目的と対象を読み取ろう:複数資料・入試で判断する
このレッスンの役割
ここは「目的と対象を読み取ろう」の出口です。四つの目的、対象の手掛かり、四段階の手順、誤りの四つの型を、複数の資料を読む入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、資料の目的を分類し、省かれた情報を指摘し、同じ事実の見せ方の違いを説明し、目的を踏まえた使える範囲を書くことです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
目的と対象は、四つの形で出ます。
- 分類:「各資料の目的を、知らせる・説得する・売る・楽しませるに分けよ」
- 省略の指摘:「資料Aで省かれている情報を書け」
- 見せ方の比較:「資料BとCは同じ数値をどのように違って見せているか説明せよ」
- 範囲の記述:「資料Aを根拠にするとき、目的を踏まえてどこまで言えるか書け」
総合問題
「市営プールの利用料値上げ」について集めた四つの資料を読んで、あとの問いに答えなさい。
【資料A】市の広報(九月号) 「老朽化した設備の更新のため、十月一日から市営プールの利用料を大人四百円から六百円に改定します。中学生以下は据え置きです。」
【資料B】市民団体のチラシ 「突然の五割値上げ!市民の健康の場を守れ。値上げ撤回を求める署名にご協力ください。私たちの声を市に届けましょう。」
【資料C】○○新聞の記事 「市は市営プールの大人料金を二百円引き上げる。市によると、設備更新に三年間で二億円が必要で、値上げ分は年間約三千万円の見込み。市民団体は撤回を求めている。」
【資料D】民間スポーツクラブの広告 「市営プールが値上げ?当クラブなら月額六千円で毎日泳げてジムも使い放題。今なら入会金無料!」
問1
資料A〜Dの目的を、知らせる・説得する・売る・楽しませるから選びなさい。
問2
資料Bと資料Cは、同じ値上げを「五割」と「二百円」と表しています。それぞれの目的から、なぜその表し方を選んだかを説明しなさい。
問3
資料Aで省かれている情報として、資料Cを読むと分かるものを一つ書きなさい。
問4
資料Dの「月額六千円で毎日泳げる」を、市営プールと比べる根拠にするとき、どこまで言えるかを五十字以内で書きなさい。
答えと判断
問1
A:知らせる(当事者の説明を含む)。B:説得する。C:知らせる。D:売る。
問2
Bは説得する目的なので、値上げの大きさを強く感じさせる「五割」(割合)を選んだ。Cは知らせる目的なので、金額そのものの「二百円」を選び、増収の見込みと団体の反対を並べている。同じ事実でも、割合は変化を大きく見せ、金額は実感に近い。
問3
値上げの理由の具体的な金額(設備更新に三年で二億円、値上げ分は年約三千万円)。Aは「老朽化した設備の更新のため」とだけ書き、金額を省いている。
問4
「月額六千円という料金までは言えるが、泳げる時間・回数の条件や、市営との設備の違いは不明。」(四十五字)。「毎日泳げる」の条件(営業時間、混雑)と、「今なら」の期限が省かれている。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1でAを説得する | 当事者の説明を含むが、文末・語は事実の報告 | 確かめる観点をつかむ(手掛かり) |
| 問1でDを知らせる | 形(情報提供)で決めた | 印象に流された判断を直す(型①) |
| 問2で「Bはうそ」 | 五割は正しい計算(二百÷四百)。見せ方の違い | 印象に流された判断を直す(型②) |
| 問3で「中学生の料金」 | Aに書かれている(据え置き) | 出典・根拠を手順で調べる(段階3) |
| 問4で「民間の方が安い」 | 条件が省かれているのに比較した | 出典・根拠を手順で調べる(段階4) |
四つの資料の表
| 資料 | 目的 | 対象 | 選ばれた事実 | 省かれたもの |
|---|---|---|---|---|
| A | 知らせる | 市民 | 改定日、金額、中学生据え置き | 更新費用の金額 |
| B | 説得する | 市民 | 五割値上げ | 理由、据え置きの対象、金額 |
| C | 知らせる | 読者 | 二百円、費用、見込み、反対 | ― |
| D | 売る | プール利用者 | 月額、設備 | 条件、期限、市営との設備の違い |
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 目的を形でなく語・数字・呼びかけで決めたか | Dの「今なら」 |
| 割合と金額の違いを目的と結びつけたか | B五割、C二百円 |
| 省かれたものを他の資料と照らして見つけたか | Aの金額をCで補う |
| 売る目的の資料も事実の部分は使ったか | Dの月額 |
よくある間違い
市民団体のチラシを「うそ」と書く
五割は計算として正しい。説得の目的で割合を選び、理由と据え置きを省いた、と書きます。
広報を「市の宣伝」として下げる
広報は当事者の説明を含みますが、ここでは事実の報告が中心です。省かれた金額は指摘しつつ、事実は使います。
「毎日泳げる」をそのまま比較に使う
条件が不明です。「〜は不明」を添えて範囲で書きます。
自分で説明しよう
確認1:四つの目的と、それぞれが省きやすいもの
知らせる(背景・原因)、説得する(反対の根拠)、売る(分母・条件・期限)、楽しませる(正確さ)。
確認2:同じ値上げを「五割」と「二百円」で表す違い
割合は変化を大きく見せ(説得向き)、金額は実感に近い(知らせる向き)。
確認3:目的を踏まえた「使える範囲」の書き方
事実の部分を使い、「〜は不明」と省かれたものを添える。
セクションの出口
複数の資料の目的を手掛かりで分類し、同じ事実の見せ方の違いを目的と結びつけて説明し、省かれたものを他の資料で補い、範囲で書けたら完了です。
次のセクション「事実・意見・推測を分けよう」では、五つの問いの③「何を根拠に」の入口として、観察できる事実、価値判断を含む意見、証拠が不十分な推測を、本文の外の情報で区別します。
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