情報の信頼性マスターチェック:複数資料・入試で判断する
このレッスンの役割
ここは「情報の信頼性」コースの出口です。五つの問い、統合手順、四つの大きな型を、一組の資料と七つの設問で通して使います。
中心技能は、複数の資料に対して、発信者の分類、事実と推測の区別、見せ方の指摘、根拠の判定、食い違いの理由、足りない情報、出典つきの意見文を、統合手順の表から取り出して答えることです。目安時間は12分です。
入試でどう出るか
このコースの技能は、一つの話題に複数の資料が並び、複数の設問が続く形で出ます。資料を一度通して統合手順の表を作り、各設問で問いを決めて表から材料を取り出します。
総合問題
「中学生のスマートフォン利用と睡眠」について集めた五つの資料を読んで、あとの問いに答えなさい。
【資料A】文部科学省の調査(令和五年度、全国の中学三年生) 「平日にスマートフォン等を四時間以上使う生徒は十六・八%。睡眠時間が六時間未満の生徒は八・三%。」
【資料B】○○新聞の記事(令和六年二月) 「スマホ四時間超の中学生、睡眠不足が深刻。文科省の調査では、スマホを四時間以上使う生徒の割合が前年より一・二ポイント増えた。専門家は『利用時間を制限する家庭のルールが必要』と話す。」
【資料C】睡眠サプリメントの広告 「スマホで眠れない中学生が急増!当社調べで利用者の八十九%が『寝つきが良くなった』と回答。今なら初回半額。」
【資料D】保護者のSNS投稿 「うちの子、スマホを取り上げたら睡眠時間が二時間延びた。スマホが原因なのは間違いない。全家庭で取り上げるべき。」
【資料E】生徒の体験談(学校新聞) 「寝る前にスマホを見ると寝つきが悪い気がする。でも部活で帰りが遅い日は、スマホを見なくても寝るのが遅い。」
問1
資料A〜Eの発信者を、当事者(調査主体)・報道・利害関係のある発信者・個人に分けなさい。
問2
資料Bの見出し「スマホ四時間超の中学生、睡眠不足が深刻」は、資料Aのどの部分をどのように見せていますか。「切り取り」「感情の語」の観点から書きなさい。
問3
資料Dの「スマホが原因なのは間違いない」を事実・意見・推測のどれかに分け、資料Eを使ってその判断の問題点を書きなさい。
問4
資料Cの「八十九%が寝つきが良くなった」を根拠として使えない理由を、二つの観点から書きなさい。
問5
資料Aから「スマートフォンの利用が睡眠不足の原因である」と言えるかどうかを、「相関」「因果」の語を使って書きなさい。
問6
「スマートフォンの利用が睡眠時間を減らすかどうか」を判断するために、さらに必要な情報を、対象と比較の方法が分かるように書きなさい。
問7
資料Aを出典を示して引用し、中学生のスマートフォン利用について自分の考えを百字程度で書きなさい。
答えと判断
問1
A:当事者(調査主体)。B:報道。C:利害関係のある発信者(販売者)。D・E:個人(Dは保護者の体験と意見、Eは生徒の体験)。
問2
資料Aは「四時間以上使う生徒十六・八%」と「睡眠六時間未満八・三%」を別々の数値として示しているだけで、両者の関係は書いていない。見出しは二つを結びつけて「スマホ四時間超の中学生が睡眠不足」のように見せ(切り取りと関係の追加)、「深刻」という評価の語を足している。
問3
推測(「間違いない」は断定の形をした推測で、一人の体験から原因を決めている)。資料Eでは、スマホを見なくても部活で帰りが遅い日は寝るのが遅く、睡眠時間には帰宅時間など別の原因もありうる。Dは第三の原因を排除しておらず、一人の例を「全家庭」に広げている。
問4
利害関係:サプリメントを売る目的の「当社調べ」で、第三者の確認がない。母数・条件:回答者数、質問の文、比較対象(使わなかった人)が不明で、「寝つきが良くなった」は感想で確かめられない。
問5
言えない。資料Aは利用時間と睡眠時間をそれぞれ集計した数値で、同じ生徒について両方を調べた相関すら示されていない。因果を言うには、相関に加えて、他の原因(帰宅時間、部活動など)を排除した比較が必要である。
問6
同じ中学生について、スマートフォンの利用時間と睡眠時間を同時に調べ、帰宅時間や部活動の有無など他の条件が同じ生徒どうしで比べた調査。または、利用時間を制限した生徒と制限しなかった生徒の、制限前後の睡眠時間の変化。
問7
「文部科学省の令和五年度の調査によれば、全国の中学三年生のうち平日にスマートフォン等を四時間以上使う生徒は十六・八%である。私は、利用時間が長い生徒が一定数いることは確かだが、睡眠への影響は他の要因と合わせて調べる必要があると考える。」(百十字程度)
誤答を診断する
| 誤答 | 大きな型 | 小さな型 | 戻るセクション |
|---|---|---|---|
| 問1でBを当事者 | ④ | 二次を一次と思う | 発信者と出典、一次情報と二次情報 |
| 問2で「見出しはAを要約している」 | ① | 見出しを要約と思う | 写真・見出し・切り取り |
| 問3で「事実」 | ④ | 断定の推測を事実に | 事実・意見・推測 |
| 問3でEを「気がする、だから無視」 | ② | 推測を全部捨てる | 事実・意見・推測、不足している情報 |
| 問4で「広告だから全部うそ」 | ② | 売る=全部うそ | 目的と対象、広告・SNS |
| 問5で「十六・八%と八・三%が近いから因果がある」 | ③ | 相関(すら)を因果に | 根拠は主張に合っているか |
| 問6で「もっと調査する」 | ④ | 抽象的に書く | 不足している情報 |
| 問7で「調査によると」 | ④ | 出典なし | 出典を示して情報を使おう |
統合手順の表
| 資料 | 発信者 | 目的 | 段 | 事実 | 推測・主張 | 見せ方 | 確かさ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 文科省 | 知らせる | 一次 | 十六・八%、八・三%(別々) | ― | ― | 高 |
| B | 新聞 | 知らせる | 二次 | 一・二ポイント増 | 専門家(名前なし) | 見出しで結びつけ、「深刻」 | 数値は高、見出しは低 |
| C | 販売者 | 売る | ― | (なし) | 八十九%(当社調べ) | 急増、今なら | 低 |
| D | 保護者 | 意見 | 一次(体験) | 二時間延びた(一人) | 原因は間違いない、全家庭で | 間違いない | 一件 |
| E | 生徒 | 体験 | 一次(体験) | 帰りが遅い日は遅い | 気がする | ― | 一件(第三の原因のヒント) |
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 発信者の種類と段を分けたか | Bは二次 |
| 見出しの切り取りと追加を元の資料と照らしたか | Aは別々の数値 |
| 断定の推測を事実にしていないか | D |
| 利害関係と母数の両方で広告を判定したか | C |
| 相関と因果を区別し、第三の原因を挙げたか | 帰宅時間 |
| 足りない情報を四つの要素で書いたか | 問6 |
| 出典の三点と「私は」を書いたか | 問7 |
よくある間違い
資料Aの二つの数値を関係があるものとして読む
別々の集計です。同じ生徒についての関係は示されていません。
資料Eを「気がする」だから価値がないとする
Eの「帰りが遅い日」は、第三の原因の具体例で、問3・問5・問6の材料になります。
資料Dの「全家庭で取り上げるべき」を意見だから無視する
意見は根拠を見る対象です。根拠が一人の体験で、範囲を広げすぎていると指摘します。
自分で説明しよう
確認1:五つの問いと判定の三段階
誰が・何のために・何を根拠に・どう見せているか・他はどう言うか。使える・条件つき・保留。
確認2:統合手順の四段階
発信者・目的・段の表、事実と確かさ、見せ方と共通・食い違い、設問から問いを決めて答案。
確認3:誤りの四つの大きな型と、判断前に問うこと
信じる(確かめる手段があるか)、否定する(事実の部分は何か)、広げすぎる(資料の範囲はどこまでか)、変える(元の資料と同じ意味か)。
コースの出口
一組の資料に対して、発信者の分類、事実と推測の区別、見せ方の指摘、根拠の判定、相関と因果の区別、足りない情報、出典つきの意見文を、統合手順の表から取り出して答えられたら、このコースは完了です。「言葉と情報」のパスはここで終わります。
ここまでの七つのコースで学んだ、言葉の意味・文の仕組み・情報の関係・敬語・抽象と具体と根拠・情報の信頼性は、次のパス「読む」で扱う説明文・論説文・物語・詩歌の読解の土台になります。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。