筆者の主張を見つけよう:抽象度と役割をつかむ
このレッスンの役割
論説文の設問の中心は「筆者の主張は何か」です。主張は抽象度が高い文ですが、抽象度が高い文が全部主張ではありません。ここでは、主張を特定する三つの手掛かりと、主張に見えて主張でないものの区別をつかみます。
今回の中心技能は、文章の中で主張の候補を三つの手掛かりで絞り、一般論・譲歩・引用・具体例と区別して、主張を一文で指せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
①「便利になれば幸せになる」と多くの人が信じている。②本当にそうだろうか。③確かに家電は家事の時間を減らした。④しかし、家事時間はほとんど減っていないという調査がある。⑤便利さは楽をもたらすのではなく、基準を引き上げるのだ。⑥幸せは、何を「十分」とするかを自分で決められるかどうかにかかっている。
主張はどれでしょうか。②が問いで、⑥がその答え。⑤は「〜のだ」で繰り返し強調される考え。①は引用(一般の見方)、③は譲歩。主張は⑥(中心)と⑤(それを支える筆者の考え)。
三つの手掛かり
| 手掛かり | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 問いへの答え | 「〜だろうか」の問いに対応する文 | ②本当にそうか → ⑥幸せは〜にかかっている |
| 繰り返し | 同じ内容が言葉を変えて何度も出る | 「基準を引き上げる」「十分とするか」 |
| 文末の判断 | べきだ、と考える、のだ、ではないか、必要がある | ⑤のだ、⑥かかっている |
三つが重なる文が、主張です。
主張が置かれやすい位置
| 位置 | 型 |
|---|---|
| 最終段落 | 問題提起型(問い→根拠→答え) |
| 第一段落 | 主張先行型(主張→根拠→再確認) |
| 「しかし」の後 | 譲歩型(確かに→しかし→主張) |
| 「つまり」「このように」の後 | まとめ型 |
位置だけで決めず、三つの手掛かりで確かめます。
主張に見えるが違うもの
| 違うもの | 見分け | 例 |
|---|---|---|
| 一般論・引用 | 「と言われる」「と信じている」「一般に」 | ①便利になれば幸せになると信じている |
| 譲歩 | 「確かに」「もちろん」の後、「しかし」の前 | ③家電は家事の時間を減らした |
| 具体例 | 「たとえば」の後、数値・固有名詞 | ④調査がある(根拠であって主張ではない) |
| 問い | 「だろうか」 | ②本当にそうだろうか |
抽象度が高くても、引用・譲歩は筆者の主張ではありません。
主張の層
| 層 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 中心の主張 | 文章全体の答え | ⑥幸せは自分で決められるかにかかる |
| 支える主張 | 中心を導く筆者の考え | ⑤便利さは基準を引き上げる |
| 根拠 | 支える主張を裏づける事実 | ④調査 |
設問「筆者の主張を一文で」は中心の主張、「筆者の考えを二つ」は中心と支えの両方を答えます。
例題:主張を指す
読書は語彙を増やす。読書量と語彙力の相関を示す調査もある。もちろん、読書だけが語彙を増やすわけではない。会話や映像からも言葉は学べる。それでも、読書が最も効率よく多様な語彙に触れる手段であることは変わらない。だから、学校は読書の時間を守るべきなのである。
| 文 | 役割 |
|---|---|
| 読書は語彙を増やす | 支える主張 |
| 調査もある | 根拠 |
| もちろん〜会話や映像からも | 譲歩 |
| それでも、最も効率よく〜 | 支える主張(譲歩への反論) |
| だから、守るべきなのである | 中心の主張 |
よくある間違い
冒頭の抽象的な文を主張にする
冒頭は引用・一般論・問いのことが多いです。
「確かに」の後を主張にする
譲歩です。「しかし」の後に戻ります。
根拠の事実を主張にする
調査・数値は根拠です。主張は「べきだ」「のだ」の文。
自分で確かめよう
確認1:主張を特定する三つの手掛かり
問いへの答え、繰り返し、文末の判断。
確認2:主張に見えて違うもの四つ
一般論・引用、譲歩、具体例(根拠)、問い。
確認3:「確かに家電は家事の時間を減らした」の役割
譲歩(主張ではない)。
まとめと次の一歩
主張は、問いへの答え・繰り返し・文末の判断の三つで絞り、一般論・譲歩・具体例・問いと区別します。中心の主張と支える主張の層があります。
次のレッスンでは、三つの手掛かりで主張を絞り、主張と根拠と具体の対応を確かめる手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。