1:中心の主張の決め方
「筆者の主張を見つけよう」の三つの合図を使います。問いへの答え、繰り返し、文末(べきだ・である・のだ)。接続語なら「つまり」「だから」「しかし」の後。
段階2:層の決め方
| 役割 | 層 |
|---|---|
| 中心の主張 | 上 |
| 支える主張、理由、性質 | 中 |
| 数値、調査 | 中〜下(直接の根拠だが具体) |
| 例、経験、観察、場面描写 | 下 |
| 譲歩、引用、補足 | 図の外(または横に点線) |
譲歩と引用は、主張を支えないので図の本体には入れません。構成図の設問で「譲歩」の箱があれば、主張の横に点線で置きます。
段階3:矢印の引き方
| 問い | 矢印 |
|---|---|
| この理由は、どの主張を支えるか | 理由 → その主張 |
| この例は、どの理由(または主張)を示すか | 例 → その理由 |
| この数値は、何を裏づけるか | 数値 → その主張 |
一つの箱から出る矢印は原則一本です。二本出るなら、どちらを支えるかを本文の接続語で確かめます。
完成した図
⑥ 名前を呼ぶことが最初の信頼を作る(中心)
↑ ↑
① 名前で実感する(支える主張) ⑤ 満足度二割高(数値)
↑ ↑ ↑
② ただ一人 ③ 店の例 ④ 病院の対比例
段階4:点検の表
| 点検 | 問い | 見つかったら |
|---|---|---|
| 抜け | 矢印が向いていない主張はあるか | その主張の根拠を本文で探す。なければ「根拠のない主張」と指摘 |
| 重複 | 同じ内容の箱はあるか | 一つにまとめる |
| ずれ | 矢印の先と要素・範囲・向きが合うか | 矢印を正しい主張に引き直すか、「ずれ」と指摘 |
例題:構成図の選択
本文:①読書は語彙を増やす。②読書は読解力を高める。③だから読書の時間を増やすべきだ。④調査では読書量と語彙力に相関があった。
| 選択肢 | 図 | 判定 |
|---|---|---|
| ア | ③ ← ①②、① ← ④ | ○(④は語彙の数値で①を支える) |
| イ | ③ ← ①②④ | ×(④は③を直接でなく①を通して支える) |
| ウ | ① ← ③ | ×(矢印が逆) |
選択肢の違いは、④の矢印の先。「④は何を裏づけるか」で決めます。
よくある間違い
段階1で最初の文を中心に置く
最初の文は話題や一般論のことが多い。合図と接続語で決めます。
段階2で譲歩を中層に置く
譲歩は主張を支えない。図の外か点線。
段階3で全部の矢印を中心の主張に向ける
例は理由を支え、理由が主張を支えます。段を飛ばした矢印は「ずれ」を隠します。
自分で確かめよう
確認1:図を作る四段階
中心の主張を最上段に、役割と抽象度で層を決める、「何を支えるか」で矢印、抜け・重複・ずれを点検。
確認2:譲歩と引用はどこに置きますか
図の外(または主張の横に点線)。主張を支えないから。
確認3:一つの箱から矢印が二本出そうなとき、どう決めますか
本文の接続語で、どちらを支えているかを確かめ、一本にする。
まとめと次の一歩
手順は、中心の主張を上に、層を決め、矢印を引き、点検する、の四段階です。層は役割と抽象度で、矢印は「何を支えるか」で決めます。
次のレッスンでは、図の作成でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。