抽象・具体と根拠マスターチェック:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで四つの柱の表を作りました。ここでは、論説文を読み始めてから設問に答えるまでを、四つの柱をつないだ一つの手順にします。本番ではこの手順を一回通すだけで、主張・根拠・図・要約の材料が揃います。
今回の中心技能は、「接続語に印をつけ各文の抽象度と役割を決める → 中心の主張を決め根拠を種類と強さで分ける → 三層の図にして点検する → 設問の形から柱を決めて答案を作る」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は10分です。
今日の問い
①「地域の行事は若者に敬遠されている」と言われる。②確かに、祭りの参加者の平均年齢は上がり続けている。③しかし、参加しない理由を尋ねた調査では、「興味がない」は二割にとどまり、「誘われたことがない」が五割を占めた。④若者は行事を嫌っているのではなく、入り口を知らないのである。⑤ある町では、中学校を通じて個別に声をかけたところ、翌年の若者の参加が三倍になった。⑥だから、行事を続けたいなら、若者に「来てほしい」と直接伝える仕組みを作ることが、最初の一歩になる。
手順で通します。段階1:印(確かに・しかし・だから)、抽象度(①↑引用、②↓事実、③↓数値、④↑主張、⑤↓事例、⑥↑中心)。段階2:中心⑥、支え④、根拠③(数値・確かめられる・範囲広)、⑤(事例・一町・範囲狭いが因果の排除あり)。段階3:図(⑥←④⑤、④←③、②は譲歩、①は引用)、抜けなし。段階4:設問に応じて柱を呼ぶ。
手順を一行ずつ
| 段階 | 柱 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | ①④ | 接続語に印、各文の抽象度と役割 | 確かに・しかし・だから。①引用②事実③数値④主張⑤事例⑥中心 |
| 2 | ②③ | 中心の主張を決め、根拠を種類と強さで分ける | 中心⑥、支え④。③数値(強)、⑤事例(中・因果) |
| 3 | ④ | 三層の図にして抜け・重複・ずれを点検 | ⑥←④⑤、④←③。①②は外。抜けなし |
| 4 | 設問次第 | 設問の形から柱を決めて答案 | 下の表 |
段階1の表
| 文 | 接続語 | 抽象度 | 役割 |
|---|---|---|---|
| ① | ― | ↑ | 引用(一般論) |
| ② | 確かに | ↓ | 譲歩(事実) |
| ③ | しかし | ↓ | 根拠(数値) |
| ④ | ― | ↑ | 支える主張(対立の構造「ではなく」) |
| ⑤ | ― | ↓ | 根拠(事例・因果) |
| ⑥ | だから | ↑ | 中心の主張 |
段階2の表
| 根拠 | 種類 | 確かめられるか | 範囲 | 事実/推測 | 強さ |
|---|---|---|---|---|---|
| ③ 二割・五割 | 数値 | ○(調査) | 広(調査対象) | 事実 | 強 |
| ⑤ 三倍 | 事例+数値 | ○ | 狭(一町) | 事実 | 中(因果:前後○、他の原因は不明) |
⑤は「声をかけた→三倍」の因果を根拠にしています。前後はあるが、同じ年に別の要因(新しい催し物など)があった可能性は排除されていません。設問「筆者の根拠の弱点」なら、ここを指摘します。
段階3の図
⑥ 直接伝える仕組みを作ることが最初の一歩(中心)
↑ ↑
④ 嫌っているのではなく入り口を知らない ⑤ 声をかけたら三倍(事例・因果)
↑
③ 興味がない二割、誘われたことがない五割(数値)
(① 引用、② 譲歩 は図の外)
段階4:設問の形ごとの答案
| 設問 | 柱 | 答案の作り方 |
|---|---|---|
| 筆者の主張を三十字で | ②④ | ⑥を要約「若者に直接来てほしいと伝える仕組みを作るべきだ」 |
| ④の根拠を抜き出せ | ④③ | ③(要素「嫌っていない・知らない」に対応する数値) |
| ⑤を根拠とすることの弱点 | ③ | 一町の事例で範囲が狭い、他の原因が排除されていない |
| 空欄(しかし)に入る接続語 | ④ | ②譲歩→③筆者側なので反転 |
| 五十字で要約 | ④① | 「若者は行事を嫌うのではなく入り口を知らないので、直接来てほしいと伝える仕組みを作ることが最初の一歩だ。」(五十字) |
よくある間違い
段階1を飛ばして設問から読む
段階1の表があれば、どの設問も表を見るだけで答えられます。先に本文を一度通して表を作ります。
段階2で⑤の因果を「事実だから強い」と判定する
事実でも、因果の根拠としては他の原因の排除がなく、範囲も一町。種類と強さは別々に見ます。
段階3で②を根拠の段に置く
「確かに」は譲歩。図の外。
自分で確かめよう
確認1:統合手順の四段階と対応する柱
接続語と抽象度・役割(①④)、主張と根拠の強さ(②③)、図と点検(④)、設問から柱を決めて答案(設問次第)。
確認2:⑤「声をかけたら三倍」の根拠としての強さと弱点
事実で確かめられるが、一町で範囲が狭く、他の原因が排除されていない因果の根拠。
確認3:段階1の表が設問にどう役立ちますか
主張(↑)、根拠(↓の数値・事例)、譲歩・引用(外)が決まっているので、どの設問も表を見て材料を取り出せる。
まとめと次の一歩
統合手順は、接続語と抽象度・役割の表、主張と根拠の強さ、三層の図、設問から柱を決めて答案、の四段階です。一度通せば、全ての設問の材料が揃います。
次のレッスンでは、コース全体で起きる誤りを四つの大きな型にまとめ、答案を直す手順を確かめます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。