説明文・論説文の重要語彙:初見文・入試で使う
このレッスンの役割
ここは「説明文・論説文の重要語彙」の出口です。三種類の語彙、構造を読む四段階の手順、誤りの四つの型を、初見の論説文に付いた入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、重要語彙の意味を文脈で決め、主張と根拠を区分し、筆者の評価を読み、構造をふまえて記述することです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
論説文の語彙は、四つの形で出ます。
- 語義選択:「──線部『相対的』の意味として適切なものを選べ」
- 構造の抜き出し:「筆者の主張の根拠を本文から抜き出せ」
- 評価の読み取り:「筆者は〜をどのように評価しているか」
- 記述:「筆者の考えを〜字以内でまとめよ」
総合問題
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
「便利さ」は、現代社会において①絶対的な価値のように語られる。確かに、便利な道具は私たちの時間を節約し、生活を楽にしてきた。しかし、便利さを追求することが常に良いとは限らない。なぜなら、便利さは、私たちから「考える機会」と「手を動かす機会」を奪うことがあるからだ。たとえば、地図アプリに頼れば道を覚えなくなり、自動翻訳に頼れば言葉を学ばなくなる。便利さの価値は、何を得て何を失うかという②相対的な判断の中で、そのつど決められるべきものではないだろうか。便利さを③無条件に善とする考え方は、④本質的な問いを見失わせる。
問1
①「絶対的」、②「相対的」の意味を、対にして説明しなさい。
問2
筆者が「便利さを追求することが常に良いとは限らない」と考える根拠を、本文から抜き出しなさい。
問3
③「無条件に善とする考え方」を、筆者はどのように評価しているか。根拠となる語句とともに答えなさい。
問4
④「本質的な問い」とは何か。本文の言葉を使って説明しなさい。
答えと判断
問1
絶対的=他と比べることなく、どんな場合でも成り立つ。相対的=他と比べ、場合によって変わる。本文では、便利さを「どんな場合でも良い」とする見方(絶対的)と、「何を得て何を失うかで変わる」とする見方(相対的)が対比されている。
問2
「便利さは、私たちから『考える機会』と『手を動かす機会』を奪うことがあるからだ」。「なぜなら」の後。地図アプリの話は「たとえば」の後の例なので根拠ではない。
問3
否定的に評価している。根拠は「本質的な問いを見失わせる」(マイナスの結果)、「〜べきものではないだろうか」(相対的な判断を支持)、「確かに〜。しかし」(譲歩のあとの逆接で、便利さの絶対視を否定)。
問4
便利さによって「何を得て何を失うか」という問い。「本質的」は「物事の中心に関わる」で、筆者は便利さの価値をこの問いで判断すべきだと述べている。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1で「絶対的=とても大きな」 | 日常の意味で読んだ | 誤った言い換えを直す(型①) |
| 問2で「地図アプリに頼れば〜」 | 例を根拠と混同 | 誤った言い換えを直す(型③) |
| 問3で「肯定的」 | 評価の向きと譲歩の構造を誤読 | 誤った言い換えを直す(型④) |
| 問4で「便利さは良いか」 | 本文の語(何を得て何を失うか)を使っていない | 手掛かりから意味を決める(段階3) |
構造の表
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 批判対象 | 便利さを絶対的な価値とする見方(無条件に善とする考え方) |
| 譲歩 | 便利な道具は時間を節約し生活を楽にした |
| 主張 | 便利さの追求が常に良いとは限らない。価値は相対的に判断すべき |
| 根拠 | 便利さは考える機会・手を動かす機会を奪うことがある |
| 例 | 地図アプリ、自動翻訳 |
| 本質的な問い | 何を得て何を失うか |
一つの表から、四問すべてに答えられます。
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 語の意味は厳密か | 絶対・相対・本質・無条件 |
| 根拠は「なぜなら」の後か | 「たとえば」の後ではないか |
| 評価の向きは合っているか | 本質的(+)、無条件に(−) |
| 譲歩と主張を区別したか | 確かに/しかし |
| 記述に本文の語を使ったか | 「何を得て何を失うか」 |
よくある間違い
語義選択で、辞書の意味と本文の対比を結びつけない
「絶対的」の意味は、本文の「相対的」との対比で確定します。本文の構造で答えます。
根拠の抜き出しで、例を書く
例は根拠を支える材料です。「なぜなら〜からだ」の範囲を抜き出します。
記述で「本質的な問い」を自分の言葉で作る
本文に「何を得て何を失うか」という言葉があります。本文の語を優先します。
自分で説明しよう
確認1:論説文の重要語彙の意味を決める手掛かり
対になる語と、本文の文脈(対比・説明)。
確認2:根拠と例の区別
根拠は「なぜなら〜からだ」の後の理由、例は「たとえば」の後の具体的な事例。例は根拠を支えるが、根拠そのものではない。
確認3:筆者の評価を読む三つの手掛かり
評価の語の向き、文脈の批判語や支持語、譲歩と逆接の構造。
セクションの出口
初見の論説文で、重要語彙を対と文脈で決め、主張と根拠を区分し、筆者の評価を読み、構造をふまえて記述できたら完了です。
次のセクション「語句を言い換えて説明しよう」では、傍線部と本文中の別表現を対応させ、語句の意味を文脈に沿って自分の言葉で説明する記述の方法を扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。