数字・割合・グラフの見せ方:複数資料・入試で判断する
このレッスンの役割
ここは「数字・割合・グラフの見せ方」の出口です。数字の五つの確認、グラフの四つの確認、四段階の手順、誤りの四つの型を、複数の資料の数字を比べる入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、数字から言えることを選び、グラフの見せ方の問題点を指摘し、割合と実数の両方で書き、期間を限って傾向を書くことです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
数字とグラフは、四つの形で出ます。
- 選択:「この表から言えることとして正しいものを選べ」
- 見せ方の問題:「このグラフの示し方の問題点を書け」
- 両方で記述:「変化を割合と実数の両方で書け」
- 期間を限る:「この資料から言える傾向を、期間を限って書け」
総合問題
「本市の図書館の利用」について、三つの資料が示されました。資料を読んで、あとの問いに答えなさい。
【資料A】本市の図書館の年間貸出冊数(市の統計) 二〇一九年 四十二万冊、二〇二〇年 三十万冊、二〇二一年 三十三万冊、二〇二二年 三十六万冊、二〇二三年 三十八万冊
【資料B】市の広報に載った棒グラフ「貸出冊数は回復傾向」 二〇二〇〜二〇二三年の四本の棒。縦軸は二十八万冊から始まり、二〇二三年の棒は二〇二〇年の棒の約五倍の高さ。
【資料C】市民団体のチラシ「図書館の利用は低迷したまま」 「二〇一九年と比べ、二〇二三年の貸出冊数はいまだ一割減。」
問1
資料Aから言えることとして正しいものを選びなさい。 ア 貸出冊数は二〇一九年から一貫して減り続けている イ 貸出冊数は二〇二〇年に大きく減り、その後三年連続で増えているが、二〇一九年の水準には戻っていない ウ 二〇二三年の貸出冊数は二〇二〇年の五倍である エ 貸出冊数は二〇一九年の水準を上回った
問2
資料Bのグラフの示し方の問題点を二つ書きなさい。
問3
二〇二〇年から二〇二三年の変化を、割合と実数の両方で書きなさい。
問4
資料Bと資料Cは、どちらも資料Aの数字に基づいています。両者の印象が違う理由を、「期間」「比較対象」の語を使って説明しなさい。
答えと判断
問1
イ。二〇二〇年に十二万冊減、その後三年連続増、二〇二三年は三十八万冊で二〇一九年の四十二万冊に届かない。アは二〇二一年以降増えている。ウは見た目の比で、実際は約一・二七倍。エは届いていない。
問2
縦軸が二十八万冊から始まっていて、二〇二〇年と二〇二三年の差(八万冊、約二十七%増)が五倍の高さに見える。期間を二〇二〇年からに切り取っていて、二〇一九年の四十二万冊からの大きな減少が見えない。
問3
割合:約二十七%増(三十万冊→三十八万冊)。実数:八万冊増。
問4
資料Bは期間を二〇二〇年以降に限り、比較対象を最も低い二〇二〇年にしているので「回復」に見える。資料Cは比較対象を最も高い二〇一九年にしているので「低迷」に見える。同じ数字でも、期間と比較対象の選び方で印象が逆になる。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1でウ | 見た目の高さで判断 | 印象に流された判断を直す(型②) |
| 問1でア | 期間の後半を見ていない | 確かめる観点をつかむ(期間) |
| 問2で「数字が間違っている」 | 数値は正しい。見せ方の問題 | 出典・根拠を手順で調べる(段階4) |
| 問3で割合だけ | 両方で書く指示 | 出典・根拠を手順で調べる(段階3) |
| 問4で「Bはうそ」「Cはうそ」 | どちらも正しい数字。見せ方の違い | 印象に流された判断を直す |
三つの資料の表
| 資料 | 期間 | 比較対象 | 軸 | 印象 | 元の数字 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 二〇一九〜二〇二三 | ― | ― | ― | 四十二→三十→三十三→三十六→三十八万冊 |
| B | 二〇二〇〜二〇二三 | 二〇二〇年 | 二十八万から | 回復 | 三十→三十八万冊(+二十七%) |
| C | 二〇一九と二〇二三 | 二〇一九年 | ― | 低迷 | 四十二→三十八万冊(−一割) |
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 軸の始まりを見て数値で判断したか | Bの二十八万 |
| 期間の切り取りを見たか | Bは二〇二〇年から |
| 比較対象の選び方を見たか | Bは最低、Cは最高の年 |
| 割合と実数を両方書いたか | 二十七%、八万冊 |
| 「うそ」でなく「見せ方」と書いたか | BもCも数字は正しい |
よくある間違い
広報(B)を「市の資料だから正しい」と読む
数字は正しいが、軸と期間で「回復」を強く見せています。発信者の目的(市の施策を良く見せる)と合わせて見ます。
チラシ(C)を「反対団体だからうそ」と読む
一割減は正しい計算。比較対象を最高の年にしているだけです。
「回復」と「低迷」のどちらが正しいかを選ぼうとする
どちらも一面です。期間と比較対象を明示して、両方の事実を書きます。
自分で説明しよう
確認1:数字の五つの確認とグラフの四つの確認
数字:母数・割合か実数か・期間・比較対象・定義。グラフ:軸の始まり・間隔・期間・項目。
確認2:数字の見せ方を読み解く四段階
印象を書く、確認点を当てる、元の数字に戻す、ずれを説明する。
確認3:同じ数字で印象が逆になるのはなぜですか
期間の切り取りと比較対象の選び方(および軸)で、増減の見え方が変わるから。
セクションの出口
複数の資料の数字を元の数字に戻し、グラフの軸と期間の問題を指摘し、割合と実数の両方で書き、期間と比較対象を明示して印象の違いを説明できたら完了です。
次のセクション「写真・見出し・切り取り」では、数字以外の見せ方、つまり選ばれた画像や短い見出しが前後の状況をどう失わせるかを扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。