一つの言葉が持つ複数の意味:初見文・入試で使う
このレッスンの役割
ここは「一つの言葉が持つ複数の意味」の出口です。核と広がりの型、四段階の手順、誤りの四つの型を、初見の物語文に付いた入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、文中の多義語の意味を選び、同じ意味の用例を見分け、比喩的な表現を記述で言い換えることです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
多義語は、三つの形で出ます。
- 意味の選択:「──線部の意味として最も適切なものを選べ」
- 同じ意味の選択:「──線部と同じ意味で使われているものを選べ」
- 言い換え記述:「──線部はどういうことか、説明せよ」(比喩的な表現を自分の言葉に)
物語文では、心情を表す比喩的な用法が多く出ます。
総合問題
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
転校初日、教室の空気は①硬かった。誰も声をかけてこない。昼休み、隣の席の中村が、弁当を持って②軽く手を上げた。「一緒に食べない?」その一言で、私の中の何かが③ほどけた。午後の授業は、朝よりずっと④短く感じられた。
問1
①「硬かった」の意味として最も適切なものを選びなさい。
ア 机や椅子が丈夫だった イ 打ち解けず緊張していた ウ 規則が厳しかった エ 声が大きかった
問2
②「軽く」と同じ意味で使われているものを選びなさい。
ア 軽く会釈する イ 荷物が軽い ウ 発言が軽い エ 軽い病気
問3
③「ほどけた」とはどういうことか、二十五字以内で説明しなさい。
問4
④「短く感じられた」とあるが、なぜそう感じたのか。本文の内容をふまえて説明しなさい。
答えと判断
問1
イ。結びつく語は「空気が」で、物ではないので比喩的。核「形が変わりにくい」から「打ち解けず、緊張している」。アは物理的な意味の押しつけ。
問2
ア。本文の「軽く手を上げた」は「力を入れず、さりげなく」という動作の様子。「軽く会釈する」が同じ。イは物理的な重量、ウは「慎重さがない」という評価、エは「程度が軽い」。
問3
「緊張していた気持ちがゆるんで、安心したということ。」(二十四字)。「ほどける」の核は「結び目がゆるむ」。「私の中の何か」は緊張や不安で、それがゆるんだ。
問4
中村に声をかけられて緊張がほどけ、気持ちが楽になったので、同じ長さの時間が朝より速く過ぎるように感じられたから。「短い」は物理的な長さではなく、心理的な時間の感じ方。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1でア | 物理的な意味の押しつけ | 誤った言い換えを直す(型①) |
| 問2でウ | 広がりの型を取り違えた(動作の様子/評価) | 意味の核をつかむ(三つの型) |
| 問3で「結び目がゆるんだ」 | 核をそのまま書き、比喩を言い換えていない | 手掛かりから意味を決める(段階3) |
| 問4で「授業が実際に短かった」 | 物理的な意味の押しつけ | 誤った言い換えを直す(型①) |
物語文の比喩的な多義語
| 表現 | 核 | 心情の意味 |
|---|---|---|
| 空気が硬い/ゆるむ | 形・緊張 | 緊張している/打ち解ける |
| 胸が熱くなる/冷える | 温度 | 感動する/気持ちが冷める |
| 気持ちがほどける/固まる | 結び目 | 安心する/緊張する |
| 時間が短い/長い | 長さ | 楽しい/つらい、退屈 |
| 心が重い/軽い | 重量 | 気が進まない/気楽 |
物語の心情問題は、こうした多義語の比喩的な意味を読む問題です。
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 結びつく語を見たか | 空気が、気持ちが、時間が |
| 物理的と決めつけていないか | 物語では比喩的が多い |
| 核から導いたか | ほどける=ゆるむ → 安心 |
| 記述で比喩を言い換えたか | 核の言葉をそのまま書いていないか |
| 同じ意味の問題で型を分けたか | 物理的/動作の様子/評価 |
よくある間違い
物語の比喩を文字通りに読む
「空気が硬い」「時間が短い」は心情です。物理的に読むと設問の意図を外します。
記述で核の言葉を書いて終わる
「ほどける=ゆるむ」では比喩のままです。「緊張がゆるんで安心した」まで言い換えます。
「同じ意味」の問題で、広がりの型を分けずに選ぶ
「軽く手を上げる」(動作の様子)と「発言が軽い」(評価)は、どちらも比喩的ですが型が違います。
自分で説明しよう
確認1:物語文で多義語が心情を表すとき、どの型の意味ですか
比喩的(または評価)。物理的な意味ではありません。
確認2:「ほどけた」を記述で言い換える手順
核(結び目がゆるむ)を、文脈の対象(緊張・不安)に当てはめ、「緊張がゆるんで安心した」と自分の言葉にする。
確認3:「時間が短く感じられた」から読み取れる心情
楽しい、気持ちが楽になった。つらい時間は長く、楽しい時間は短く感じるから。
セクションの出口
初見の物語文で、多義語の比喩的な意味を選び、同じ意味の用例を型で見分け、心情を記述で言い換えられたら完了です。
次のセクション「語感とニュアンスを読み取ろう」では、似た言葉が伝える感情・態度・意味の強さの違いを捉え、表現を適切に選ぶ方法を扱います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。