調査対象と偏り:確かめる観点をつかむ
このレッスンの役割
「根拠は主張に合っているか」で、質の条件として対象の範囲を見ました。ここでは、調査そのものを見る目を深めます。「誰を、どう選んで、何人に、どう聞いたか」で、同じ質問でも結果は変わります。一部の結果を全体へ広げてよいかは、この四つで決まります。
今回の中心技能は、調査の四つの問いに答え、偏りが生まれる三つの場所を言い、全体へ広げてよい条件を判定できることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「駅前で百人に聞いたところ、八割が『この町に図書館は必要ない』と答えた。だから町民の八割は図書館を必要としていない。」
駅前の平日昼間に歩いている人は、通勤者や買い物客が中心で、子ども・高齢者・在宅の人が少ない。「どう選んで」に偏りがあり、「町民」全体へ広げられません。百人という数の問題ではなく、選び方の問題です。
調査を見る四つの問い
| 問い | 見るもの | 偏りの例 |
|---|---|---|
| 誰を | 対象の集団(年齢・地域・立場) | 図書委員、アプリ利用者、駅前の通行人 |
| どう選んで | 無作為か、集まった人か、自分から答えた人か | 自分から投票した人だけ |
| 何人に | 人数と回答率 | 十二人、回答率二割 |
| どう聞いたか | 質問の文、選択肢、聞いた場面 | 誘導する質問、選択肢の偏り |
偏りが生まれる三つの場所
| 場所 | 起きること | 例 |
|---|---|---|
| 対象の選び方 | 特定の集団しか入らない | 駅前の通行人、学校のサイトの訪問者 |
| 回答する人 | 関心のある人・不満のある人だけが答える | ネット投票、自由参加のアンケート |
| 質問の仕方 | 質問の文や選択肢が答えを誘導する | 「税金の無駄遣いである図書館は必要か」 |
三つは別々に見ます。無作為に選んでも、回答率が二割なら「回答する人」の偏りが残ります。
全体へ広げてよい条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象が全体を代表している | 全体から無作為に選ぶ、または全員に聞く |
| 回答率が十分 | 答えなかった人が偏っていない |
| 質問が中立 | 誘導する語や選択肢の偏りがない |
三つがそろって、「この集団の〜%」を「全体の〜%」と言えます。そろわなければ、「回答した人の中では」「駅前で答えた人の中では」と範囲を限って書きます。
例題:四つの問いで見る
「学校のサイトで『制服は必要か』のアンケートを行い、三百人が回答。七割が『不要』と答えた。」
| 問い | 答え | 偏り |
|---|---|---|
| 誰を | サイトの訪問者 | 生徒か保護者か卒業生か不明 |
| どう選んで | 自分から答えた人 | 制服に不満のある人が答えやすい |
| 何人に | 三百人(全校の何割かは不明) | 回答率不明 |
| どう聞いたか | 「必要か」(中立) | 質問は問題なし |
判定:「回答した三百人の七割が不要と答えた」まで。「生徒の七割」とは言えない。
質問の仕方の偏り
| 偏った質問 | 中立な質問 |
|---|---|
| 税金の無駄遣いである図書館は必要か | 図書館は必要か |
| 子どもの安全のために校則は厳しくすべきか | 校則は現状より厳しくすべきか、緩めるべきか、現状のままか |
| (選択肢)賛成・どちらかといえば賛成・反対 | 賛成・どちらかといえば賛成・どちらかといえば反対・反対 |
評価の語が入った質問、選択肢の数が片寄った質問は、答えを誘導します。
よくある間違い
人数が多ければ偏りはないと思う
百人でも一万人でも、選び方が偏っていれば全体を代表しません。
無作為なら偏りはないと思う
無作為に選んでも、回答率が低ければ「回答する人」の偏りが残ります。
質問の文を見ない
同じ対象でも、質問の文で結果が変わります。一次情報で質問文を確かめます。
自分で確かめよう
確認1:調査を見る四つの問い
誰を、どう選んで、何人に、どう聞いたか。
確認2:偏りが生まれる三つの場所
対象の選び方、回答する人、質問の仕方。
確認3:「駅前で百人に聞いた」結果を「町民」に広げられない理由
駅前の通行人は町民全体を代表せず(対象の選び方の偏り)、人数の問題ではないから。
まとめと次の一歩
調査は、誰を・どう選んで・何人に・どう聞いたかの四つの問いで見ます。偏りは対象の選び方・回答する人・質問の仕方の三か所で生まれ、三つがそろって初めて全体へ広げられます。
次のレッスンでは、調査の四つの問いに答えて偏りを特定し、結果を使える範囲に書き直す手順を一行ずつ使えるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。