抽象表現を具体化しよう:根拠のずれを直す
このレッスンの役割
具体化の誤りは、要素の欠落、話題は同じだが無関係、反例を例にする、抽象のまま、の四つに分けられます。ここでは、それぞれを型に分け、直します。選択問題の誤った選択肢は、この四つの型で作られています。
今回の中心技能は、具体化の答案や選択肢を見て四つの型のどれかを言い、直せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「便利さは人から何かを奪う」の例として、「スマートフォンは便利で、調べ物がすぐできる」と答えた人がいます。どこで誤ったのでしょうか。
「便利」は入っていますが、「奪う(使わなくなる能力)」がありません。要素の欠落、型①です。「スマートフォンで調べられるので、覚えようとしなくなった」なら、奪う要素が入ります。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 要素の欠落 | 抽象の要素の一部が例にない | 便利さだけで「奪う」がない | 要素表を作り、全部入れる |
| ② 話題は同じだが無関係 | 同じ物事の話だが、抽象の内容と対応しない | 「スマートフォンの電池が切れた」 | 要素に対応する内容に替える |
| ③ 反例を例に | 抽象を否定する内容 | 「スマートフォンを使っても暗算の力は落ちなかった」 | 抽象を肯定する内容に |
| ④ 抽象のまま | 例になっていない(別の抽象) | 「便利なものは人をだめにする」 | 固有の場面・行動・数値に下りる |
型①を直す:要素表
| 要素 | 便利なもの | 奪われる能力 | 使わなくなる |
|---|---|---|---|
| 誤り | スマートフォン | (なし) | (なし) |
| 直し | スマートフォン | 覚える力 | 覚えようとしなくなった |
型②を直す:対応の確認
| 答案 | 抽象との対応 | 判定 |
|---|---|---|
| スマートフォンの電池が切れた | 「奪う能力」に対応する内容がない(不便の話) | 型② |
| 地図アプリで道を覚えなくなった | 便利=アプリ、奪われる=道を覚える | 直し |
話題(スマートフォン)が同じでも、抽象の内容と対応していなければ例ではありません。
型③を直す:向きの確認
| 答案 | 向き | 判定 |
|---|---|---|
| 計算機を使っても暗算の力は落ちなかった | 「奪わない」→ 反例 | 型③ |
| 計算機に頼って暗算をしなくなった | 「奪う」→ 例 | 直し |
反例は「当てはまらない例を選べ」の答えになります。設問を見ます。
型④を直す:下りる
| 答案 | 抽象度 | 判定 |
|---|---|---|
| 便利なものは人をだめにする | 高い(別の抽象) | 型④ |
| 技術は人の能力を弱める | 高い | 型④ |
| 自動車に乗るようになって、駅まで歩く体力が落ちた | 低い(場面・行動) | 直し |
「〜は〜だ」の一般論は例ではありません。「誰が、いつ、何をして、どうなった」まで下ります。
例題:どの型か
「既知の枠」の例として「新しいことを学ぶのは大切だ」と答えた。
型④。抽象のまま。「初めて聞いた音楽を『〇〇風だ』と言った」のように下りる。
「小さな譲歩」の例として「庭の草を全部きれいに刈った」と答えた。
型③。生き物の居場所を残していない(反例)。
よくある間違い
話題の語が入っていれば例だと思う
「スマートフォン」が入っていても、要素が対応しなければ例ではありません。
筆者の意見の言い換えを例だと思う
言い換えは抽象です。例は場面に下ります。
「当てはまらないものを選べ」で反例を落とす
設問が「当てはまらないもの」なら、反例が答えです。
自分で確かめよう
確認1:「スマートフォンは便利で調べ物がすぐできる」の誤りの型と直し方
型①(要素の欠落)。「調べられるので覚えようとしなくなった」と「奪う」を加える。
確認2:「便利なものは人をだめにする」が例にならない理由と型
抽象のまま(型④)。場面・行動に下りる。
確認3:型②(話題は同じだが無関係)を見つける確かめ方
抽象の各要素に対応する内容が例にあるか(話題の語だけでは不十分)。
まとめと次の一歩
具体化の誤りは、要素の欠落、話題は同じだが無関係、反例、抽象のまま、の四つに分けられます。要素表、対応の確認、向きの確認、下りる、で直します。
次のレッスンでは、入試形式の「当てはまる例を選べ」「例を挙げよ」で、具体化を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。