抽象表現を具体化しよう:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで、具体化の三つの条件を知りました。ここでは、抽象的な説明から例を作り、点検して抽象に戻すまでを一つの手順に決めます。記述の「当てはまる例を挙げよ」と、選択の「当てはまるものを選べ」の両方に使います。
今回の中心技能は、「抽象を要素に分ける → 各要素に対応する身近な場面を置く → 一文にする → 三つの条件で点検して抽象に戻す」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
「小さな譲歩」:人の都合を少し譲って、他の生き物の居場所を残す試み。この考え方に当てはまる身近な例を挙げなさい。
手順で作ります。要素:人の都合/少し譲る/生き物/居場所を残す。場面:庭の一角/草を刈らない/虫や小鳥/隠れる場所。一文:「庭の一角だけ草を刈らずに残し、虫や小鳥が隠れる場所にしている。」点検:都合(庭をきれいにしたい)を少し(一角だけ)譲り、生き物(虫・小鳥)の居場所 → 全要素○、範囲内、反例でない。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 抽象を要素に分ける | 人の都合/少し譲る/生き物/居場所 |
| 2 | 各要素に対応する身近な場面を置く | 庭/一角を刈らない/虫・小鳥/隠れ場所 |
| 3 | 一文にする | 庭の一角だけ草を刈らずに残し、虫や小鳥の隠れ場所にしている |
| 4 | 三つの条件で点検して抽象に戻す | 要素○、範囲内、反例でない |
段階1:要素の分け方
| 抽象 | 要素 |
|---|---|
| 小さな譲歩 | 誰が(人)/何を(都合)/どれだけ(少し)/誰のために(生き物)/何を残す(居場所) |
| 既知の枠 | 知らないもの/知っている枠/押し込める |
| 名前を呼ばれると実感する | 名前を呼ぶ人/呼ばれる人/実感する場面 |
「誰が・何を・どれだけ・誰のために・何が起きる」で分けると漏れません。
段階2:場面の置き方
| 要素 | 身近な場面の候補 |
|---|---|
| 人の都合 | 庭をきれいに、道を広く、夜を明るく |
| 少し譲る | 一角だけ、一部だけ、時間を限って |
| 生き物 | 虫、小鳥、魚、野良猫 |
| 居場所 | 隠れる場所、通り道、水辺 |
自分の経験、学校、家、通学路から選ぶと具体的になります。
段階3:一文の形
| 形 | 例 |
|---|---|
| 〜して、〜している | 一角を刈らずに残して、隠れ場所にしている |
| 〜することで、〜になる | 街灯を減らすことで、虫が集まらなくなる |
| 〜のとき、〜する | 初めての料理を食べたとき、知っている味に例える |
段階4:点検と戻し
| 点検 | 問い |
|---|---|
| 要素 | 段階1の要素が全部、段階3の文に入っているか |
| 範囲 | 抽象の範囲(人が生き物のために)の中か |
| 反例 | 抽象を否定していないか(草を全部刈る、は反例) |
| 戻し | この例から抽象(小さな譲歩)が導けるか |
戻しは、前のセクションの「共通点を取る」の逆確認です。例から抽象が導ければ、対応しています。
例題:選択問題に使う
「既知の枠」(知っている枠に押し込める働き)に当てはまる例を選びなさい。 ア 初めて食べた料理を、「カレーに似ている」と言った。 イ 初めて食べた料理を、何にも似ていないと感じた。 ウ いつものカレーを食べた。 エ 新しい料理の作り方を本で調べた。
| 選択肢 | 要素(知らない・枠・押し込める) | 判定 |
|---|---|---|
| ア | 初めて(知らない)・カレー(枠)・似ている(押し込める)○ | 適切 |
| イ | 押し込めていない | 反例 |
| ウ | 知らないものではない | 範囲外 |
| エ | 枠に押し込めていない(調べている) | 要素なし |
よくある間違い
段階1を飛ばして思いついた場面を書く
要素が抜けます。「庭に虫がいる」では譲歩がありません。
段階2で抽象的な場面を置く
「自然を大切にする」は場面ではありません。具体的な行動に。
段階4の戻しを省く
例から抽象が導けなければ、別の話になっています。
自分で確かめよう
確認1:「名前を呼ばれると実感する」の例を四段階で
呼ぶ人/呼ばれる人/場面 → 転校先の先生/私/初日 → 転校初日に先生が名前で呼んでくれて、この教室にいてよいと感じた → 要素○、範囲内、反例でない、例から抽象が導ける。
確認2:「初めての料理を何にも似ていないと感じた」が「既知の枠」の例にならない理由
反例(枠に押し込めていない)。
確認3:段階4の「戻し」で確かめること
作った例から元の抽象が導けるか。
まとめと次の一歩
手順は、要素に分ける、場面を置く、一文にする、条件で点検して戻す、の四段階です。選択問題では、各選択肢を要素・範囲・反例で判定します。
次のレッスンでは、具体化でよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。