具体的な言葉と抽象的な言葉:初見文・入試で使う
このレッスンの役割
ここは「具体的な言葉と抽象的な言葉」の出口です。抽象度の考え方、四段階の手順、誤りの四つの型を、初見の論説文に付いた入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、抽象語の意味を具体例から記述し、抽象語に合う具体例を選び、筆者の主張を抽象の側でまとめることです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
具体と抽象は、三つの形で出ます。
- 抽象語の言い換え記述:「──線部『〜』とはどういうことか。本文の具体例をふまえて説明せよ」
- 具体例の選択:「──線部の例として適切なものを選べ」
- 主張のまとめ:「筆者の考えを〜字以内でまとめよ」
どれも、具体と抽象を往復して結びつける力を問います。
総合問題
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
道具は、人の能力を①拡張する。望遠鏡は目の届く範囲を広げ、自動車は足の届く範囲を広げ、計算機は頭の処理できる量を広げた。しかし、拡張には②代償がある。望遠鏡に頼れば肉眼で星を探さなくなり、自動車に頼れば歩かなくなり、計算機に頼れば暗算をしなくなる。道具が広げた範囲の分だけ、元の能力は使われなくなるのだ。だから、道具を使うときには、③何を手放しているのかを意識する必要がある。
問1
①「拡張する」とはどういうことか。本文の具体例をふまえて、「〜こと」の形で説明しなさい。
問2
②「代償」の例として、本文に挙げられていないものを選びなさい。
ア 肉眼で星を探さなくなる イ 歩かなくなる ウ 暗算をしなくなる エ 道具が壊れやすくなる
問3
③「何を手放しているのか」の「何」にあたるものを、本文の言葉で答えなさい。
問4
筆者の主張を四十字以内でまとめなさい。
答えと判断
問1
「道具が、目・足・頭といった人の能力の届く範囲を広げること」。三つの具体例(望遠鏡・自動車・計算機)の共通点は「届く範囲を広げる」です。
問2
エ。ア・イ・ウは「しかし」のあとの三つの具体例。エは本文にありません。
問3
「元の能力」。「道具が広げた範囲の分だけ、元の能力は使われなくなる」が抽象的なまとめで、「手放しているもの」はこれです。
問4
「道具は能力を広げるが元の能力を使わなくさせるので、何を手放すかを意識すべきだ。」(三十九字)。「だから」のあとの主張と、その根拠のまとめを合わせます。具体例(望遠鏡など)は入れません。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1で「望遠鏡で遠くが見えること」 | 一つの例で決めた | 誤った言い換えを直す(型②) |
| 問1で「便利になること」 | 抽象化しすぎ | 誤った言い換えを直す(型③) |
| 問3で「望遠鏡」 | 具体と抽象を取り違えた | 誤った言い換えを直す(型①) |
| 問4に「望遠鏡は〜」を入れた | 具体例を主張に入れた | 誤った言い換えを直す(型①) |
記述で具体と抽象を使い分ける
| 設問 | 使うもの | 使わないもの |
|---|---|---|
| 〜とはどういうことか(具体例をふまえて) | 具体例の共通点 | 一つの例の丸写し |
| 筆者の主張をまとめよ | 抽象的なまとめ(こうした・だから のあと) | 具体例 |
| 具体例を挙げよ | 「たとえば」のあと、または自分で置いた例 | 抽象語の言い換え |
字数が少ない設問ほど、抽象の側で書きます。
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 具体例を主張に入れていないか | 固有名詞・物の名前が主張の文にないか |
| 共通点は二つ以上の例から取ったか | 一つの例を写していないか |
| 抽象度はちょうどよいか | 「便利」「大切」で済ませていないか |
| 段を飛ばしていないか | 根拠と主張の間がつながるか |
| 字数内か | 具体例を削って抽象でまとめたか |
よくある間違い
字数が余ると具体例を足す
字数を埋めるために具体例を入れると、主張がぼやけます。抽象のまとめで字数を使います。
「具体例をふまえて」を「具体例を書け」と読む
「ふまえて」は、具体例から取り出した共通点を書くという意味です。例そのものを並べるのではありません。
「何を」「どういうこと」の答えを具体の側で探す
抽象語の指す内容は、たいてい「こうした」「つまり」のあとのまとめにあります。
自分で説明しよう
確認1:「筆者の主張をまとめよ」で具体例を入れない理由
主張は抽象の側にあり、具体例は主張を支える材料だからです。
確認2:「具体例をふまえて説明せよ」で書くもの
具体例から取り出した共通点です。例そのものではありません。
確認3:「拡張」の意味を三つの例から決めた手順
三つの例(望遠鏡・自動車・計算機)の共通点「届く範囲を広げる」を取り出し、「拡張」に当てはめて確かめました。
セクションの出口
初見の論説文で、抽象語を具体例の共通点で言い換え、具体例を選び、主張を抽象の側でまとめられたら完了です。
次のセクション「類義語を使い分けよう」では、似た意味の言葉の使う場面・意味の強さ・与える印象の違いを扱います。
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