語感とニュアンスを読み取ろう:初見文・入試で使う
このレッスンの役割
ここは「語感とニュアンスを読み取ろう」の出口です。三つの要素、四段階の手順、誤りの四つの型を、初見の物語文と論説文に付いた入試形式の問題で通して使います。
中心技能は、物語の心情と論説文の筆者の態度を、語のニュアンスから根拠をもって答え、記述で適切な語を選ぶことです。目安時間は10分です。
入試でどう出るか
ニュアンスは、三つの形で出ます。
- 心情の選択・記述:「このときの『私』の気持ちとして最も適切なものを選べ」「〜の気持ちを説明せよ」
- 表現の効果:「──線部の表現から、どのようなことが読み取れるか」
- 筆者の態度:「筆者は〜の考え方をどのように見ているか」
どれも、語の差分を根拠にして答えます。
総合問題A(物語文)
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
試合が終わった。負けたチームのベンチで、キャプテンの佐藤は、ユニフォームの裾を①ぎゅっとつかんだまま、グラウンドを②見つめていた。後輩たちが片づけを始めても、動かなかった。コーチが肩に手を置くと、佐藤は③小さくうなずき、ようやく立ち上がった。
問1
①「ぎゅっとつかんだまま」から読み取れる佐藤の気持ちとして最も適切なものを選びなさい。
ア 怒りをこらえている イ 悔しさをこらえている ウ 喜びをかみしめている エ 疲れて眠い
問2
③「小さくうなずき」の「小さく」から読み取れることを説明しなさい。
総合問題B(論説文)
近年、「読書はもはや時代遅れだ」といった声を耳にする。確かに、動画や音声で情報を得る手段は増えた。だが、こうした声は、読書が持つ本来の働きを見落としているように思われる。
問3
筆者は「読書はもはや時代遅れだ」という考え方をどのように見ているか。根拠となる表現を挙げて説明しなさい。
答えと判断
問1
イ。中立は「つかんだ」。差分「ぎゅっと」「まま」は、強く握り続ける様子。試合に負けた直後で「見つめていた」「動かなかった」と照合すると、悔しさをこらえて動けない気持ち。アの怒りは、相手や対象への攻撃性を示す語(にらむ、など)がないので不適。
問2
中立は「うなずき」。差分「小さく」は、はっきりとではなく、かろうじて反応した様子。気持ちの整理がついていないが、コーチの気遣いを受け止めて、なんとか前を向こうとしていることが読み取れる。
問3
否定的に見ている。根拠は「〜といった声」(距離を置く引用)、「確かに〜。だが」(譲歩のあとの逆接)、「見落としているように思われる」(婉曲だが否定)。筆者はこの考え方を、読書の本来の働きを理解していないものとして批判している。
誤答を診断する
| 誤答 | 型 | 戻るレッスン |
|---|---|---|
| 問1でア | 差分の種類を取り違えた(強さを怒りの感情に) | 誤った言い換えを直す(型③) |
| 問1でウ | 照合の省略(負けた場面を見ていない) | 誤った言い換えを直す(型④) |
| 問2で「元気にうなずいた」 | 差分の無視 | 誤った言い換えを直す(型①) |
| 問3で「賛成している」 | 譲歩と逆接の構造を見落とした | 誤った言い換えを直す(型①) |
記述で語を選ぶ
心情の記述では、こちらがニュアンスのある語を選ぶ側になります。
| 本文の差分 | 記述で使う語 |
|---|---|
| ぎゅっとつかんだまま、動かなかった | 悔しさをこらえきれず、気持ちの整理がつかない |
| 小さくうなずき、ようやく | 気持ちを立て直そうとしている |
| 〜といった声、見落としている | 筆者は批判的に見ている |
「悲しい」「うれしい」だけでなく、「こらえる」「立て直す」のように、差分に見合う語を選びます。
答案で落とさないための確認
| 確認 | 見るもの |
|---|---|
| 差分を取ったか | 副詞、語の選択、文末、引用の仕方 |
| 要素を言ったか | 感情・態度・強さのどれか |
| 前後と照合したか | 場面、直前直後の行動 |
| 自分の感じ方で読んでいないか | 語の一般的な印象か |
| 記述の語は差分に見合うか | 「悲しい」で済ませていないか |
よくある間違い
心情を一語(うれしい・悲しい)で答える
差分は、もっと細かい心情を示しています。「悔しさをこらえている」のように、差分に見合う言葉で書きます。
論説文の引用「〜といった」「〜なる」を見落とす
筆者が相手の説に距離を置く印です。これを見れば、筆者の態度は決まります。
譲歩の「確かに」を筆者の賛成と読む
「確かに〜。だが〜」では、筆者の立場は「だが」の後です。
自分で説明しよう
確認1:物語の心情問題で、根拠にするもの
語の差分(副詞・語の選択・文末)と、前後の場面との照合。
確認2:論説文で筆者が相手の説に距離を置いている印
「〜といった声」「〜なる考え」「いわゆる〜」「一見〜らしい」などの引用の仕方と、譲歩のあとの逆接。
確認3:心情の記述で「悲しい」だけでは不十分な理由
差分(ぎゅっと、まま、動かない)が示す「こらえている」という細かい心情が書けていないから。
セクションの出口
初見の物語文と論説文で、語の差分を根拠に心情と筆者の態度を答え、記述で差分に見合う語を選べたら完了です。
次のセクション「慣用句・ことわざ・四字熟語」では、字面だけでは分からない語句を、意味・由来・使用場面・例文と結びつけて学びます。
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