調査対象と偏り:複数資料・入試で判断する
このレッスンの役割
ここは「調査対象と偏り」の出口です。四つの問い、偏りの三か所、四段階の手順、誤りの四つの型を、複数の調査を比べる入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、最も全体を代表する調査を選び、偏りの場所を指摘し、質問文の問題を指摘し、結果を範囲を限って書くことです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
調査対象と偏りは、四つの形で出ます。
- 選択:「町民全体の意見を知る資料として最も適切な調査を選べ」
- 偏りの指摘:「資料Bの調査方法の問題点を書け」
- 質問文:「資料Cの質問が適切でない理由を書け」
- 範囲の記述:「資料Aの結果から言えることを、範囲を限って書け」
総合問題
「市民会館を建て替えるべきか」について、三つの調査結果が示されました。資料を読んで、あとの問いに答えなさい。
【資料A】市が住民基本台帳から無作為に三千人を選んで郵送した調査(回答千三百五十人、回答率四十五%) 質問「市民会館の建て替えについて、どう考えますか」 賛成 三十八%、どちらかといえば賛成 二十四%、どちらかといえば反対 十八%、反対 十二%、分からない 八%
【資料B】市民会館の利用者に、会館の受付で配布したアンケート(回答四百二十人) 質問「市民会館の建て替えについて、どう考えますか」 賛成 七十一%、どちらかといえば賛成 十九%、どちらかといえば反対 六%、反対 三%、分からない 一%
【資料C】建て替え反対の市民団体がSNSで行った投票(回答二千八百人) 質問「五十億円もの税金を使う市民会館の建て替えは必要ですか」 必要 十二%、不要 八十八%
問1
市民全体の意見を知る資料として最も適切なものを選び、理由を「選び方」の語を使って書きなさい。
問2
資料Bの結果を市民全体の意見として使えない理由を、偏りの場所を示して書きなさい。
問3
資料Cの質問が適切でない理由を書きなさい。
問4
資料Aの結果から言えることを、回答率に触れて五十字以内で書きなさい。
答えと判断
問1
資料A。住民基本台帳から無作為に選んでいるので、対象の選び方が市民全体を代表している。質問も中立。
問2
対象の選び方の偏り。市民会館の利用者だけに聞いているので、会館を使う人(建て替えに賛成しやすい人)に偏り、使わない市民の意見が入っていない。
問3
「五十億円もの税金を使う」という評価の語(「もの」は多さの強調)が入っていて、不要と答えるよう誘導している。また「必要・不要」の二択で中間の選択肢がない。SNSの自由参加で、反対団体の支持者が答えやすい点も偏り。
問4
「回答した千三百五十人の中では、賛成寄りが六十二%だったが、回答率四十五%のため全市民の傾向とは断定できない。」(五十字)。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1で資料C(二千八百人) | 人数で代表性を判断 | 印象に流された判断を直す(型①) |
| 問2で「人数が少ない」 | 四百二十人は少なくない。問題は選び方 | 確かめる観点をつかむ(三か所) |
| 問3で「反対団体だから」だけ | 質問文の誘導を指摘していない | 印象に流された判断を直す(型③) |
| 問4で「市民の六割が賛成」 | 回答率に触れず範囲を限っていない | 出典・根拠を手順で調べる(段階4) |
| 資料Bを「うそ」と書く | 偏りで全部捨てる | 印象に流された判断を直す(型④) |
三つの調査の表
| 問い | 資料A | 資料B | 資料C |
|---|---|---|---|
| 誰を | 市民 | 会館の利用者 | SNSの閲覧者 |
| どう選んで | 無作為 | 利用者のみ | 自由参加 |
| 何人に | 三千人中千三百五十人(四十五%) | 四百二十人(配布数不明) | 二千八百人 |
| どう聞いたか | 中立、五択 | 中立、五択 | 誘導、二択 |
| 選び方の偏り | ○ | × | × |
| 回答者の偏り | △(回答率四十五%) | △ | × |
| 質問の偏り | ○ | ○ | × |
| 使える範囲 | 回答者の中では(全体に近い) | 利用者の中では | 投票した人の中では(参考) |
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 人数でなく選び方で代表性を判断したか | A無作為、C自由参加 |
| 偏りの場所を名前で書いたか | Bは対象の選び方 |
| 質問文の評価の語と選択肢を見たか | Cの「もの」、二択 |
| 回答率に触れて範囲を限ったか | Aの四十五% |
よくある間違い
回答数が最も多い資料Cを選ぶ
二千八百人でも自由参加で誘導質問。代表性は選び方と質問で決まります。
資料Bの七十一%を「市民の七割」と読む
利用者の中では七十一%。使わない市民の意見が入っていません。
資料Aを「回答率が低いから使えない」と捨てる
回答率四十五%は郵送調査としては低くない。範囲を限って使います。
自分で説明しよう
確認1:調査を見る四つの問いと、偏りの三か所
誰を・どう選んで・何人に・どう聞いたか。対象の選び方・回答する人・質問の仕方。
確認2:結果を全体へ広げてよい三つの条件
対象が全体を代表している(無作為か全員)、回答率が十分、質問が中立。
確認3:偏りのある調査の使い方
「〜の中では」と範囲を限って使う。捨てない。
セクションの出口
複数の調査を四つの問いで比べ、選び方で代表性を判定し、偏りの場所と質問文の問題を指摘し、回答率に触れて範囲を限って書けたら完了です。
次のセクション「数字・割合・グラフの見せ方」では、調査結果の数字そのものの見せ方(母数・割合・軸・期間・比較対象)が印象をどう変えるかを扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。