具体的な言葉と抽象的な言葉:手掛かりから意味を決める
このレッスンの役割
前のレッスンで、具体と抽象の関係を知りました。ここでは、文章の中で具体例と抽象的なまとめを結びつける手順を一つに決め、「抽象語の意味を具体例で決める」「具体例から抽象語を見つける」の両方向で使えるようにします。
今回の中心技能は、「合図で分ける → 具体例の共通点を取り出す → 抽象語に当てはめる → 往復して確かめる」の四段階を一行ずつ書けることです。目安時間は9分です。
今日の問い
日本の伝統文化には、余白を大切にするものが多い。水墨画では描かない部分が景色を作り、能では動きを止めた瞬間が感情を伝え、和歌では言わない部分に思いが宿る。
「余白を大切にする」とは、どういうことでしょうか。具体例は三つ。描かない部分、動きを止めた瞬間、言わない部分。共通点は「何もしない部分が意味を持つ」。これが「余白を大切にする」の意味です。抽象語は、具体例の共通点で決まります。
手順を一行ずつ
| 段階 | すること | 「余白」の場合 |
|---|---|---|
| 1 | 合図で具体と抽象を分ける | 抽象:余白を大切にする/具体:水墨画・能・和歌の例 |
| 2 | 具体例の共通点を取り出す | 何もしない部分が意味を持つ |
| 3 | 抽象語に当てはめる | 余白=何もしない部分、大切にする=意味を持たせる |
| 4 | 往復して確かめる | 共通点で三つの例が全部説明できる → 通る |
合図で分ける
| 合図 | 続くもの |
|---|---|
| たとえば、具体的には、〜など、〜や〜 | 具体例 |
| こうした、このような、つまり、要するに、一般に | 抽象的なまとめ |
| 〜とは、〜ということだ | 抽象語の定義 |
合図がなくても、固有名詞や数字、目に見える出来事は具体、性質や傾向を表す語は抽象です。
例題1:具体から抽象へ
彼は、朝のあいさつを欠かさない。落とし物があれば届ける。約束の時間には必ず来る。こうした誠実さが、周囲の信頼を集めている。
- 分ける:具体(あいさつ、届ける、時間を守る)/抽象(誠実さ)
- 共通点:当たり前のことを、きちんと続けている
- 当てはめる:誠実さ=当たり前のことをきちんと続ける性質
- 確かめ:三つの例が全部「きちんと」で説明できる → 通る
例題2:抽象から具体へ
現代社会は情報過多だ。
「情報過多」の意味を決めるには、具体例を自分で当てはめます。スマートフォンに通知が絶えず届く、ニュースが一日中流れる、検索すると何万件も出る。これらに共通するのは「必要以上に情報が多く、処理しきれない」。これが意味です。文中に具体例がないときは、自分で例を置いて確かめます。
例題3:段階4で共通点を直す
彼女は几帳面だ。机はいつも整っている。提出物は早い。人の話をよく聞く。
共通点を「きちんとしている」と置くと、「人の話をよく聞く」は少し外れます。「几帳面」は「細かいところまで正確にする」なので、「話をよく聞く」はむしろ「誠実」の例です。往復して確かめると、筆者が別の性質も混ぜていることに気づきます。段階4は、共通点の精度を上げる段階です。
記述への応用
「〜とはどういうことか」の設問は、「抽象語を具体例の共通点で言い換えよ」という意味です。段階2で取り出した共通点が、そのまま答えの骨組みになります。
よくある間違い
具体例を一つだけ見て共通点を決める
一つの例から共通点は取れません。二つ以上の例に共通するものを探します。
共通点を具体例の一つで言う
「余白を大切にする=描かない部分」は、一つの例を写しただけです。三つに共通する「何もしない部分」まで抽象化します。
文中に具体例がないと手が止まる
自分で具体例を置けば、抽象語の意味を確かめられます。
自分で確かめよう
確認1:「彼は柔軟だ。予定が変わっても慌てず、相手の意見も取り入れ、方法を変えることを嫌がらない」の「柔軟」を四段階で
分ける:抽象(柔軟)/具体(三つの例)→ 共通点:状況に合わせて変えられる → 当てはめる:柔軟=状況に合わせて変えられる → 三つとも説明できる → 通る。
確認2:文中に具体例がない抽象語は、どうやって意味を確かめますか
自分で具体例を置き、共通点が抽象語に合うかを見ます。
確認3:「〜とはどういうことか」の設問で、答えの骨組みになるのは何ですか
具体例の共通点(段階2)です。
まとめと次の一歩
手順は、合図で分ける、具体例の共通点を取り出す、抽象語に当てはめる、往復して確かめる、の四段階です。抽象語は具体例の共通点で決まり、具体例がなければ自分で置きます。
次のレッスンでは、具体と抽象を結びつけるときによく起きる誤りを集め、どの段階で崩れたかを見抜けるようにします。
クイズと理解チェックは、アプリで挑戦できます。