根拠は主張に合っているか:複数資料・入試で判断する
このレッスンの役割
ここは「根拠は主張に合っているか」の出口です。三つの条件、四段階の手順、誤りの四つの型を、主張と複数の資料を照らす入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、根拠として適切な資料を選び、不適切な資料の問題点を条件の名前で指摘し、比較対象の必要性を説明し、必要な資料を具体的に書くことです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
根拠の対応は、四つの形で出ます。
- 選択:「主張の根拠として最も適切な資料を選べ」
- 問題点:「資料Bを根拠とすることの問題点を書け」
- 比較:「資料Cだけでは『多い』と言えない理由を書け」
- 必要な資料:「主張を支えるためにさらに必要な資料を書け」
総合問題
生徒会が「本校の生徒は、朝食を食べない人が多く、授業への集中に影響している」と主張し、次の四つの資料を集めました。資料を読んで、あとの問いに答えなさい。
【資料A】本校の保健委員が一年生の二クラス(六十四人)に行ったアンケート(五月) 「朝食を『毎日食べる』七十二%、『週に数回食べない』二十%、『ほとんど食べない』八%。」
【資料B】ある健康食品会社のサイト 「朝食を食べると集中力が高まることは、多くの研究で明らかです。当社の朝食用シリアルは〜」
【資料C】文部科学省「全国学力・学習状況調査」(令和五年度)の質問紙調査 「中学三年生のうち、朝食を『毎日食べている』は八十一・二%、『あまり食べていない』『全く食べていない』の合計は六・一%。」
【資料D】本校の生徒の体験談 「朝食を抜いた日は、三時間目には頭がぼんやりして授業に集中できない。」
問1
「本校の生徒は朝食を食べない人が多い」の根拠として、最も適切な資料と、それだけでは不十分な点を書きなさい。
問2
資料Bを「集中に影響している」の根拠とすることの問題点を、「関係」「質」のどちらかの語を使って書きなさい。
問3
資料Aの「ほとんど食べない八%」だけでは「多い」と言えない理由を、資料Cを使って説明しなさい。
問4
「朝食を食べないことが授業への集中に影響している」を支えるために、さらに必要な資料を具体的に書きなさい。
答えと判断
問1
資料A。本校の生徒を対象に朝食の有無を直接尋ねているので関係○。不十分な点:一年生二クラス六十四人のみで、量が少なく、「本校の生徒」全体を代表しない(質・範囲)。全学年の調査が必要。
問2
質。健康食品会社は朝食用シリアルを売る目的があり、「多くの研究で明らか」は研究の名前がなく確かめられない。(関係も可:「集中力が高まる」一般論で、本校の生徒の授業への集中を直接測っていない。)
問3
資料Cの全国の中学三年生では「あまり・全く食べない」の合計が六・一%で、資料Aの「ほとんど食べない」八%はそれよりやや高いが、「週に数回」を含めるかで変わり、学年も違う。比較対象と条件をそろえないと「多い」とは言えない。
問4
本校の生徒について、朝食を食べた日と食べなかった日の授業中の集中の度合い(小テストの点数、自己評価など)を同じ生徒で比べた記録。または朝食を食べる生徒と食べない生徒の、同じ授業での理解度の比較。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1で資料C | 全国の数値で本校を語る(質・範囲) | 確かめる観点をつかむ(条件3) |
| 問2で「広告だから」だけ | 条件の名前で説明していない | 出典・根拠を手順で調べる(段階3) |
| 問3で「八%は少ない」 | 比較対象なしで評価した | 印象に流された判断を直す(型③) |
| 問4で「もっとアンケートをとる」 | 具体的でない | 出典・根拠を手順で調べる(段階4) |
| 資料Dを集中の根拠にした | 一人の体験(量×) | 確かめる観点をつかむ(条件2) |
四つの資料の表
| 資料 | 主張の要素 | 関係 | 量 | 質 |
|---|---|---|---|---|
| A | 食べない人が多い | ○ | △(六十四人、一年生) | △(本校だが一部) |
| B | 集中に影響 | △(一般論) | ×(研究名なし) | ×(売る目的、確かめられない) |
| C | 食べない人が多い(比較対象) | ○(比較用) | ○ | △(全国三年生、本校ではない) |
| D | 集中に影響 | ○ | ×(一人) | △(体験) |
資料Cは本校の根拠にはなりませんが、「多い」を言うための比較対象として使えます。資料の役割は一つではありません。
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 主張を二つの要素(食べない人が多い/集中に影響)に分けたか | 問1と問2・4で別の資料 |
| 「多い」に比較対象を添えたか | 資料C |
| 問題点を条件の名前で書いたか | 関係・量・質 |
| 必要な資料を「何を・誰について・どう比べる」で書いたか | 問4 |
よくある間違い
全国の資料(C)を「公的だから最も適切」と選ぶ
公的で質は高いが、主張の対象は「本校」。範囲がずれます。
体験談(D)を「集中」の根拠にする
一人の体験は量×。ただし「何を調べるべきか」のヒントにはなります。
「多い」を感覚で判定する
八%が多いかは比較対象で決まります。資料Cの六・一%と条件をそろえて比べます。
自分で説明しよう
確認1:資料が根拠になる三つの条件
関係(要素に対応)、量(数・期間)、質(確かめられ、範囲が合う)。
確認2:根拠を判定する四段階
主張を要素と範囲に、資料を要素と範囲に、三つの条件を判定、補う資料を挙げる。
確認3:根拠の対応の誤りの四つの型
話題が同じなら根拠、数が多ければ十分、比較なしで多い・少ない、一つの資料で全体。
セクションの出口
主張を要素に分け、複数の資料を関係・量・質で照らして適切なものを選び、問題点を条件の名前で指摘し、比較対象を添え、必要な資料を具体的に書けたら完了です。
次のセクション「調査対象と偏り」では、質の条件の中でも特に重要な「誰をどのように調べたか」を深め、一部の結果を全体へ広げすぎる誤りを扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。