根拠と具体例の違い:根拠のずれを直す
このレッスンの役割
根拠と具体例の取り違えは、例を別の主張に対応させる、例だけで証明したと見なす、理由と例を混同する、例が反例になっている、の四つに分けられます。ここでは、それぞれを型に分け、直します。
今回の中心技能は、例と主張の組を見て四つの型のどれかを言い、直せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「望遠鏡に頼れば肉眼で星を探さなくなる」が支える主張を、「道具は人の能力を広げる」と答えた人がいます。どこで誤ったのでしょうか。
例の要素は「使わなくなる」で、「広げる」ではありません。「拡張には代償がある」が対応します。例を別の主張に対応させた型①です。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 別の主張に対応 | 同じ話題の別の主張に例を付ける | 探さなくなる → 広げる | 要素の対応で主張を選び直す |
| ② 例だけで証明 | 一例で主張が証明されたと見なす | 望遠鏡の例があるから道具は能力を広げる | 例は根拠の一つ。範囲を覆う数値・理由と組かを見る |
| ③ 理由と例の混同 | 「なぜなら」の後の例を理由と呼ぶ、または理由を例と呼ぶ | 「なぜなら、望遠鏡は〜」を理由と答える | 理由は理屈(抽象)、例は出来事(具体) |
| ④ 反例 | 主張を否定する例を支えと見なす | 「自動車に頼れば歩かなくなる」を「広げる」の例に | 例の向きを確かめる。反例は別の主張(代償)の例 |
型①を直す:要素の照合
| 例 | 要素 | 広げる | 代償 |
|---|---|---|---|
| 目の届く範囲を広げた | 広げる | ○ | × |
| 肉眼で探さなくなる | 使わなくなる | × | ○ |
型②を直す:例の位置づけ
| 文章 | 判定 |
|---|---|
| 望遠鏡の例だけ → 道具は能力を広げる | 一例のみ。範囲が狭い(前のセクションの型①) |
| 望遠鏡・自動車・計算機の例+「道具の発明が多い時代ほど活動範囲が広がった」という調査 | 複数の例+数値で範囲を覆う |
例は「意味を分からせる」役割が主で、「正しいと思わせる」には他の根拠と組になる必要があります。
型③を直す:理由と例の形
| 形 | 種類 | 例 |
|---|---|---|
| 〜からだ(抽象の理屈) | 理由 | 内容を自分の言葉に直すからだ |
| 〜という出来事(具体) | 例 | ある学生は一週間後も要点を言えた |
| なぜなら+出来事 | 例(「なぜなら」があっても出来事なら例) | なぜなら、望遠鏡は見えない星を見せたからだ |
「なぜなら」の後が出来事なら、それは例です。設問「理由を答えよ」には理屈の文を答えます。
型④を直す:向きの確認
| 例 | 主張 | 向き |
|---|---|---|
| 自動車は足の届く範囲を広げた | 能力を広げる | ○(支える) |
| 自動車に頼れば歩かなくなる | 能力を広げる | ×(反例。「代償」の例) |
例が主張を否定していないかを確かめます。反例は、別の主張(対立する主張)の例です。
例題:どの型か
「読書は語彙を増やす。なぜなら、ある生徒は一年で五十冊読み、語彙テストの点が上がったからだ」で、理由を「ある生徒が五十冊読んで点が上がったこと」と答えた。
型③。出来事なので例。理由は「多様な言葉に触れるから」のような理屈。本文に理屈がなければ「理由は示されていない」と答える。
「祭りは住民のつながりを強める」の例として「祭りの準備が負担で参加をやめた人がいる」を挙げた。
型④。つながりを弱める反例。
よくある間違い
同じ話題の語(望遠鏡)があれば対応していると思う
要素(広げる/使わなくなる)で対応を決めます。
例があれば主張は証明されたと思う
例は意味を示す役割が主です。証明には範囲を覆う根拠が要ります。
「なぜなら」の後を全部「理由」と答える
出来事なら例です。設問の「理由」は理屈を求めています。
自分で確かめよう
確認1:「肉眼で探さなくなる」→「能力を広げる」の誤りの型と直し方
型①。要素「使わなくなる」が対応する「代償がある」に直す。
確認2:「なぜなら、ある生徒は五十冊読んで点が上がったからだ」は理由ですか例ですか
例(出来事)。理由は理屈の文。
確認3:例が反例かどうかを確かめる方法
例が主張を否定していないか(向き)を確かめる。
まとめと次の一歩
根拠と例の誤りは、別の主張に対応、例だけで証明、理由と例の混同、反例、の四つに分けられます。要素の照合、例の位置づけ、理由と例の形、向きの確認、で直します。
次のレッスンでは、入試形式の「この例はどの主張をどのように支えるか」「理由と例を区別せよ」で、根拠と具体例の判断を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。