慣用句・ことわざ・四字熟語:誤った言い換えを直す
このレッスンの役割
決まり文句の誤りは、「知っているつもり」が最も危険です。多くの人が逆の意味で覚えている語句が、入試では狙われます。ここでは、よく起きる誤りを四つの型に分け、直します。
今回の中心技能は、誤答を見て「字面で取り違えた」「逆の意味で覚えていた」「表記を誤った」「場面が合わない」のどれかを言い、直せることです。目安時間は8分です。
今日の問い
「情けは人のためならず」の意味を、ある人は「人に情けをかけると、その人のためにならない」と答えました。どこで誤ったのでしょうか。
本来の意味は「人に情けをかければ、巡り巡って自分に返ってくる(だから人には親切にせよ)」です。「ためならず」を「ためにならない」と字面で読んだ型①と、逆の意味で覚えている型②が重なっています。
誤りの四つの型
| 型 | 起きていること | 例 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 字面による取り違え | 字のとおりに読んで意味を誤る | 気が置けない=油断できない | 決まり文句は字面で決めない |
| ② 逆の意味で覚えている | 広まっている誤用で覚えている | 情けは人のためならず=ためにならない | 本来の意味を確認して覚え直す |
| ③ 表記の誤り | 漢字や語の形を誤る | 的を得る、汚名挽回 | 正しい形で覚える |
| ④ 場面の不一致 | 意味は合うが使う場面が違う | 目上の人に「ご苦労さま」 | 場面と相手を確かめる |
型①②を直す:誤りやすい語句
| 語句 | よくある誤り | 本来の意味 |
|---|---|---|
| 気が置けない | 油断できない | 遠慮がいらない |
| 情けは人のためならず | 情けはその人のためにならない | 情けは巡って自分に返る |
| 役不足 | 力が足りない | 役が軽すぎて力を持て余す |
| 確信犯 | 悪いと知ってやる | 正しいと信じてやる |
| 煮詰まる | 行き詰まる | 議論が進んで結論が近い |
| 流れに棹さす | 流れに逆らう | 流れに乗って勢いをつける |
| 他山の石 | 手本にする | 他人の悪い例を自分の戒めにする |
| 枯れ木も山のにぎわい | にぎやかでよい | つまらないものでもないよりまし(自分を謙遜して使う) |
これらは、入試で「正しい意味を選べ」「正しく使われているものを選べ」の形で出ます。
型③を直す:表記
| 誤り | 正しい形 | 理由 |
|---|---|---|
| 的を得る | 的を射る | 的は射るもの |
| 汚名挽回 | 汚名返上/名誉挽回 | 汚名を取り戻してはいけない |
| 一同に会する | 一堂に会する | 堂(建物)に集まる |
| 押しも押されぬ | 押しも押されもせぬ | 本来の形 |
| 食指をそそる | 食指が動く/食欲をそそる | 混同 |
型④を直す:場面
| 語句 | 合わない場面 | 合う場面 |
|---|---|---|
| ご苦労さま | 目上の人に | 目下の人に(目上には「お疲れさま」) |
| 枯れ木も山のにぎわい | 他人を誘うとき | 自分が参加するときの謙遜 |
| つまらないものですが | 高価な贈り物を強調したいとき | 贈り物を渡すときの謙遜 |
| 猿も木から落ちる | 初心者の失敗 | 名人の失敗 |
例題:どの型か
「彼とは気が置けない仲だ」を「油断できない仲だ」と読んだ。
型①②。「遠慮がいらない親しい仲」が正しい。
「的を得た意見」と書いた。
型③。「的を射た意見」。
社長に「ご苦労さまでした」と言った。
型④。目上には「お疲れさまでした」。
よくある間違い
周りが使っているから正しいと思う
「役不足」「煮詰まる」は、誤用のほうが広まっています。入試は本来の意味で出ます。
意味を直しても表記を直さない
「的を射る」と知っていても「的を得る」と書けば不正解です。表記まで覚えます。
場面を考えずに知っている語句を使う
作文や記述で、場面に合わない決まり文句を使うと減点されます。相手と場面を確かめます。
自分で確かめよう
確認1:「役不足」の本来の意味
役が軽すぎて、その人の力を持て余すこと。「力が足りない」は「力不足」。
確認2:「汚名挽回」が誤りである理由と正しい形
汚名を取り戻す意味になってしまうから。「汚名返上」または「名誉挽回」。
確認3:「ご苦労さま」を使ってよい相手
目下の人。目上には「お疲れさま」。
まとめと次の一歩
誤りは、字面による取り違え、逆の意味で覚えている、表記の誤り、場面の不一致、の四つに分けられます。本来の意味を確認し、正しい表記で、場面と相手に合わせて使います。
次のレッスンでは、初見の文章と入試問題で、慣用句・ことわざ・四字熟語を通して使います。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。