情報の信頼性マスターチェック:出典・根拠を手順で調べる
このレッスンの役割
前のレッスンで五つの問いの一枚表を作りました。ここでは、複数の資料を読み始めてから設問に答えるまでを、五つの問いをつないだ一つの手順にします。本番ではこの手順を一回通すだけで、どの設問にも材料が揃います。
今回の中心技能は、「発信者・目的・段の表 → 事実と主張を分けて確かさを判定 → 見せ方を外して共通と食い違いを整理 → 設問から問いを決めて答案」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は10分です。
今日の問い
「市内の空き家対策」について: 【A】市の広報「市内の空き家は五年で一・八倍に増加。来年度から空き家の改修費を最大五十万円補助します。」 【B】不動産会社の広告「空き家が急増中!今が売り時。当社なら最短一週間で売却。相談件数、地域一位!」 【C】○○新聞「市の調査によると、市内の空き家は令和元年の二百十戸から令和六年には三百八十戸に増えた。市は改修補助を始めるが、専門家は『補助だけでは解決しない』と指摘する。」 【D】住民の投稿「隣の空き家、もう十年放置。市は何もしてくれない。危険すぎる。」
手順で通します。段階1:A市(当事者・知らせる・一次)、B不動産(売る・利害あり)、C新聞(報道・二次、元は市の調査)、D住民(個人・不満)。段階2:事実「二百十戸→三百八十戸(一・八倍)」はAとCで一致し市の調査が元。Bの「急増」「地域一位」は母数なし。Dの「十年放置」は一件の体験。段階3:Bの「今が売り時」、Dの「危険すぎる」は感情の語。共通する事実は戸数の増加。食い違う主張は市(補助で対応)、専門家(補助だけでは不十分)、D(何もしていない、は事実と食い違う)。段階4:設問に応じて答案。
手順を一行ずつ
| 段階 | 問い | すること | 今日の問いの場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | ①② | 各資料の発信者・目的・段を表にする | 下の表 |
| 2 | ③ | 事実と主張を分け、根拠の確かさを判定する | 戸数は一次で確か。急増・一位は母数なし |
| 3 | ④⑤ | 見せ方を外し、共通する事実と食い違いを整理する | 共通:増加。食い違い:対策の評価 |
| 4 | 設問次第 | 設問の形から問いを決めて答案を作る | 下の表 |
段階1の表
| 資料 | 発信者(種類) | 目的 | 段 | 利害関係 |
|---|---|---|---|---|
| A | 市(当事者) | 知らせる(施策を良く見せる面も) | 一次 | 一部あり |
| B | 不動産会社 | 売る | ― | あり |
| C | 新聞(報道) | 知らせる | 二次(元は市の調査) | なし |
| D | 住民(個人) | 不満の共有 | 一次(体験) | なし |
段階2の表
| 資料 | 事実 | 確かさ | 主張・推測 |
|---|---|---|---|
| A | 五年で一・八倍、補助最大五十万円 | 高(Cの実数と一致) | 補助で対応する |
| B | (なし。「急増」「一位」は母数なし) | 低 | 売り時、一週間で売却 |
| C | 二百十→三百八十戸、補助開始 | 高(市の調査) | 専門家「補助だけでは不十分」(名前なし) |
| D | 隣の空き家が十年放置 | 一件の体験 | 市は何もしていない(Aと食い違う)、危険 |
段階3の表
| 区分 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 見せ方 | B「急増中!」「今が」(感情・期待)、D「危険すぎる」(感情)、A「一・八倍」(割合のみ、実数はCで) | ― |
| 共通する事実 | 空き家が五年で二百十戸から三百八十戸に増えた | AとCが一致、一次は市の調査 |
| 食い違う事実 | D「市は何もしてくれない」とA「補助を始める」 | 時期(Dは過去十年、Aは来年度から)と立場 |
| 食い違う主張 | 市:補助で対応。専門家:補助だけでは不十分 | 立場 |
段階4:設問の形ごとの答案
| 設問 | 問い | 答案の作り方 |
|---|---|---|
| 最も信頼できる資料 | ①③ | A(またはCの数値部分)。当事者の調査で実数があり、出典が明記 |
| Bを根拠にできない理由 | ①②③ | 売る目的で利害関係があり、「急増」「一位」に母数・比較対象がない |
| AとDの食い違いの理由 | ⑤ | 時期(Dは過去の経験、Aは来年度の施策)と立場 |
| さらに必要な情報 | ⑤ | 空き家の実数の内訳(放置年数別)、補助を導入した他市の空き家数の前後の変化 |
| 資料を引用して考えを書く | 使う側 | 「市の調査(令和六年)によれば、空き家は二百十戸から三百八十戸に増えた。私は〜と考える」 |
よくある間違い
段階1を飛ばして内容だけ比べる
発信者と目的を書かないと、Bの「急増」とCの「増えた」の重みの違いが説明できません。
段階2でAの「一・八倍」を割合のまま使う
Cの実数(二百十→三百八十戸)に戻します。割合と実数の両方。
段階3でDを「感情的だから無視」する
「十年放置」は一件の事実で、足りない情報(放置年数別の内訳)のヒントになります。感情の語を外して事実の部分を残します。
自分で確かめよう
確認1:統合手順の四段階と対応する問い
発信者・目的・段(①②)、事実と確かさ(③)、見せ方と共通・食い違い(④⑤)、設問から問いを決めて答案。
確認2:Bの「空き家が急増中!相談件数、地域一位!」を根拠にできない理由
売る目的で利害関係があり、「急増」「一位」に母数と比較対象がなく、感情の語で急がせている。
確認3:Dの「市は何もしてくれない」とAの「補助を始める」の食い違いの理由
時期(Dは過去十年の経験、Aは来年度からの施策)と立場。
まとめと次の一歩
統合手順は、発信者・目的・段の表、事実と確かさ、見せ方と共通・食い違い、設問から答案、の四段階です。一度通せば、全ての設問の材料が揃います。
次のレッスンでは、コース全体で起きる誤りを四つの大きな型にまとめ、答案を直す手順を確かめます。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。