発信者と出典を確かめよう:複数資料・入試で判断する
このレッスンの役割
ここは「発信者と出典を確かめよう」の出口です。四種類の発信者、出典の三点、四段階の手順、誤りの四つの型を、複数の資料を読む入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、資料の発信者を分類し、出典の不足を指摘し、知る立場を判定し、使える範囲を記述することです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
発信者と出典は、四つの形で出ます。
- 分類:「各資料の発信者を、当事者・専門機関・報道・個人に分けよ」
- 不足の指摘:「出典として不十分な資料を選び、何が欠けているか書け」
- 立場の判定:「資料Bの発信者が〜について述べることが適切でない理由を書け」
- 範囲の記述:「資料Aを根拠にするとき、どこまで言えるか書け」
総合問題
「中学生の運動不足」について調べた生徒が集めた四つの資料を読んで、あとの問いに答えなさい。
【資料A】スポーツ庁「全国体力・運動能力調査」(令和五年度、公式サイト) 「中学二年生のうち、一週間の運動時間が六十分未満の生徒は、男子八・五%、女子二十一・三%であった。」
【資料B】人気動画配信者「けんた」の動画(投稿日不明) 「最近の中学生は本当に運動しない。僕が中学の頃は毎日外で遊んでいた。スマホのせいだと思う。」
【資料C】○○新聞(令和五年十二月十五日) 「スポーツ庁の調査によると、運動時間が週六十分未満の中学二年生の割合は女子で二割を超えた。専門家は『部活動以外の運動機会の減少が背景にある』と指摘する。」
【資料D】ある整形外科医のブログ(令和四年三月) 「運動不足の中学生は将来の骨の健康に問題を抱えやすい。私の診療経験でも、運動習慣のない若者に骨密度の低い例が目立つ。」
問1
資料A〜Dの発信者を、当事者(調査主体)・専門機関/専門家・報道・個人に分類しなさい。
問2
出典として不十分な資料を一つ選び、出典の三点のうち何が欠けているかを書きなさい。
問3
資料Bの「スマホのせいだと思う」を根拠として使えない理由を、「知る立場」という言葉を使って四十字以内で書きなさい。
問4
資料Dを根拠にするとき、どこまで言えるかを五十字以内で書きなさい。
答えと判断
問1
A:当事者(調査主体の公的機関)。B:個人。C:報道。D:専門家(医師、自分の診療経験について)。
問2
資料B。日付が欠けている(投稿日不明)。発信者名も通称のみで、責任の所在が不明。
問3
「配信者は中学生の運動と原因を調べる知る立場になく、個人の推測にすぎないから。」(三十八字)。
問4
「整形外科医の診療経験の範囲では、運動習慣のない若者に骨密度の低い例が見られる、ということまで。」(四十八字)。「運動不足の中学生は将来問題を抱える」という一般化は、一人の医師の経験の範囲を超える。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1でCを当事者 | 媒体と発信者の取り違え(Cは調査を伝えた報道) | 印象に流された判断を直す(型①) |
| 問1でDを当事者 | 診療経験は専門家の観察で、調査主体ではない | 確かめる観点をつかむ(四種類) |
| 問2でD | Dは名前(整形外科医)と日付がある。Bの方が欠けている | 出典・根拠を手順で調べる(段階2) |
| 問3で「有名人だから」 | 肩書きでなく知る立場で説明していない | 出典・根拠を手順で調べる(段階3) |
| 問4で「将来骨に問題がある」 | 範囲を超えて一般化 | 出典・根拠を手順で調べる(段階4) |
四つの資料の表
| 資料 | 発信者 | 種類 | 名前 | 日付 | 場所 | 知る立場 | 使える範囲 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | スポーツ庁 | 当事者 | ○ | ○ | ○ | ○ | 調査結果の数値 |
| B | けんた | 個人 | △ | × | ○ | ×(原因) | 本人の感想のみ |
| C | ○○新聞 | 報道 | ○ | ○ | ○ | ○(Aを伝える) | Aの要約と専門家の指摘(名前なしに注意) |
| D | 整形外科医 | 専門家 | △(匿名の可能性) | ○ | ○ | ○(診療の範囲) | 診療経験の範囲 |
資料Cの「専門家は〜と指摘」は、名前のない出典(型③)です。Cの中でも、調査の数値は使え、専門家の指摘は条件つきです。
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 伝えた媒体と発信者を分けたか | C=報道、A=当事者 |
| 出典の三点を資料ごとに埋めたか | Bの日付 |
| 「知る立場」を内容ごとに判定したか | Bの原因、Dの一般化 |
| 使える範囲を「〜まで」で書いたか | Dの診療経験の範囲 |
よくある間違い
公的機関の資料Aを「古いかもしれない」で下げる
日付(令和五年度)が明記されています。確かめられる出典は最も使えます。
資料Dを「ブログだから」で捨てる
媒体で決めず、発信者(医師)と内容(診療経験)を見ます。範囲を限れば使えます。
資料Cの専門家の指摘をそのまま根拠にする
名前がありません。「新聞が引用した専門家の指摘」として条件つきで扱います。
自分で説明しよう
確認1:発信者の四種類と、それぞれが信頼できる範囲
当事者(一次情報、目的に注意)、専門機関・専門家(専門の範囲)、報道(出典を示す、見出しに注意)、個人(体験・感想、責任不明)。
確認2:出典の三点と、欠けたときの判定
名前・日付・場所。一つでも欠ければ条件つき以下。
確認3:「使える範囲」の書き方
「〜の範囲では、〜ということまで」と、発信者が知る立場にある内容に限って書く。
セクションの出口
複数の資料の発信者を四種類に分け、出典の三点の不足を指摘し、知る立場を内容ごとに判定し、使える範囲を「〜まで」で書けたら完了です。
次のセクション「目的と対象を読み取ろう」では、五つの問いの②「何のために」を深め、知らせる・説得する・売るという目的と、想定される読み手が情報の形をどう変えるかを扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。