根拠は主張に合っているか:確かめる観点をつかむ
このレッスンの役割
一次情報にたどり着いても、その資料が主張を支えているとは限りません。主張と資料の要素がずれている、数が少なすぎる、範囲が違う。ここでは、資料が根拠になるための三つの条件(関係・量・質)をつかみます。「抽象・具体と根拠」の「根拠のずれ」を、本文の外の資料に使う形です。
今回の中心技能は、資料と主張を並べて、関係・量・質の三つの条件を一つずつ判定できることです。目安時間は8分です。
今日の問い
主張:「本校の生徒は読書が好きだ。」 資料:「図書委員十二人のうち十人が『読書が好き』と答えた。」
資料は事実ですが、主張の根拠にはなりません。関係:「読書が好き」の要素は対応している。量:十二人は少ない。質:図書委員は読書好きが集まる集団で、「本校の生徒」全体を代表しない(範囲のずれ)。量と質の条件を満たしていません。
三つの条件
| 条件 | 問い | 満たさない例 |
|---|---|---|
| 関係 | 資料は主張の要素に直接対応しているか | 「成績が上がった」の根拠に「満足度が高い」 |
| 量 | 数・期間・回数は十分か | 一人の体験、一週間の記録、三人のアンケート |
| 質 | 確かめられるか、範囲(対象・時期・場所)は主張と合うか | 図書委員で全校を語る、十年前の調査で今を語る |
三つ全部を満たして「根拠として使える」。一つでも欠ければ「条件つき」か「使えない」。
条件1:関係
| 主張の要素 | 資料 | 関係 |
|---|---|---|
| 成績が上がる | 利用者の満足度九十二% | ×(満足と成績は別) |
| 成績が上がる | 利用前後の点数の変化 | ○ |
| 生徒は読書が好き | 読書が好きと答えた割合 | ○ |
| 生徒は読書が好き | 図書館の貸出冊数 | △(好きと借りるは近いが別) |
「必要な根拠を本文から選ぼう」の「要素の対応」と同じです。
条件2:量
| 資料 | 量 | 判定 |
|---|---|---|
| 私の弟が成績を上げた | 一人 | 不十分(体験) |
| 塾生三十人の点数 | 三十人 | やや少ない |
| 県内三千二百人の調査 | 三千二百人 | 十分 |
| 一週間の気温 | 一週間 | 「今年は暑い」の根拠には短い |
「何人なら十分か」に決まった数はありませんが、主張の範囲(学校全体、県全体)に対して少なすぎないかを見ます。
条件3:質
| 見るもの | 問い | ずれの例 |
|---|---|---|
| 確かめられるか | 出典があり、一次にたどれるか | 「ある調査では」 |
| 対象の範囲 | 主張の対象と同じ集団か | 図書委員→全校、首都圏→全国 |
| 時期の範囲 | 主張の時期と合うか | 十年前の調査→今 |
| 場所の範囲 | 主張の場所と合うか | 隣の市の結果→自分の市 |
三つの条件と「根拠のずれ」
| 根拠のずれ(抽象・具体と根拠) | 三つの条件 |
|---|---|
| 範囲のずれ | 量、質(対象・時期・場所) |
| 向きのずれ | 関係(支えているか) |
| 種類のずれ | 関係(要素の対応) |
例題:三つの条件で見る
主張:「この町の商店街は衰退している。」 資料:「昨年、商店街の店が二店閉店した。」
| 条件 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 関係 | △ | 閉店は衰退の一面。開店数・売上が要素 |
| 量 | × | 一年、二店 |
| 質 | △ | 確かめられるが、時期が短い |
「昨年二店閉店した」は事実だが、「衰退」の根拠としては不十分。開店数、数年の推移、売上を足す必要がある。
よくある間違い
事実なら根拠になると思う
事実でも、主張と関係がなかったり、量や範囲が足りなければ根拠になりません。
数が多ければ質もよいと思う
一万人の回答でも、特定のサイトの利用者だけなら範囲がずれます(次のセクション「調査対象と偏り」)。
「関係」を話題の近さで判定する
「満足度」と「成績」は同じ参考書の話ですが、要素は別。主張の要素の語で対応を見ます。
自分で確かめよう
確認1:資料が根拠になる三つの条件
関係(要素に直接対応)、量(十分な数・期間)、質(確かめられ、範囲が合う)。
確認2:「図書委員十二人のうち十人が読書好き」が「本校の生徒は読書好き」の根拠にならない理由
量(十二人)が少なく、質(図書委員は全校を代表しない)で範囲がずれている。
確認3:「満足度九十二%」が「成績が上がる」の根拠にならない条件はどれですか
関係(満足と成績は別の要素)。
まとめと次の一歩
資料が根拠になるには、関係・量・質の三つの条件が必要です。関係は要素の対応、量は数と期間、質は確かめられるかと範囲で見ます。
次のレッスンでは、主張と資料を並べて三つの条件を判定し、足りない条件を補う資料を考える手順を一行ずつ使えるようにします。
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