不足している情報を考えよう:確かめる観点をつかむ
このレッスンの役割
ここまでの各セクションで、「足りない情報」「省かれたもの」「必要な資料」を何度も書いてきました。このセクションでは、それを一つの技能にまとめます。入試の記述で最も配点が高いのは、「この資料だけでは判断できない。判断するには〜が必要だ」と書ける問題です。ここでは、足りない情報の四つの種類と、具体的に書く形をつかみます。
今回の中心技能は、足りない情報を四つの種類のどれかで言い、「何を・誰について・いつの・どう比べる」の形で書けることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「新しい通学路に変えてから一か月、事故はゼロ。だから新しい通学路は安全だ。」
判断するには何が足りないでしょうか。条件:事故の定義(けがのあった事故か、ヒヤリも含むか)。数値:変更前の同じ期間の事故件数。比較対象:変更前との比較、他の通学路との比較。反対意見:新しい通学路で危険だと感じた人の報告。四つ全部が足りません。「安全だ」と判断するには、少なくとも変更前の件数との比較が必要です。
足りない情報の四つの種類
| 種類 | 問い | 例 |
|---|---|---|
| 条件 | どんな場合の話か、定義は何か | 事故の定義、「睡眠不足」の基準、対象の範囲 |
| 数値 | 母数・人数・期間・割合の元の数 | 変更前の件数、回答者数、調査の期間 |
| 比較対象 | 何と比べて多い・少ない・良い・悪いのか | 変更前、全国平均、他校、推奨の基準 |
| 反対意見 | 別の立場・別の説明はあるか | 危険だと感じた人、別の原因の可能性、反対側の資料 |
四つは、これまでのセクションの技能に対応します。条件は「目的と対象」「切り取り」、数値は「数字の見せ方」「調査対象」、比較対象は「根拠は主張に合っているか」、反対意見は「複数の情報源」です。
主張の要素から逆算する
| 主張 | 要素 | 足りない情報 |
|---|---|---|
| 新しい通学路は安全だ | 安全(事故が少ない)、新しい(変更前より) | 変更前の件数(数値・比較対象)、事故の定義(条件) |
| 本校の生徒は読書が好きだ | 本校の生徒(全体)、好き | 全校の調査(数値)、「好き」の定義(条件)、他校との比較(比較対象) |
| このサプリで集中力が上がる | 集中力、上がる(使う前より) | 第三者の調査(反対意見)、使う前との比較(比較対象)、人数(数値) |
主張の要素を書き出し、各要素を支える資料があるかを問うと、足りないものが見えます。
具体的に書く形
| 要素 | 書き方 |
|---|---|
| 何を | 事故の件数、平均睡眠時間、成分の効果 |
| 誰について | 本校の生徒、同じ通学路を使う生徒、全国の中学生 |
| いつの | 変更前の同じ期間、令和五年度 |
| どう比べる | 変更前後で、全国平均と、使った人と使わない人で |
「もっと調べる」「詳しい情報」は不可。四つの要素を含めて書きます。
例題:四つの種類で見る
「市の人口は五年で三%減った。このままでは町が消える。」
| 種類 | 足りない情報 |
|---|---|
| 条件 | 「消える」の定義(人口がいくつになったら) |
| 数値 | 五年前と今の実数、年齢別の内訳 |
| 比較対象 | 県や全国の減少率、周辺の市の減少率 |
| 反対意見 | 減少が止まる要因(転入の増加など)の有無 |
「三%減」は事実ですが、「消える」までの飛躍を埋める情報が四種類とも足りません。
よくある間違い
「足りない」を「うそ」の意味で書く
足りないのは判断の材料で、資料の誤りではありません。「〜だけでは判断できない」と書きます。
一種類だけ書いて終わる
四つの種類を順に当てます。入試では二つ以上を求められることが多い。
「もっと調査が必要」と書く
何を・誰について・いつの・どう比べるを含めないと、得点になりません。
自分で確かめよう
確認1:足りない情報の四つの種類
条件、数値、比較対象、反対意見。
確認2:「変更後一か月、事故ゼロだから安全」に足りない情報を具体的に
変更前の同じ期間の、同じ通学路での事故件数(けがの有無を含む定義で)。
確認3:足りない情報を具体的に書くときに含める四つの要素
何を、誰について、いつの、どう比べる。
まとめと次の一歩
足りない情報は、条件・数値・比較対象・反対意見の四つの種類で、主張の要素から逆算して見つけます。書くときは、何を・誰について・いつの・どう比べるを含めます。
次のレッスンでは、主張と資料から足りない情報を四つの種類で洗い出し、優先順位をつけて書く手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。