具体と抽象:関係の取り違えを直す
このレッスンの役割
具体と抽象の取り違えは、「筆者の考え」に具体例を答える、「どういうことか」に一つの例を写す、という形で現れます。ここでは、よく起きる誤りを四つの型に分け、直します。
今回の中心技能は、誤答を見て「具体を主張と見なした」「共通点が狭すぎる・広すぎる」「因果と混同した」「段を飛ばした」のどれかを言い、直せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「彼は誠実な人だ。約束の時間には必ず来る。借りた物は翌日に返す」で、「誠実とはどういうことか」に「約束の時間に必ず来ること」と答えた人がいます。どこで誤ったのでしょうか。
一つの具体を写しています。「翌日に返す」にも当てはまる共通点「当たり前のことをきちんと守ること」まで抽象化していません。共通点が狭すぎる型②です。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 具体を主張と見なす | 「たとえば」の中身を筆者の考えにする | 主張=席をゆずるべきだ | 「つまり」「このように」の後、抽象の文が主張 |
| ② 共通点が狭すぎる・広すぎる | 一つの例の写し/何にでも当てはまる言葉 | 誠実=必ず来る/誠実=良い人 | 全部に当てはまり他と区別できる言葉 |
| ③ 因果と混同する | 具体→抽象を原因→結果と見なす | 席をゆずったから親切になった | 具体は抽象の「例」であって「原因」ではない |
| ④ 段を飛ばす | 遠すぎる抽象で答える | 水墨画→日本文化 | 隣の段(余白を大切にする)で答える |
型①を直す:主張の位置
| 合図 | 位置 |
|---|---|
| たとえば、具体的には | 具体(主張ではない) |
| つまり、このように、要するに | 抽象(主張の候補) |
| 〜べきだ、〜と考える | 主張 |
型②を直す:ちょうどよい共通点
| 具体 | 狭すぎ | 広すぎ | ちょうどよい |
|---|---|---|---|
| 必ず来る、翌日に返す、すぐに謝る | 時間に正確 | 良い人 | 当たり前のことをきちんと守る |
| 描かない部分、止めた瞬間、言わない部分 | 絵の余白 | 芸術 | 何もしない部分に意味を持たせる |
| 専門外の本、異世代の人 | 読書家 | 立派 | 自分の範囲の外に目を向ける |
型③を直す:例と原因の区別
| 文 | 関係 | 理由 |
|---|---|---|
| 彼は親切だ。たとえば席をゆずる | 抽象←具体 | 席をゆずるのは親切の「例」 |
| 彼は席をゆずった。だから感謝された | 原因→結果 | ゆずったから感謝が「起きた」 |
「たとえば」なら例、「だから」「ので」なら因果。具体は抽象を引き起こしません。
型④を直す:隣の段
| 具体 | 飛ばしすぎ | 隣の段 |
|---|---|---|
| 水墨画の余白 | 日本文化 | 余白を大切にする |
| 席をゆずる | 道徳 | 困っている人を助ける |
| 必ず来る | 人格 | 当たり前のことを守る |
設問「まとめて何というか」「どういうことか」には、隣の段で答えます。
例題:どの型か
「余白を大切にする」の意味を「水墨画で描かない部分があること」と答えた。
型②(狭すぎ)。「能」「和歌」にも当てはまる「何もしない部分に意味を持たせる」まで抽象化する。
「人は困っている人に手を差し伸べる。たとえば席をゆずる」で、筆者の主張を「席をゆずるべきだ」とした。
型①。主張は抽象の文「手を差し伸べる」。
よくある間違い
具体例が印象的なので主張だと思う
具体例は材料です。主張は抽象の側。
共通点を「良い」「大切」で済ませる
広すぎて他と区別できません。具体の中身に即した言葉にします。
「たとえば」の後を「だから」のように読む
例は原因ではありません。矢印の名前が違います。
自分で確かめよう
確認1:「誠実=約束の時間に必ず来ること」の誤りの型と直し方
型②(狭すぎ)。「当たり前のことをきちんと守ること」に直す。
確認2:「たとえば」と「だから」の矢印の名前の違い
「たとえば」は抽象←具体、「だから」は原因→結果。
確認3:共通点が広すぎるとどうなりますか
他の性質と区別できず、答えにならない。
まとめと次の一歩
誤りは、具体を主張と見なす、共通点の狭すぎ・広すぎ、因果との混同、段の飛ばし、の四つに分けられます。主張の位置、ちょうどよい共通点、例と原因の区別、隣の段、で直せます。
次のレッスンでは、複数段落の論説文と入試形式の問題で、具体と抽象の往復を通して使います。
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