根拠の種類を知ろう:抽象度と役割をつかむ
このレッスンの役割
「情報の関係」では根拠を理由・事例・データの三種で見ました。ここでは六種に広げ、それぞれの抽象度と強さを比べます。入試の「筆者が挙げている根拠を種類ごとに答えよ」「最も説得力のある根拠はどれか」は、この分類で解けます。
今回の中心技能は、根拠を六種に分類し、「確かめられるか」「範囲が広いか」の二つの軸で強さを言えることです。目安時間は8分です。
今日の問い
主張:手書きは記憶を深める。 ①手で書くには、内容を自分の言葉に直す必要があるからだ。②ある実験では、手書きの学生は理解度テストの点が高かった。③私自身、手書きで覚えた単語は忘れにくい。④教室を見ていると、手書きの生徒ほど質問が具体的だ。⑤手書きの学生の点は平均で十二点高かった。⑥記憶の研究者も、書く動作が記憶を助けると述べている。
①理由、②具体例(実験)、③経験、④観察、⑤数値、⑥専門家の見解。六種が全部そろっています。
根拠の六種
| 種類 | 内容 | 合図 | 抽象度 |
|---|---|---|---|
| 理由 | 主張が正しい理屈 | なぜなら、からだ、ため | 高い |
| 具体例 | 主張に当てはまる出来事 | たとえば、ある〜では | 低い |
| 経験 | 筆者自身の体験 | 私は、私自身、かつて | 低い |
| 観察 | 筆者が見た一般的な様子 | 〜を見ていると、〜が多い | 中 |
| 数値 | 測った量・割合 | 〜パーセント、〜倍、〜点 | 低い |
| 専門家の見解 | 研究者・権威の発言 | 〜によれば、研究者は〜と述べる | 中〜高 |
強さの二つの軸
| 軸 | 問い | 強い | 弱い |
|---|---|---|---|
| 確かめられるか | 読み手が事実として確認できるか | 数値、具体例(出典あり)、専門家 | 経験、観察(筆者しか知らない) |
| 範囲が広いか | 主張の範囲をどれだけ覆うか | 数値(多数)、専門家(一般論) | 経験(一人)、具体例(一件) |
| 種類 | 確かめられる | 範囲 | 総合 |
|---|---|---|---|
| 理由 | △(理屈の妥当性による) | 広い | 中 |
| 具体例 | ○(出典があれば) | 狭い | 中 |
| 経験 | × | 狭い | 弱い |
| 観察 | △ | 中 | 中 |
| 数値 | ○ | 広い | 強い |
| 専門家の見解 | ○ | 広い | 強い(ただし誰か・根拠は何かによる) |
組み合わせで強くなる
| 組み合わせ | 効果 |
|---|---|
| 理由+数値 | 「なぜ」と「どれだけ」の両方 |
| 経験+数値 | 一人の体感を全体の数で裏づける |
| 具体例+専門家 | 一件の出来事を一般論で支える |
論説文は、弱い根拠を強い根拠と組にして使います。経験だけ、観察だけの文章は根拠が弱いと判定できます。
例題:分類と強さ
主張:朝食は集中力を高める。 ア 脳は糖分をエネルギーにするからだ。 イ 私は朝食を抜いた日は午前中ぼんやりする。 ウ ある中学校の調査で、朝食をとる生徒の午前のテストの正答率が八ポイント高かった。 エ 栄養学の専門家は、朝食が血糖値を安定させると述べている。
| 根拠 | 種類 | 強さ |
|---|---|---|
| ア | 理由 | 中(理屈) |
| イ | 経験 | 弱い(一人) |
| ウ | 数値(具体例) | 強い(確かめられる、範囲が広い) |
| エ | 専門家 | 強い |
最も説得力があるのはウ。イは弱いが、ウと組になると体感を添える役割を持つ。
よくある間違い
経験を「本当のこと」だから強いと思う
本当でも、一人の話で確かめられません。範囲が狭い。
数値があれば無条件に強いと思う
時点・対象・単位のずれ(前のセクション)があれば弱くなります。
専門家の見解を疑わない
「誰が」「どんな根拠で」言ったかで強さが変わります。名前のない「専門家」は弱い。
自分で確かめよう
確認1:根拠の六種
理由、具体例、経験、観察、数値、専門家の見解。
確認2:強さの二つの軸
確かめられるか、範囲が広いか。
確認3:「私は朝食を抜いた日はぼんやりする」の種類と強さ
経験。弱い(一人で、確かめられない)。
まとめと次の一歩
根拠は六種に分かれ、確かめられるか・範囲が広いかで強さが決まります。数値と専門家は強く、経験は弱いですが、組み合わせで補えます。
次のレッスンでは、本文の根拠を分類し、強さを判定し、不足している種類を指摘する手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。