具体と抽象:二つの情報を正しく分ける
このレッスンの役割
論説文は、具体例を挙げながら抽象的な考えを述べます。どの情報が具体でどの情報が抽象かが分からないと、筆者の言いたいこと(抽象)と材料(具体)を取り違えます。ここでは、具体と抽象を見分ける核をつかみます。
今回の中心技能は、二つの情報のどちらが具体でどちらが抽象かを、合図の語と「〜など」テストで決められることです。目安時間は8分です。
今日の問い
人は困っている人を見ると手を差し伸べる。たとえば、重い荷物を持つ高齢者に声をかけたり、電車で席をゆずったりする。
どちらが具体で、どちらが抽象でしょうか。「声をかける」「席をゆずる」は目に見える個別の行動なので具体。「手を差し伸べる」は、それらに共通する性質をまとめた言い方なので抽象。「たとえば」が合図です。
具体と抽象の定義
| 用語 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 具体 | 個別の出来事・物・人・数値 | 目に見える、一つを指す、固有名詞や数字がある |
| 抽象 | 複数の具体に共通する性質をまとめたもの | 目に見えにくい、多くに当てはまる、「〜ということ」の形になりやすい |
矢印は「抽象 ← 具体」。具体が抽象を支える(説明する)向きです。
見分ける手掛かり
| 手掛かり | 具体 | 抽象 |
|---|---|---|
| 合図の語(前) | たとえば、具体的には、実際に | つまり、要するに、このように、一般に |
| 合図の語(後) | 〜など、〜といった | 〜ということ、〜という性質 |
| 言葉の種類 | 固有名詞、数字、動作 | 性質、傾向、概念 |
| 「〜など」テスト | 後ろに「など」を付けて自然 | 「など」を付けると不自然 |
「席をゆずるなど」は自然(具体)。「手を差し伸べるなど」はやや不自然(抽象)。
具体と抽象は相対的
| 抽象 ← 具体 |
|---|
| 生き物 ← 動物 ← 犬 ← 柴犬 |
| 親切 ← 手を差し伸べる ← 席をゆずる |
「手を差し伸べる」は、「席をゆずる」より抽象で、「親切」より具体です。「何と比べて」で決まります。
例題:分ける
日本の伝統文化には、余白を大切にするものが多い。水墨画では描かない部分が景色を作り、能では動きを止めた瞬間が感情を伝える。
| 情報 | 判定 |
|---|---|
| 余白を大切にするものが多い | 抽象 |
| 水墨画では描かない部分が景色を作る | 具体 |
| 能では動きを止めた瞬間が感情を伝える | 具体 |
合図はありませんが、「水墨画」「能」は固有の芸術で個別、「余白を大切にする」は共通の性質です。
よくある間違い
難しい語=抽象だと思う
「水墨画」は難しい語でも具体(個別の芸術)です。個別か共通かで決めます。
具体と抽象を固定して考える
「手を差し伸べる」は相手によって具体にも抽象にもなります。
合図がないと見分けられないと思う
固有名詞・数字・動作は具体、性質・傾向は抽象。言葉の種類で決まります。
自分で確かめよう
確認1:具体と抽象を見分ける「など」テスト
後ろに「など」を付けて自然なら具体、不自然なら抽象。
確認2:「たとえば」と「つまり」の後に来るのはそれぞれどちらですか
「たとえば」の後は具体、「つまり」の後は抽象。
確認3:「水墨画では描かない部分が景色を作る」は具体と抽象のどちらですか
具体(個別の芸術の個別の様子)。
まとめと次の一歩
具体は個別の出来事・物、抽象はそれらに共通する性質のまとめです。合図の語、言葉の種類、「など」テストで見分け、関係は相対的です。
次のレッスンでは、文章の中で具体と抽象を対応させ、矢印で表す手順を一行ずつ使えるようにします。
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