事実・意見・推測:具体と抽象を往復する
このレッスンの役割
前のレッスンで、三つの区別と確かさの順を知りました。ここでは、文章の各文を分類し、推測がどの事実から導かれているかを結び、飛躍がないかを点検する手順を一つに決めます。設問「筆者の推測の根拠となる事実」「推測として適切でないもの」は、この手順で解けます。
今回の中心技能は、「各文を三つに分類する → 推測をもとの事実と結ぶ → 飛躍の大きさを判定する → 意見を支える事実を特定する」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
①この町の人口は五年で一割減った。②転出した人の七割は二十代だった。③若い世代が都市へ出ているためだろう。④このままでは祭りは続けられなくなるかもしれない。⑤町は若者が残りたくなる仕事を作るべきだ。
手順で点検します。分類:①②事実、③④推測、⑤意見。結ぶ:③←②(二十代が七割)、④←(事実なし)。飛躍:③は小さい(②が直接支える)、④は大きい(祭りの担い手の事実がない)。意見を支える事実:①②。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|
| 1 | 各文を事実・推測・意見に分類する | 事①② 推③④ 意⑤ |
| 2 | 推測をもとの事実と線で結ぶ | ③←②、④←なし |
| 3 | 飛躍の大きさを判定する | ③小、④大 |
| 4 | 意見を支える事実を特定する | ①② |
段階2:結び方
| 推測 | 探すもの | 例 |
|---|---|---|
| 原因の推測(〜ためだろう) | 原因を示す事実 | 転出の七割が二十代 |
| 将来の推測(〜なるだろう) | 現在の傾向を示す事実 | 担い手の年齢構成、過去の中止例 |
| 一般化の推測(〜と考えられる) | 複数の事実 | 複数年のデータ |
事実が見つからなければ「支える事実なし」と記録します。
段階3:飛躍の判定
| 飛躍 | 状態 | 例 |
|---|---|---|
| 小 | 事実が推測を直接示す | 二十代が七割 → 若者が出ている |
| 中 | 事実から一段の解釈で導ける | 人口減 → 町の活力が落ちている |
| 大 | 事実がない、または別の説明が可能 | 人口減 → 祭りが続かない(担い手は別かもしれない) |
飛躍が大きい推測を根拠にした意見は、弱いと判定します。
段階4:意見を支える事実
| 意見 | 直接の根拠(推測) | その根拠(事実) |
|---|---|---|
| 仕事を作るべきだ | 若者が出ている(③) | 転出の七割は二十代(②) |
設問「筆者の意見の根拠となる事実を答えよ」は、推測をさかのぼって事実に至ります。
例題:飛躍が小さい文章
①実験では、手書きの学生の点が十二点高かった。②手書きでは内容を自分の言葉に直すためと考えられる。③この「直す」作業が記憶を深めるのだろう。④したがって、手書きのノートを重視すべきだ。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 事① 推②③ 意④ |
| 2 | ②←①(点差の原因)、③←②(直す作業の効果) |
| 3 | ②中(点差の原因は他にもあり得る)、③中 |
| 4 | ④←①(十二点差) |
飛躍は中程度で、事実(①)が意見を支えている。推測が二段あるので、「直す作業」が本当に原因かは確かめられていない、と指摘できます。
表にまとめる
| 文 | 種類 | 支える事実 | 飛躍 |
|---|---|---|---|
| ① | 事実 | ― | ― |
| ② | 事実 | ― | ― |
| ③ | 推測 | ② | 小 |
| ④ | 推測 | なし | 大 |
| ⑤ | 意見 | ①②(③経由) | ― |
よくある間違い
段階1で推測を事実に入れる
「と考えられる」は推測です。事実ではありません。
段階2で推測同士を結んで終わる
④←③と結んでも、③も推測です。事実まで戻ります。
段階3を省く
推測があれば根拠があると思い込みます。飛躍の大きさを判定します。
自分で確かめよう
確認1:「祭りは続けられなくなるかもしれない」を支える事実は本文にありますか
ない(飛躍が大きい)。
確認2:意見の根拠となる事実を答えるとき、どうたどりますか
意見→推測→その推測を支える事実、とさかのぼる。
確認3:飛躍が「大きい」とはどういう状態ですか
推測を支える事実がない、または別の説明が可能な状態。
まとめと次の一歩
手順は、三つに分類、推測を事実と結ぶ、飛躍を判定、意見を支える事実を特定、の四段階です。表にすると、どの推測が弱いか、意見が何に支えられているかが見えます。
次のレッスンでは、事実・意見・推測の取り違えでよく起きる誤りを四つの型に分け、直せるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。