語句を言い換えて説明しよう:手掛かりから意味を決める
このレッスンの役割
前のレッスンで、言い換え記述の仕組みを知りました。ここでは、答案を作る手順を一つに決め、どんな傍線部にも同じ順で当てられるようにします。
今回の中心技能は、「傍線部を部分に分ける → 各部分の別表現を本文から探す → 主語を補って一文にする → 文末と字数を整える」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
都市の再開発は、古い街並みという記憶の器を壊してしまうことがある。長年そこで暮らした人々の思い出や、世代を超えて受け継がれた暮らしの形は、建物とともに失われる。
「記憶の器」とはどういうことか、四十字以内で説明しなさい。
手順で作ります。部分に分ける:「記憶」+「器」。別表現:記憶=「人々の思い出や、受け継がれた暮らしの形」、器=「それを入れて保つもの=古い街並み・建物」。主語を補って一文に:「古い街並みが、人々の思い出や暮らしの形を保つ入れ物だということ」。字数を整えて三十五字前後。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 「記憶の器」の場合 |
|---|---|---|
| 1 | 傍線部を部分に分ける | 記憶/器 |
| 2 | 各部分の別表現を本文から探す | 記憶=思い出・暮らしの形、器=街並み・建物(保つもの) |
| 3 | 主語を補って一文にする | 古い街並みが、思い出や暮らしの形を保つ入れ物だ |
| 4 | 文末と字数を整える | 〜ということ。四十字以内 |
段階1:部分に分ける
傍線部は、たいてい二つ以上の部分でできています。
| 傍線部 | 部分 |
|---|---|
| 記憶の器 | 記憶/器 |
| 言葉の重み | 言葉/重み |
| 頭に火をつける | 頭(思考)/火をつける(燃え上がらせる) |
| 心がほどけた | 心(緊張)/ほどけた(ゆるんだ) |
各部分に別表現を対応させると、漏れのない答えになります。
段階2:別表現を探す
| 部分 | 探す場所 | 見つかったもの |
|---|---|---|
| 記憶 | 直後の文 | 人々の思い出、受け継がれた暮らしの形 |
| 器 | 傍線部の前後の名詞 | 古い街並み、建物(「建物とともに失われる」から、建物が入れ物) |
比喩の部分(器)は、本文の具体的な名詞(街並み・建物)に戻します。
段階3:主語を補う
傍線部には主語がないことが多いです。「記憶の器」は「古い街並みが」記憶の器です。主語を補うと、文として完成します。
段階4:文末と字数
| 設問 | 文末 |
|---|---|
| どういうことか | 〜ということ。 |
| なぜか | 〜から。/〜ため。 |
| 何か | 〜。(名詞で終える) |
| どのような気持ちか | 〜という気持ち。 |
字数は、上限の八割以上を目安に。短すぎると部分が抜けています。
例題:物語文
友人の「大丈夫」という一言で、私の中の何かがほどけた。それまで張りつめていた緊張が、ふっと軽くなったのだ。
「何かがほどけた」とはどういうことか、三十字以内で。
- 何か/ほどけた
- 何か=張りつめていた緊張、ほどけた=軽くなった
- 「私の」張りつめていた緊張が、ふっと軽くなった
- 「友人の一言で、張りつめていた緊張がゆるんで楽になったということ。」(三十字)
よくある間違い
段階1を飛ばして、傍線部全体を一語で言い換える
「記憶の器=思い出」では「器」の部分が抜けます。部分ごとに対応させます。
段階2で比喩をそのまま残す
「記憶を入れる器だということ」では、比喩が説明されていません。「器」を「街並み・建物」に戻します。
段階3で主語を補わない
「思い出を保つ入れ物だということ」では、何がそうなのかが不明です。「古い街並みが」を入れます。
自分で確かめよう
確認1:「言葉の重み」(約束を守り、できないことは言わない)を四段階で
言葉/重み → 言葉=口にしたこと、重み=必ず守る責任 → 彼にとって、口にした言葉には必ず守る責任が伴う → 「口にした言葉には責任が伴うということ。」
確認2:傍線部に主語がないとき、どうしますか
本文から主語(何が・誰が)を補って一文にします。
確認3:「どういうことか」の文末と、字数の目安
「〜ということ。」上限の八割以上。
まとめと次の一歩
手順は、傍線部を部分に分ける、各部分の別表現を本文から探す、主語を補って一文にする、文末と字数を整える、の四段階です。部分ごとに対応させ、比喩は本文の具体語に戻します。
次のレッスンでは、言い換え記述でよく起きる誤りを集め、どの段階で崩れたかを見抜けるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。